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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第22輪「あるザッソー兵の日常」
40/80

班わけ

「おいお前、出陣してたんだろ!?」

「魔法陣から女の子が出てきたって本当か!?」

「まさかのレッドが女子!」

「史上初じゃないか!?」

「なんでも、元の世界じゃ『ジョシコーコーセー』ってやつだったらしいぜ」

 アジトに戻ったら、大騒ぎになってたっす。

 それもしょうがないっす。戦隊ヒーローのレッド(リーダー)として異世界から召喚した純血の日本人が、なんと美少女だったんで。誰が予想できたでしょうか。

「お、おれらこの子と対決すんの!?」

「ふむふむ。宇宙時代前の科学力しかない世界から来たと」 

 あの後、宇宙政府軍に保護されただろう彼女は、新戦隊のレッドとなるのを了承したらしく、もうパーソナルデータがネットにアップされてるっす。

「意外に戦い慣れてたよな。召喚直後の割には」

「学生だっていうのにな」

「てゆーか、十六歳!? 成人してるじゃん!」

 地球のアジア系民族は童顔だって聞いてたっすが、実際に見ると衝撃っす。レッドさんは身長が高くなく、目が大きくて、頬も絵に描いたような絶妙なラインの美少女っす。

「いや、前の世界の成人は二十歳らしいぜ」

「遅れた世界からやってきたのか……慣れるの大変だろうな」

「なのに()()()()()()を率いるレッドをやるって……」

「………………」

 みんな、罪悪感に(さいな)まれてるっすね。

 そもそも人ひとりを異世界から誘拐してきたってのに。今更っすよ。

「お前ら、ちゃんと見ろ」

 オレは見逃さないっすよ。

「前の世界では無類の特撮番組・戦隊シリーズのファンで、初の女子レッドのスーツアクターになりたかったと書いてあるだろ」

 それは、あの魔法陣に選ばれた理由に他ならないんじゃないっすか。

「そうか……それで喚ばれたのか」

「酷い運動音痴だったのに、逆に運動神経抜群になったってよ」

「魔法陣に何か仕組まれていたのか……?」

 確かめようにも〝黄の庭師〟さんは眠ってるはずっす。真相を問うのは彼が無事、目を覚ましてからっすね。

『ザッソー兵に告ぐ。至急、トレーニングルームに集まるように』

 艦内放送で呼び出しがかかったっす。この声は緑の旦那っすね。

「なんだろ?」

「本戦開始に向けての準備じゃないか?」

 ラウンジにいたオレたちは、揃ってぞろぞろと移動したっす。




「え? 班わけっすか?」

 トレーニングルームに集合したオレたちは、緑の旦那の指示に疑問を持ったっす。なぜならば、ヒーローの誰かに偏らないように採用されてると聞かされてたんすよ。じゃないとザッソー兵全員、ノルトヴェルガー少佐狙いになっちまうっす。

 各地で計測してた今までは、オレ以外はテキトーに順番で出撃してたんすけどね。

 余談っすが、爆薬を仕掛けたり立体映像での演出などの裏方は、オレたちと同じ格好をしていても扱いは別っす。プロフェッショナルな演出班っす。

「いいから、希望する色の前に並んでみろ」

 緑の旦那の横には等間隔に、運動会で使われるっぽい三角形の旗が置かれてるっす。旗の色は、赤色・橙色・水色・銀色・金色──新戦隊の五人を表してるっすね。みんなそれぞれ好きな色を目指して動きだしたっす。

 あ、『運動会』ってのは地球の日本が発祥の学校行事で、リレーや綱引き・玉入れなど様々な種目を競い合うっす。今や宇宙中の学校で取り入れられてるっすよ。

 で、話を戻すと。

 びっくりっす。

 レッドさんだけ誰がやるのか決まってなかったのに、オレたちは過不足なく五列に分かれてるじゃないっすか。

「おれはレッドさんに惚れたぜ。カッコカワイイがすぎる」

「俺はやっぱりオレンジさんだな。もふもふカワイイ……」

「眼鏡のクールビューティーに足蹴にされたい……」

 は? アクアさんってクールビューティーでしたっけ? コイツ、眼鏡キャラなら誰でもいいのでは……?

