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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第22輪「あるザッソー兵の日常」
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大幹部のひとたち

 さて、長旅もようやっと終わり、地球の衛星『月』に到着したっす。

「おお〜! アレが肉眼で見る『地球』!」

 ラウンジで外が見える側にオレや同僚たちは群がり、目の前の光景に感嘆したっすよ。

 なんでも、秘密結社〝(アク)(ハナ)〟はこの巨大戦艦をアジトとして活動するらしく、地球が見えるここ月面都市の外れにある宇宙港に係留されたっす。

 ちなみにこの場所、これからヒーローさんとの戦いが決着するまで、貸し切り状態っす。金持ちのボンボンたちには痛くも痒くもない出費だそうで。けっ。

 それよりも、そこかしこで鼻を啜る音がしてるっす。涙ぐんでるヤツが続出っす。

「どうした、お前」

「いや……なぜか懐かしくてな……」

「……解る。込み上げてくるものがあるよな……」

 宇宙中の人類の祖先は地球人っすからね。似たような色の星や美しい星は他にもあるっすが、暗闇の宇宙に青く輝きゆっくり自転してく地球の、白い雲の下にある大陸と海の形が……なんとも懐かしいんすよね。

 もちろん、毎週日曜日にやってる番組で観てるせいもあるんでしょうが。

「これが『地球』か」

 いつの間に来ていたのか、オレたちの上司に当たる大幹部の一人、〝青の薔薇〟さんが最前列で地球から目を離さずに呟いたっす。その斜め後ろには、彼が「じい」と呼ぶ〝白の廃園〟さんもいるっすね。

 彼らは一見、オレらと何ら変わらない、地球を故郷とする人類のようっす。が、実は宇宙政府に属さない、未開の宇宙にある惑星の人々で、オレらとは起源が異なるそうっす。具体的には身体能力や寿命が違うとかなんとか。

「ふうん……可愛い女の子はいるかしら」

 反対側から声がしたので振り向けば、そこには地球を瞳に映した美女──大幹部の一人、〝紫の百合〟さんがいたっす。

 男は近寄ると「その美脚のドコにそんな威力が!?」と驚愕する物凄い脚力で蹴り飛ばされるので、彼女の周囲には2メートルほどの誰もいない半円ができあがってるっすよ。

 彼女は一目で一角獣人(モノセロス)と判る、額に立派な角が生えてるっす。

 そんで、発言から分かるように、女の子は大好き、男は蛇蝎のごとく嫌ってるっす。種族の性質なので誰も文句は言わないっすが、うっかり近寄っちゃったりした時や出会い頭に蹴り飛ばすのは勘弁してほしいってのが、オレたち下っ端の総意っす。

 え? ドMなんだから美女に蹴られて嬉しいんじゃないかって?

 いえね、それが違うらしいんすよ。同僚が話すには、『地球を守る戦隊のヒーローにやられたい』であって、その他に興味はないんだそうっす。流石は厳しい倍率を勝ち抜いて(つど)った変態たち。コアな性癖っす。

「……退()いて」

 〝紫の百合〟さんはもう満足したのか踵を返し、進行方向にいた男ばかりの人垣を見て非常に不快そうに眉を顰め、一言そう告げたっす。蹴られたくないので、人垣はささっと素早く割れたっすよ。彼女は男には気が短いにもほどがあるっすから。

 ストレートで長い銀の髪を靡かせ、喪服みたいな黒のロングドレスの裾をひらめかせて、〝紫の百合〟さんは消えていったっす。

 脅威は去った……と、誰もが詰めていた息を吐いたっす。

「この美しい地球(ほし)を、攻めねばならんのか」

「若…………」

 〝青の薔薇〟さんの声は、苦渋に満ちていたっす。

 そんな彼を、白の旦那は痛ましそうに見つめるっす。

 オレらはこの航海中に知ったっすよ。彼らが暮らす惑星は宇宙政府の手が届かないうちに、オレたちの雇い主である坊ちゃん方に()()()()()()に使っている傭兵団に攻め落とされて。星の住民まるごと命を盾に取られ、大幹部として地球征服をやらされている、次代の惑星王とその従者だと。

「戻るぞ、じい」

 オレらより若い二十歳前の〝青の薔薇〟さんは気丈にもそう言うと、白の旦那と共にラウンジを後にしたっす。

「…………」

 重苦しい空気が残ったっすね。

 下っ端戦闘員はオレを除いて、ヒーローさんにやられるために志願したドMばっかっすからね。気まずいのも当然っす。

 あの恐ろしく手の……じゃなくて、脚の早い〝紫の百合〟さんも、珍しい種族で、宇宙政府が保護する前に坊ちゃん方に目をつけられ。同族が商品にされないため──宇宙中にいる珍人種をペットあるいは研究材料にと望む変態の犠牲にさせないため、ひいては種族の存続を盾に、大幹部をやらされているそうで。

