タマネギロイド
そこに現れたのはやはりというかなんというか、〝青の薔薇〟率いる〝悪ノ華〟の一団だった。
今週のプラントロイドは──巨大な『タマネギ』だ。ニンジンロイドと同じで、絵に書いたような悪い顔がボディにあり、その左右からは手足が生えている。
「外出先で遭遇するなんて、たまたま?」
「いやこれは、運命だな」
イクシアはうんざりと、視線で〝青の薔薇〟を捕らえたロメロは嬉々としている。
「こういう展開は多いですよ。それより、一般の人達を避難させないと」
喜んでいる場合じゃないとロメロに呆れるセイカは、真っ先に駆け出す。
「だね」
「一味はオレが引きつける」
イクシアとロメロが後に続く。
『ディヴァースチェンジ!』
互いの役割を確認し、走る三人は揃って変身した。目指すは特撮でよく使われる白いテーブルセットで寛いでいた人々が襲われている、広場の一角である。
「ディヴァースオレンジ、タマネギは大丈夫ですか?」
「ボクはヒトと同じ、問題ないよ!」
「そうですか、安心しました」
猫や犬はタマネギを食べると中毒を起こすので与えてはならない。セイカは並走する山猫獣人のイクシアを心配したが、どうやら杞憂だったようだ。
「ぎゃー!」
「目が! 目がーッ!!」
「ハーハッハッハ! どうだ! しみるだろう!」
三人が到着する前に、〝悪ノ華〟は人々を苦しめ始めた。ザッソー兵は捕らえた一般人の眼前で、二人一組になって(一人は俎を持ち、もう一人はその上で)タマネギを微塵切りにしている。また別のザッソー兵は卸金を使ってタマネギをすりおろている。
うわーアレは鼻と目にくる! と強化スーツを着ているのにセイカは顔を顰めてしまった。
「なに地味に嫌な攻撃してんだよっ!」
一番足の速いイクシアが、一般人を捕まえているザッソー兵に走る勢いそのままに飛び蹴りをくらわせた。
「食べ物を粗末にするのはクールじゃないぜ?」
ロメロは遠距離から正確に、両手にしたDブラスターでザッソー兵を排除する。
流石は『百発百中のガンマン』を自称する腕前だ。拘束された一般人には当てずに解放している。
「さあ、避難してください!」
「は、はいっ」
「あっ、ありがとうっ」
セイカはザッソー兵から一般人を庇い、広場から逃す。
と、入れ替えのようにディヴァースアクアとディヴァースシルヴァーがやって来た。
「俺様の名は、タマネギロイド! 邪魔をする貴様らは!」
少し離れた所から、ザッソー兵達の働きを〝青の薔薇〟と彼の斜め後ろに控える〝白の廃園〟とで見ていたタマネギロイドは、一歩前に出て誰何した。
これは戦いながら名乗るパターンか。
セイカはザッソー兵を背負い投げて倒し、タマネギロイドに向く。
「異世界からの勇者! ディヴァースレッド!」
「カワイイは正義! ディヴァースオレンジ!」
傍のザッソー兵を後方宙返りして蹴り倒したディヴァースオレンジは、招き猫の手&片足立ちポーズをキメた。
「眼鏡は衣服です。ディヴァースアクア!」
横からかかってきたザッソー兵に手刀を入れ退けたディヴァースアクアは、眼鏡のブリッジを押し上げる。
遠方から鞭でザッソー兵達を一掃し、余裕のある足取りでやって来たディヴァースシルヴァーは、手にした革紐を引っ張って問う。
「調教されたい奴は誰だ? ディヴァースシルヴァー」
「デュラムから来た用心棒、ディヴァースゴールド!」
最後にザッソー兵達を撃ってDブラスターを回転させ両脇のホルスターに収納したディヴァースゴールドが名乗った。
ザッソー兵や例の白いテーブルや椅子は散らばって雑然としているが、セイカは号令をかける。
「希望を架ける虹の戦士!」
『特虹戦隊ディヴァースⅤ!』
五人の息がピッタリ合い、戦隊名を口にする。
その途端、各人の背後で爆発が起こった。いつの間にかザッソー兵の皆さんが、イメージカラーのセメント爆弾を用意していたらしい。
「ええい小癪な! ザッソー兵、かかれ!」
『サー!』
〝青の薔薇〟が片手を五人に向け突き出して命令を下し、ザッソー兵があらゆる方面から襲い来る。
乱戦となり、壊れにくいテーブルセットは散らかり放題だ。危ないので五人は戦いつつも徐々に何もない広場の中央へ移動していく。そして、セイカはディヴァースオレンジとアイコンタクトを取った。
今回のセイカは〝白の廃園〟と闘うため、あらかじめみんなと担当を決めていた。オレンジはアクアのサポートをしてプラントロイドを、ゴールドは当然〝青の薔薇〟を、シルヴァーはザッソー兵を引き受ける。攻撃範囲がひろく、また得物が無くてもとても強いシルヴァーは、正直一人でもザッソー兵達を倒すのは余裕だそうだ。
なのでディヴァースオレンジはセイカに頷いたあと、
「ほらアクア、行くよ!」
と、ディヴァースアクアに声をかけてタマネギロイドに向かっていく。
「は、はい!」
少し遅れてディヴァースアクアはディヴァースオレンジを追う。
それを見送って、セイカは「よし」と気合を入れ〝白の廃園〟を探す。
目指すべき人は、戦いの輪の外で真っ直ぐセイカを見つめていた。




