ディヴァースレッドVS〝白の廃園〟!?
結論から言うと、まったく闘いにならなかった。
セイカが弱い訳ではない。鳥の刷り込みのように幼い頃から見ていた特撮番組のアクションを我流でやり続けるには心許ないので、シャーリー司令官が手配してくれたマーシャルアーツと殺陣の先生から戦い方を学んでいる。(ついでにヴァリーリアンも一緒に特訓していて、終わった後には死んだ魚みたいになっている)
召喚特典で運動神経抜群になったセイカは、スポンジが水を吸収するかのごとく武芸と殺陣を我が物とし、日々進化していて、間違いなく強い。
なのに闘いにならなかっのは、偏に〝白の廃園〟がセイカの攻撃を受けるばかりで、相手にされなかったからだ。
その間に、ディヴァースオレンジに足払いされて転がったタマネギロイドは、起き上がれずに暫くジタバタしていたらしい。そして頃合いをみてセイカを除く四人に『ファイナルDブラスターショット』で倒されて巨大化。慌ててセイカはバトルフィールドを展開し、ロボ戦に突入。『スーパーレインボービーム』でトドメを刺された巨大タマネギロイドは、「タマネギを切る時は鼻と目を守ると涙が出ないぞ────ッ!!」と言い残して爆発した。
当然〝青の薔薇〟と〝白の廃園〟は去っていて、勝利したのにセイカは少々憮然としていた。基地に戻ると源三がD-ジェットの乗り心地──前回の問題点が直っているか訊いてきたが、「はい、気になるところはありませんでした」との答え方が無愛想になってしまった。
セイカがそんな風に燻っていたので、シャーリー司令官とロメロやイクシアが気を利かせた結果、今週のアジト行きは明日と決定した。
──そして翌日。
「どうしてちゃんと闘ってくれなかったんですか!?」
〝悪ノ華〟のアジトになっている宇宙戦艦のラウンジで、タブロイド紙を片手に紅茶を飲み寛いでいた〝白の廃園〟を見つけたセイカは、彼の元に駆け寄るとソファーに両手と片膝をついてぐいぐい迫っていた。
「落ち着いてください、セイカさん」
今日もイケオジな〝白の廃園〟は、ちょっと身を引き新聞を閉じてテーブルに置くと、低音イケヴォでセイカを制する。
「わたしみたいな小娘では相手にならないってことですか!」
とうとうセイカはソファーの上で正座をして(靴は外にはみ出ているが)、逃さない姿勢で〝白の廃園〟の間近に陣取る。ぷりぷりしている。
責められた〝白の廃園〟は逆に沈着冷静で、そんなセイカの若さを眩しく思う。
「そうではありません」
〝白の廃園〟はそこで言葉を切り、紅茶を一口飲んだ。それからセイカの瞳を真っ直ぐに見返して、心の内を明かす。
「この私が、貴方を、攻撃できるとでも?」
「────!!」
噛んで含めるように、〝白の廃園〟は言った。
セイカはハッとした。
間近だからこそ胸に直撃した。彼は「そう思われていたとは心外です」とオリーブイエローの瞳で、いや全身で、言外に語っている。
セイカは冷や水を浴びせられた気分になった。
「そ、そうですか……」
しどろもどろになったセイカは硬めのソファーにちゃんと座り直し、素顔のザッソー兵がささっと置いていった鎮静効果のある冷たいハーブティーを変身ブレスでスキャンすると、ストローで飲んだ。
まずい。いやハーブティーの味に問題があるのではなくて、現在のこの状況が。
こちらを見ている〝白の廃園〟は、微妙に怒ってすらいないか。
今のセイカには乗り込んできた時の勢いはなく、立場が逆転してしまったようだ。
「もちろん、ただ男は女子供に手をあげるまじ、という古典的な考えではありませんよ。力の強い男性が身体の脆い女性や子供・お年寄りに暴力を振るうことは最低なのは当然、男性に危害を加えるのも犯罪です。ですが、軍人や職種・一部の特殊な種族によっては、この限りではないでしょう」
〝白の廃園〟は淡々と語る。この世界・時代の常識と、自分の思いとを。
「それでも、私は貴方に攻撃などできません」
そう告げる彼はきっと今も、真摯な瞳をセイカに向けているのだろう。
ハーブティーを飲むフリをしているセイカは、ぐふっ、と心にダメージを受けた。その低音イケヴォでの発言は、十分攻撃になっている。
「じゃ、じゃあこの前、闘うつもりはないと言ってくれたら……」
視線でのダメージを追加で貰う訳にはいかないセイカは、無意味にストローで氷を掻き混ぜる。結構高速である。
「そうですね。でも、貴方があまりにも可愛らしく、楽しそうにしていらっしゃったので」
おっふ。追加で口撃がきた。
その声音には揶揄いが含まれている気がして、セイカは〝白の廃園〟を睨む。
「もう、また『可愛い』って言いましたね!」
「事実ですから。お嫌ですか?」
自分を見てくれたのが嬉しいのか、ソファーの背に片肘を掛けL字にひろげた指三本で顔を支えている〝白の廃園〟は、微笑みを浮かべて誉め殺ししてくる。
「嫌っていうか、『可愛い』より『カッコイイ』がいいです!」
女子なら誰でも『可愛い』と言われれば喜ぶと思ったら大違いだ、という気持ちを込めてセイカはやけくそ気味に主張する。
照れ隠しではない。美少女の自覚はまるで無く、戦隊ヒーローに憧れていたセイカは、本当に『カッコイイ』が自分の中でのナンバーワンの褒め言葉になっている。それに、特虹戦隊での『可愛い』はイクシアの担当だ。
「戦っている貴方は格好いいですよ。今日のその姿も可愛らしいですが」
そうだった。ロリータファッションで『カッコイイ』を叫んでも、説得力がない。
「まあ、そういう装いをされていても、中身は格好いいのですが」
〝白の廃園〟はさらっと追加追加で誉め殺ししてきた。
どうもその微笑みに余裕が感じられて、悔しい。
「本心からそう思っているのですか?」
「ええ。誠実に告白していますが」
「…………」
言葉のチョイスが。言葉のチョイスがもう少しどうにかならないだろうか。
「……嘘くさいです」
視線をテーブルに移したセイカは膨れっ面をして、ハーブジュースのストローを口に含む。
「では信じてもらうまで、口説かなくてはなりませんね」
ソファーに凭れていた腕を戻して両手にカップとソーサーを持つと、〝白の廃園〟はそんなことを言う。
──だから、言い方!
心の中で叫んだセイカは聞かなかったフリをして、グラスの中の氷をストローでつつく。
ハーブジュースは飲み尽くしてしまった。
ここで「時間切れです」と立ち去ったらスマートだと解っている。だけど来たばかりでイクシアとロメロの進捗具合を測らなければならないし、セイカもまだいたい。
それに何より、やられっぱなしで終わるのは性に合わない。
セイカは巻き返しをすべく、素顔のザッソー兵にドリンクの追加を頼むのだった。
対決の描写を期待していらした方、申し訳ないです。
プラントロイドとロボ戦の扱いも……すみません。




