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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第22輪「あるザッソー兵の日常」
37/80

往き先は、伝説の辺境惑星『地球』!

 それから巨大な宇宙戦艦は、オレらが乗った後も何個かの惑星に寄って、同僚になるヤツらを拾っていったっす。

 目的地に着くまでオレらはひたすらアクションの練習っすよ。

 楽して儲けるはずが、なにげにハード!

「そーいやこの(ふね)、ドコに向かってんだ?」

 ある日、ラウンジで寛いでる時ふと疑問を口にしたら、フロア全体が凍りついたっす。

 あれ?

 てっきり「今更なに言ってんだよ〜」「ボケるのもいい加減にしろ〜」って感じの和やかなツッコミが返ってくると思ってたのに、なにこの空気?

「まさか……」

「お前……俺たちの仕事、何だと思ってるんだ?」

 同僚が悲愴感たっぷりに質問してくる。

「え? 悪の組織の下っ端役としてヒーローショーの惑星ツアーとかをやるんじゃないの?」

 オレはトレーニング後の一杯(炭酸ジュース)を飲みながら軽く言ったっす。

 したら、ラウンジの空気が「あ゛〜」ってなったっす。頭を抱えてるヤツもいるっすよ。

 どしたの?

「これだけ人数がいりゃ、中には誤解したやつがいてもおかしくないか」

「でも宇宙中大騒ぎだったんだぞ? なんで知らないんだ」

「おまえ、SNSとか見ねーの?」

 オレがいるコの字型のソファーの内外から声がかけられるっす。

「フツーに見るけど」

「なのに知らんのか」

「思い込みが激しいのか?」

 なんかよく分かんねーけど、失礼なこと言われたっす。

 あ、でも学生時代に先生(センコー)に「事実と異なる方向に思い込みがちなので気をつけるように」って注意書きされてたっすね。

「いいか、よく聞け」

 隣にいる同僚が、硬い顔をしてオレの両肩に手を置いたっす。

 なんすか?

「俺たちの雇い主は、全宇宙でも指折りの巨額の資産を持つ家に生まれ、金と暇を持て余している令息の方々だ」

 ほーう。あの面接で首から下だけ映ってた、画面越しでも伝わってくる高級な室内で、あちらこちらに向いた高級イスに掛け、高級スーツを着てた若そうな人たちが、金持ちのボンボンだったんすかね。 

「そのご令息方がこの度、地球を我が物にしようと計画された」

「……は?」

「ゆえに地球を侵略するための秘密結社〝(アク)(ハナ)〟を結成され、俺たちは最前線で戦う戦闘員として雇われたのだ。もちろん、敵は地球を守るヒーロー戦隊だ」

「…………はぁぁあああああ!?」

 いやいやなんだソレ! マジっすかっ!?

「いいか、これは現実だ。フィクションでもヒーローショーでもない」

「おれたちはもう、正真正銘の悪役──悪の組織の一員なんだよ」

 同僚は俺の肩から手を離し、その向こうにいたヤツが神妙な雰囲気で告げたっす。

 オレは問うっすよ。

「つまりなんだ? 毎週日曜日に放送されてる、あのヒーロー戦隊の敵になってしまったと!?」

「ああ。気の毒だが、その通りだ」

「我らの敵になる戦隊も、新たに組織されている」

「ウソだろ……」

 絶句っす。いつの間にか自分が犯罪組織の仲間入りしてたなんて……!

 力が抜けて、オレはソファーに凭れかかったっす。

「勤め先の確認を怠っては駄目だ」

「もっとちゃんと情報収集しておくんだったな」

 同僚が教師みたいなこと言ってくるっすよ。

「おれは内容をろくに知らずに採用されたってのが、信じられないが。この求人の採用倍率、天文学的数字だったろ?」

「そうそう。ヒーローに倒される悪役をやりたい奴はごまんといる」

 そうなの!?