「ヤバイ。色見ただけでもう興奮してきた……っ」

「ここに並ぶだなんて……羞恥プレイかッ」

 うわー、少佐の担当になりたいヤツら、上気してもうハアハアしてるっす。キモ!

「二丁拳銃に撃ち抜かれたい……」

「ワンチャンあるかも!?」

 ゴールドさんはバイセクシュアルだから……って、あの格好の雑魚にチャンスなんかあるのか!?

 後にアジトに襲撃かまされて素顔で会う機会ができるっすが、ゴールドさんの目当ては〝青の薔薇〟さんなんで、結局望み薄っていう。

「これで正式に決定する。異論はないな?」

『ないっす!』

「では番号の早いやつが、班長だ」

 へ!?

「班の名は、赤班・オレンジ班・アクア班・銀班・金班だ」

 順当ってか、そのままっすね。──じゃなくて!

「明日は特虹戦隊(とっこうせんたい)に宣戦布告する。総動員しての立ち回りだ。後で演出班を含めての全体ミーティングがある。

 それから、通常の大幹部が一人で率いる出撃の場合は、各班から随行する戦闘員は三人から五人だ。場面によって交代してもいい。ローテーションを考えておけ」

 大事な説明をさらっと告げると、緑の旦那は締めに入りそうな雰囲気になるっす。

 オレは慌てて口を開くっす。

「ちょ、ちょっと待ってください緑の旦那、班長って……」

「安心しろ、班長は色によって優劣はない。五人同格だ」

 そーですか、それは安心しました。って、いやいやいや!

「担当の戦士がいない場合など、あらゆる場面を想定し、班長同士で話し合って決めておくのも忘れるなよ」

 緑の旦那はオレの肩にポンと手を置き、「お前なら務まる」と言ってトレーニングルームを後にしたっす。

「えー……」

 励まされても嬉しくないっす。

「どうした5号、いや班長」

「よろしくな5号」

「5号、早くローテ決めようぜ」

 列の一番前にいたオレは、澱んだ空気を背負ってゆっくり振り返ったっす。したらそこにはイイ笑顔した同僚たちがサムズアップかましてたっす。どいつも無駄にイケメンなんで、余計腹立つっすよ!

 コイツら、面倒事が回避できたからゴキゲンだな……? やたら号数を連呼しやがって!

 そうっす。オレの組織での正式名は『ザッソー兵5号』なんすよ。

 そしてオレがいる赤班──赤色の旗に並んでる中に、1号から4号はいないっす。てことは自動的に5号のオレが班長になるっす。

「なんでこんなことに……」

 楽して稼げるはずが、犯罪者になって、面倒な役付きになって……。

「赤じゃなかったら班長にならなくて済んだのにな」

 脱力してるオレに、同じ班になったヤツが言外に赤を選んだ理由を訊いてきたっす。

「……男にやられるのは御免だし、ヤバイ信者がいる少佐は論外だし、消去法でこうなったんだよ」

「なんだそのつまらん理由は」

「もっとレッドさまをリスペクトしろ!」

「レッド初の女性なんだぞ!? おれたちはサイコーに運がいい!」

「だよなー! 美少女で強いってのがイイよな!」

「攻撃が当たらなくても吹っ飛ぶ(さま)をもっと完璧に仕上げなくてはっ!」

 レッドさんにやられるこれからを想像して高揚する赤班の同僚たち……変態だ。ついていけん。

 やっぱりオレはドMじゃないんだ。なにかの手違いで採用されたに違いない。

 呆れてヤツらを眺めてると、赤班の一人がオレの肩に腕をまわし、

「お前、まだ自分はマトモだと思っているようだがな」

と、そこで言葉を切ると、今度は反対側からもう一人が肩に腕をまわしてきたっす。

 ぐっ……重い。二人ともニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてるっすよ。なんなんだコイツらは?

「『やられる』のを前提に考えてる時点で、Mなんだよ」

 ………………はッ!?

「だよな。ドMを自覚するのも時間の問題だな」

 明日から出撃して本格的にヒーローさまたちと戦えば、身を(もっ)て知ることになる。ヤツらはそう嗤うっす。

 思い返せばオレ、今まで出撃していても計測係だったんで、少しも戦ってない……。

「そ、そんなバカな……」

 オレは二人の腕の中から真下にすっぽりと抜け落ち、地面に膝と両手をついて嘆いたっす。

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