 この二例だけでも雇い主の坊ちゃん方……クソっすね。

 だからオレたちは旅の間に話し合って決めたっす。せめてオレたちの働きで坊ちゃん方に満足してもらえるように、お二人をフォローしていこうと。そのためにかかる必要経費はできるだけ沢山、(むし)り取ってやろうと。

 ま、それくらいの出費、有閑令息たちには痛くも痒くもないんでしょうがね。けっ。

「どうした? 静かだな」

 しんみりしていたところに大幹部の一人、〝緑の指〟さんが現れたっす。

 普段は騒がしいラウンジに、(ほとん)どの下っ端が一方向に集まってるのに妙に静かなんで、(いぶか)ってるっすよ。

「緑の旦那、見ました? 地球(アレ)

 オレは眼前にひろがる光景の一点を指差したっす。

「ああ…………地球か」

 緑の旦那は空いていた最前列に来て、宇宙で一番有名な惑星を目にしたっす。

 確か、彼の故郷はここからは遠い、独自の進化を遂げた動物型の機械生命体が跋扈する惑星で。大昔にそんな星に辿り着いた、地球人が祖先のはずっす。起源はオレたちと同じっすね。

「なんか……おれたち初めて来たのに、郷愁を感じちまって」

「……それで静かだったのか」

「だって懐かしくないっすか? あの地球(ほし)

 同僚たちはまだ鼻をズビッとさせ、同意を求めたっす。

 でも、緑の旦那からは思いもしない発言が返ってくるっすよ。

「…………俺には恐ろしい星にしか見えんがな」

「え!?」

 その一言で静かだったラウンジを騒つかせ、緑の旦那は謎の言葉を残して去っていったっす。

「恐ろしい……?」

「あ! あれか!? ノルトヴェルガー少佐!」

「そうか! 少佐がいるから恐ろしいと!」

 さっきまでの沈んだ雰囲気はどこへやら。緑の旦那とノルトヴェルガー少佐の話題で盛り上がるっす。

 それもしょうがないっす。悪の秘密結社の大幹部と、宇宙政府軍の要職にあるのに地球を守る新たな戦隊のヒーローに選ばれた少佐、二人の出身惑星は同じなんすよ。どころか接点もあったみたいで、二人に何があったのか、同僚たちが今一番気になることに挙げてるっす。

 あれからオレは新戦隊のメンバーについて勉強したっすからね。てゆーか、普通に紹介されてるんで、ヒーローの詳しいパーソナルデータもネットで見放題っす。

 で、初めて耳にした時に覚えられなかったノルトヴェルガー少佐についても学んだっす。宇宙政府軍中央情報部のエリートで──軍の少佐の隊のPVも通常版から犯罪者用のヤバイのまで視聴したっす。いやあ、宇宙ひろしといえど、あんなドSの権化はいないっすよ。同僚たちにもぶっちぎりの人気っす。

 そのドM憧れの少佐と、狡猾そうとはいっても個性的なのは髪型だけでフツメンな緑の旦那に、どんな因縁があるのか。そもそも緑の旦那はなぜ、悪の秘密結社の大幹部となったのか。

 弱みを握られてやらされてるわけじゃないっぽいっし、同僚たちみたいにドMでもないようっすから、不思議でならないとみんなで首を傾げてるっす。

「〝黄の庭師〟さまはやっぱ現れねぇな」

「おれはあの人の方が恐えよ……」

「だよな……」

 オレがソファーに戻ってジュースを飲み出すと、落ち着いてきたのか数人の同僚たちも座ったっす。

 大幹部の最後の一人、〝黄の庭師〟さんは……オレもよく分からないっす。姿を見かけたのも遠くから数回程度だし、近づくと改造されるって噂っす。

 真相は、どうやらオレがこの巨大戦艦に乗る前から、地球征服のための鍵となる怪人──『プラントロイド』っつーらしいんすけど、そいつを多種多様、数ヶ月分せっせと造りためてるって話っす。

 お前は戦闘員の中でも比較的まともだってんで、緑の旦那とよく話したりするんすが。その旦那から聞いたんで、信憑性は高いっすよ。

 しっかし『比較的』ってなんすか。

 オレはいつでもまともっすよ?

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