「それに加え、あのノルトヴェルガー少佐も新戦隊のメンバーだって情報が流れたからな」

「全宇宙が震撼したよな」

 みんな腕組みをして、うんうん頷いてるっす。

 え……誰っすか、その長い名前の、少佐?

 質問したいっすが、オレは空気は読めるっすよ。ここで「その人、誰?」とか言ったら最後、絶対とんでもない説教をくらうっす。

 後でどうにかして調べておかねば……! と、当時まだノルトヴェルガー少佐を知らなかったオレは心中で焦ってたっす。

「人種・年齢・身長制限があっても、宇宙全体となるとその数は凄いものになる」

「最後は選ぶのも面倒になって、顔で決めたって聞いたぜ」

「美形縛りな」

「それでも顔のいいやつなんていっぱいいるだろ」

「ひとによって美醜の感じ方も違うからな」

「俺たち運がよかったよな」

 あー、それでこの艦の乗組員以外、つまり同僚の下っ端戦闘員はイケメンだらけなんすね。

「ったく、顔がイイと中身もカッコイイと思われるのは、もう沢山だよ」

「それな」

「偏見だよな」

「美形がドMで何が悪いっ!」

「科学的にも人類の過半数はMなんだぞ!」

 そうだ! そうだ! とラウンジ中に声があがるっす。

 人気バンドのライヴ会場並みに、スッゴイ熱量っすよ。

 みんな美形なのがコンプレックスなんすね。でもその気持ち、オレも解るっす。自分で言うのもなんですが、中身は平凡なのに、美形なんすよ、オレ。で、顔に釣られて近づいてきた人々が、性格を把握した途端、さっさと去っていくっす。

 勝手になにかを期待して寄ってきて、勝手に幻滅し、勝手に離れてく。

 これの繰り返しっすからね。人生、厭にもなるってもんす。

「だがおれの夢はもうすぐ叶う! おれはあの地球を守る戦隊のヒーロー様に足蹴にされたいんだっ!」

「俺も踏まれたい!」

「少佐にしばかれたい!」

「道端の雑草の如く扱われたいっ!」

 みんな口々に願望を語るっす。それで判ったのは、全員がドMという生態。

 なんてことだ……オレはとんでもない犯罪集団の一員になっちゃったっす。

「おい、お前。なんだか自分だけはマトモだって思ってるみたいだがな」

 ラウンジの熱気に唖然としてたら、隣の同僚が片手をオレの肩にポンと置いたっす。

「お前もドMだからな」

「は?」

「二次選考で性格診断したろ?」

「それでドMだったから受かったんだぞ」

 周りの同僚が、可哀想なものを見る目を向けてくるっす。

 え? え? どゆこと?

「安心しろ。今回の悪の組織──秘密結社〝悪ノ華〟は、有閑令息が『お遊び』で作ったものだ。いろいろ(ゆる)い」

「訓練の主体は受け身だろ? 本気で戦えとか倒せとは言われていないからな」

「俺たち下っ端は立派なドM……いや、『やられ役』として、ヒーロー様の愛の鞭を堪能していいんだ」

 同僚たちは誤解してたオレに実態を教えてくれるっすが、オレ、まだ自分がドMって納得してないっすよ?

「けどな、あくまでも『ヒーロー様が格好良く雑魚を倒した』風に見せなきゃならん。番組観ててやられた雑魚が悦んでたら、視聴者は引く。ちびっ子のトラウマにもなりかねん」

「倒されて嬉しいがその感情を隠し、ヒーロー様を映えさせる。なかなかに難しい役どころだぞ」

「それができると見込まれて、厳しい倍率を突破し、合格をもぎ取ったんだ。やらなきゃ落ちたやつらに申し訳ない」

「…………」

 憧れのヒーローにやられるためなら犯罪者にもなる。

 誇り高き『下っ端の矜持』を持って。

 新しい職場の同僚は、そーゆー危険なドMの集まりだったっす。

初『いいね』をいただきました。押してくださった方、ありがとうございます!

ブクマ・評価をしてくださっている方も、ありがとうございます。やる気になります!

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