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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第23輪「〝黄の庭師〟登場」
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ヴァリーリアン、初めてのアジト訪問

 セイカはすぐにバトルフィールドを展開し、巨大化したパプリカロイドをディヴァースロボで迎え撃つ。

 ピーマンロイドと同様に、パプリカロイドは両腕からパプリカ弾を撃ってきた。パプリカの被り物をしたディヴァースロボを見てみたいとの誘惑にセイカはまた駆られたが、そこは再びぐっと我慢して、全てを剣で斬り捨てる。そしてシルヴァーの好きな鞭でパプリカロイドの足元を掬い転がせて、立ち上がったところにパワーアップさせた必殺技『ハイパーレインボービーム』をくらわせた。

 爆発の寸前に放った、パプリカロイドの最期の言葉は「赤いパプリカもよろしくなぁ────ッ!!」だった。




「ここが、〝(アク)(ハナ)〟のアジト……」

 ヴァリーリアンは初めて侵入する黒い巨大戦艦を眺めて、硬い表情で呟いた。

 緊張しているのがありありと判る。

「どうした。やっぱりやめるか?」

 アジトに入るにはスロープタイプのタラップを渡る必要がある。その手前で足を止めているヴァリーリアンの背後で巨大戦艦を見上げるロメロは、いつもの口調だが声音は覚悟を問うものだ。

 セイカとイクシアは仲間の動向を黙って見守っている。

「いえ。行きます」

 意を決してヴァリーリアンは前を向く。

 視線の先は真っ黒な口を開けているタラップの向こう側の入り口だ。

「その意気だ」

 ロメロはヴァリーリアンの肩をポンと叩くと先導を買って出る。

「〝黄の庭師〟だけ気をつけていれば大丈夫だよ! 素顔のザッソー兵のみんなは気さくなヤツばかりだからね!」

 イクシアは励ましにならないアドバイスをした。

 ヴァリーリアンの目的は、言わずもがな〝黄の庭師〟の足止め及び分析である。仲間三人に手を出されて危険な目に遭わせないよう見張る、更には謎多きソレイナム星人の生態と〝悪ノ華〟に属する真意を探るため、本人に接触しなければ始まらない。

 潜入している有能なエフェドラの部下でもできないところをカバーするのが使命だ。

「約束は覚えているな?」

「もちろん。『ラウンジ以外では会わない』です」

 タラップを歩きながら注意事項を確認する。

 力強く答えたヴァリーリアンだ。とはいえ、宇宙人マニア。その方面で夢中になってしまうと周りが見えなくなる。外見詐欺な合法ショタの老獪な手口にまんまと乗せられて、気付いたら大変な事態になっていた、では笑えない。

 セイカ、イクシア、ロメロは目で合図した。ヴァリーリアンが宇宙人好きを暴走させて自分を見失っている時、誰かが助けに入れるように、素顔のザッソー兵に扮したエフェドラの部下が教えてくれる手筈になっている。

