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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第24輪「野外撮影で大騒ぎ」
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初期の戦隊ソングはやたらとスクラムを組みたがる

「え? ムックの取材、ですか?」

 今日も秘密基地でヴァリーリアンを教師に元の世界での勉学を進めていたセイカは、終わった頃合いにシャーリー司令官から声をかけられて、学生鞄にペンケースをしまう手を止めた。

「そうなの。その出版社は初代の戦隊からずうっとムックを出しているところでネ。戦隊ヒーローは毎年そこの取材は必ず受けていて、セイカちゃんが現れた直後からウチの特集をしたいってずっと打診してきていたの」

 シャーリー司令官は頬に手をあてて説明する。

 ムックならセイカがいた世界にもあった。残念ながら近年は電子書籍に押されてか、ほぼカラーページの大判で価格もまあまあ高めなためか、いつの間にか発売されなくなってしまっていたが、季刊で特撮専門誌が売られていた時代があったのだ。

 セイカの叔母は当然それも集めていて、特撮の本がずらっと並んだ夢のような棚があり、汚さないよう慎重に見させて貰っていた。中でもムックは素顔の戦士達が毎号異なるテーマで撮られたファン垂涎の写真ばかりで、役者さんの演じるキャラクターや番組に関する貴重な話も載っていて、子供の頃は新刊が出たら叔母の家に入り浸り、読み耽っていたものだ。

 けれども、この世界での戦隊ヒーロー関連の本を気にする機会はなかった。歴史やデータは六角テーブルのコンソールで調べられるので。

 初代からというと、どれだけの量になるのだろう。戦隊ヒーロー関連だけで立派な図書館が建つのでは!?

 セイカは今すぐ調べたくなってうずうずする。

「ゆくゆくは、戦いが終わったら一冊丸ごと『特虹戦隊(とっこうせんたい)ディヴァース(ファイヴ)』でフォトブックを出すことになっているのだけど」

「え、なにソレ初耳だよ!?」

「でしょうね。今初めて言ったもの」

 驚くイクシアに、いけしゃあしゃあと宣うシャーリー司令官だった。

 事後承諾が多いけど上官だから逆らえないし、油断していると無茶振りとかしてくるし、司令官は相変わらずだなぁと思いながら、セイカは勉強道具を鞄にしまう。

「イクシアは知らないんですか? 戦隊ヒーローは特撮ファンに人気絶大ですよ」

 言われなくともフォトブックを出すことは慣例だとヴァリーリアンでも承知している。

「知らないよ! 大体ボクたちの戦いは現実で、特撮じゃないじゃん!」

「今年の戦いは、半分以上は特撮みたいなものでしょ」

 ザッソー兵が爆薬を用意したり、本気で戦っていないのにやられたフリをして伸びていたり。

 例年だと爆破は両陣営でどちらの技術が上か張り合っているらしいが、今年は〝(アク)(ハナ)〟が全て受け持っている。とても珍しい年だそうだ。

「とにかく、他からも取材させてくれって殺到しているのを、特撮本に限っているのヨ?」

 じゃなければ取材取材でアナタ達の日常は忙殺されてるワ! 宇宙中の出版社をなめるんじゃないわヨ! とシャーリー司令官は軍の窓口の苦労を語る。

 宇宙時代でも紙媒体で欲しがるファンはいくらでもいるとか。かくいうセイカも紙(本)派だった。勉強もタブレットではなくノートに書く派である。

「戦いが終わるまで待てないファンもいるし、謎の大幹部〝黄の庭師〟も現れたし、戦隊ヒーローファンにはお馴染みの特撮本に特集を組んでくれって要望が宇宙中から殺到しているの。これまでの戦隊ヒーローも少なくとも半年に一度は取材を受けていたし、今ならちょうどいいかしらって」

 特に今年のメンバーには大注目のセイカと、ドM男のみならずお嬢さん方にも男装の麗人的に大人気のエフェドラがいる。もちろん、『ゆめかわいい』の権化のイクシア、インテリ眼鏡のヴァリーリアン、二枚目半のカウボーイ風ロメロも人気だ。敵の大幹部を含めてキャラの方向性が全員異なるので、それぞれに宇宙規模のファンがいた。

「あ。あと、対談もあるわヨ」

「どなたとですか?」

「ん〜〜、なんて名前だったかしら。ホラ、あの毎週日曜日の午前にウチの活動を放送している番組の、オープニングで……」

「まさか主題歌を歌ってるアーティストの〝TOKYO(トキオ・) FUTUREフーチャー〟!?」

「そう! ソレヨ!」

 顎に人差し指を当てて斜め上に視線をやり思い出そうとしていたシャーリー司令官は、食い気味に身を乗り出したイクシアの問いに、両手を合わせて喜色を浮かべ肯定した。

「マジで!? あの二人に会えるのっ!?」

「なんだイクシア、彼らのファンなのか?」

 〝TOKYO FUTURE〟は男性二人組のユニットである。特撮ソングを数多く歌っており、人気絶大だ。

「当然! あの爽やかで疾走感あふれる曲は最高だよ!」

 毎週日曜日の朝が希望に満ちる歌で始まる。現実での戦いが全く重くならない。

 まあ今年度は元々ゆるい怪人が相手だし、〝紫の百合〟と〝青の薔薇〟のバックグラウンドを知っているので、わざと重くならないようにしているのもあるのだが。

「わたしも好きです」

 元の世界で言えば、宇宙警察官が戦隊メンバーである作品等の主題歌を担当している〝超能力愛好家〟系統の曲だ。

「この時代に色紙はあるのでしょうか?」

「だね! サインを貰わなくっちゃ!」

「おいおい。こっちが書くんじゃなく貰うのか」

「僕のもお願いします。姪がファンなんです」

 ソファーにいつもの格好で寝ているロメロは、ヴァリーリアンまで言い出したのを見て「ブルータス、お前もか」みたいに驚愕すると、カウボーイハットを呆れ顔に乗せて沈黙した。

「少佐は欲しがりますかね?」

「さあ? 一応数に入れておけばいいんじゃない? あって困ることはないだろうし」

 余れば司令室(ここ)に飾っておけばいいよ! とイクシアは言う。

 それは司令室用にわざと余らせたいのだなと誰もが察した。半年も一緒にいると性格からのやり口が嫌でも分かってくる。

 そしてエフェドラは、今日も今日とてここにはいない。元の仕事から逃れるために一時避難しているのに、どうにも彼女の指示がないと進まない事柄が多いのだ。たまには顔を出すが、すぐに呼ばれていなくなる。

 取材には絶対参加だとシャーリー司令官が命令しているので、その日は来るのだろうが。

「備品で購入するんじゃないわヨ」

 色紙を探してわいわい注文している三人を見て、シャーリー司令官は釘を刺した。

「え〜!」

「えー、じゃないの。私情なんだから自分で払いなさい」

「司令官のケチ〜!!」

 色紙一枚は高いものではない。安くはない給料を貰い、ゆめかわいいブランド『ANIKA(アニカ)』でも稼いでいるのに、経費で落とそうとしているイクシアとどちらがケチなのか。

 指摘すると三倍は口撃が返ってくるので、ロメロはカウボーイハットを顔に乗せたままソファーに沈み込んだ。

くだんのバンド名は翻訳サイトで『精神の恋人』と出たのですがスピリチュアルすぎるので、『超能力愛好家』にさせてもらいました。結果、ムー寄りに。(^_^)

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