 三人を〝黄の庭師〟から守るために意を決して来たヴァリーリアンだが、その実逆にならなければいいが。

「無理しないで、何かあったらわたし達『仲間』を頼ってくださいね」

 殊更『仲間』を強調したセイカであった。

「そうだな。アジト(ここ)ではオレ達が先輩だからな」

「ボクは紫のお姉さんを探してラウンジにいないことが多いから、先に断っておくよ」

「解りました。危険は冒しません」

 ここに来るまでにもう何度となく言われているが反論はせず、その気遣いがくすぐったくてヴァリーリアンは苦笑する。

「おや? 今日はアクアさんが一緒で?」

 アジトの入り口で番をしていた素顔のザッソー兵が驚いていた。

 いつもは立哨が二人いるが、今は一人しかいない。

「もう一人はどうしたの?」

「それがさっき、急いで誰かと交代するって走ってっちゃって。……ははぁ、原因が判りましたよ。やつはアクアさんのファンだから、視認した途端、行動に出たんすね」

 いいなーみんな来てくれて、少佐のファンは悲しいなー、と遠い目をしてぶつくさ言っている哨兵を後に、勝手知ったる足取りでラウンジに向かうと。

「野郎どもー! 特虹戦隊御一行様にアクアさまがいらっしゃるぞ──っ!」

「うおーマジかっ!?」

「あのクールビューティだけどアクションがちょっと苦手なところが萌える、インテリ眼鏡のアクアさまが!?」

 大騒ぎだった。

「何を言っているんでしょうか、あの人達は……」

 聞こえてきた内容が内容だ。呆れた口調でヴァリーリアンは眼鏡のブリッジを押し上げるが、照れているのが隠しきれていない。

「よかったな。大歓迎じゃないか」

 ロメロが揶揄って肩を組んでくる。

「う…………重いですよ、ロメロ」

 気恥ずかしさを悟られまいと嫌な顔をして、ヴァリーリアンは身を引き逃れようとした。

 この先にある目的地からはドタバタと慌ただしい足音や、「アクアさんの好みの飲み物は!」「早く教えろアクア班! 皆さんが来てしまうだろ!」「しまった! おれ今ジャージだ!」などとの雑多な声が聞こえてくる。

 正直、こんなに歓迎されるのは予想外だった。陸での戦闘がいまいちで、五人の中でヒーローとしての人気は最下位だと思い込んでいるヴァリーリアンである。

「ようこそいらっしゃいました、アクアさま!」

『ようこそいらっしゃいました、アクアさま!』

 ラウンジの入り口に着くと、左右に幾人かが一列にピシッと並び、先に口を開いた一人に続いて残りの全員が同じ言葉を唱和して、背中に定規でも入っているかのように整ったお辞儀をした。

 ここはホストクラブか何かか? と疑ってしまう出迎えだ。素顔のザッソー兵はイケメンだらけなので、余計にそれっぽい。

 気合いの入れ方が凄いので、彼等が『アクア班』なのだろうか。

「ささ、アクアさまはこちらに……」

「レッドさま、白の旦那はあちらですよ」

「紫のお姉さんはいる?」

「いえ、今日も見てないっすね」

「ゴールドさま、〝青の薔薇〟さまはいつもの場所でお待ちですよ」

「おいそこ! 私は待ってなんかいないぞ!」

 地球をバックにうろうろしていた〝青の薔薇〟は耳聡く聞きつけると、指を差して怒鳴った。

「若、ですから他人(ひと)を指差してはなりません」

 いつもの席で紅茶を傍らにタブロイド紙を読んでいた〝白の廃園〟は、もう何度目か判らない注意をして溜め息をついた。

「ボクはお姉さん探しに行ってい〜い?」

 イクシアは後ろで腕を伸ばして指を組み、身体ごと傾いでおねだりポーズをとった。あざとい。

 あんなにアイコンタクトでヴァリーリアンを見守る決意をしていたのに、これである。

「いいぜ、行ってきな。ああ、ユー! ヴァリーは一番奥の席にしてくれるか」

 最初から期待していなかったのかロメロはあっさり承知して、ヴァリーリアンを席に案内していた素顔のザッソー兵に声をかける。

 イクシアは「やった!」と言って後方宙返りをし、ラウンジから消えた。素早い。

「悪いなセイカ。オレが仕切っちまって」

 山猫獣人リンクシーズの身体能力に感心していたセイカは、思わぬロメロの発言にきょとんとする。

「いいえ。わたしでは経験値も足りないですし、むしろ仕切ってもらって助かっています」

 ロメロさんが一緒で心強いですと続ければ、

「ハァ、セイカには敵わないな」

と、ロメロはカウボーイハットの後方に手をやって、被り方を直した。

 セイカは自分がレッドだからといって全てに口を出したりはしない。それぞれの個性・得意分野を活かして戦うのが特虹戦隊(とっこうせんたい)ディヴァース(ファイヴ)だと、仲間達を信じている。リーダーの役割を求められるのは戦闘でキメる時くらいだ。

「騒がしいから来てみれば、なんじゃ、おぬしら。ここで何をしておるんじゃ?」

 年寄り口調の美少年──〝黄の庭師〟が向こうから現れた。

「あ、〝黄の庭師〟さま! 今お呼びしようとしてたところです!」

「こちらにおいでください!」

 ロメロの指示どおりヴァリーリアンを最奥の角コの字席に案内した素顔のザッソー兵達は、〝黄の庭師〟の姿を認めると彼に声をかけた。

「ご指名が入ったようじゃの」

 特に疑問も抱かず〝黄の庭師〟はそちらへ歩いてゆく。

 美少年がホストな言動をしている。違和感しかない。

 それはともかく。

「……ロメロさん」

「ああ、健闘を祈る」

 セイカとロメロは頷き合って、各々のターゲットの元へと向かった。

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