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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第4輪「ディヴァースレッドVS〝白の廃園〟」
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初めてのお買い物

 今まで好意でイクシアに作ってもらっていた服をセイカは気に入っていた。なので彼に相場の代金を払うため探しておいた似た雰囲気のロリータファッションを作っているブランドから、これから着ていく分をネットで購入しようとした。

 そうしたらイクシアからそのブランドの直営店か取り扱い店があるのなら、買う前に行ってサイズ合わせをした方がいいとアドバイスされた。たとえばMサイズでも、ブランドによってはSサイズ寄りだったりLサイズ寄りだったり、誤差があるという。一番違いがあり、通販して後悔するのはダントツで靴だそう。

 イクシアのゆめかわいいブランド『ANIKA(アニカ)』のようにネット販売だけなら仕方ないが、ショップがあるのなら絶対に一度は行ってサイズ感を確かめる。これ基本。

 と言われて、今日は買い物に出かけることに。そんな私情で秘密基地を留守にしていいのかとセイカは躊躇ったが、

「〝悪ノ華(ヤツら)〟が来たら、スグに駆けつけてネ!」

と、シャーリー司令官は簡単に外出許可をくれた。

 思えば〝(アク)(ハナ)〟が週一とはいえいつ攻めてくるか判らないので休日は定まっていないし、TVの戦隊ヒーローも怪人が出没すると出先から駆けつけていた。だから問題ないのかもしれない。

 折角の機会だ、存分に楽しむことにしよう。

「ショッピングもですが、空飛ぶ車でこちらの超未来的な都市を見るのも初めてです!」

「そっか。セイカって街に出るの初めてなんだ」

「はい!」

「じゃあ美味しいお昼は当然! ボクのオススメのスイーツ店とかいろいろ教えてあげるよ! ウインドーショッピングもいいよね!」

「こりゃあ、長丁場になりそうだな」

 イクシアに運転手と荷物持ちとして付き合えと言われ、承諾したロメロはカウボーイハットを被り直す。

「ロメロさんも、今日はお願いします」

「O.K.セイカ。オレなら気にしなくてもいいぜ? 女子の長い買い物には慣れてるからな。荷物持ちも任せておけ」

 申し訳なさそうにしているセイカに、ロメロはウインクして軽く請け負った。イクシアは彼の中では女子枠らしい。

 人使いが荒いイクシアに憤りもせず、「用心棒といったらオレしかいないしな」と見た目は『非力な女子二人』の街歩きを心配してくれている。心がひろい。そして大人だ。モテるのも頷ける……とセイカは感心した。

「いいですか、セイカさん。見る物全てが目新しいかもしれませんが、それらに気を取られて迷子になってはなりませんよ。決してイクシア達と離れないように」

 眼鏡のブリッジを押し上げて、母のごとく注意するヴァリーリアンは留守番組だ。理由は〝悪ノ華〟のアジトに行かないのと同じで、街でうっかり珍しい宇宙人にでも出会ったら、フラフラついていきそうだから。発言に説得力がまるで無い。

「初めてのお買い物、楽しんできてネ〜」

 シャーリー司令官は笑顔で手をひらひらと振った。

「はい、行ってきます!」

 この言葉が言えるのが嬉しくて、セイカは笑顔で敬礼した。




 軍服で私的な買い物には行けないので、セイカは試着を前提にワンピース(イクシア作。ロリータファッション的)に着替えた。靴は街歩きを考えて、ヒールの低いもの(初日に部屋に案内してくれた女性隊員が複数持ってきて、サイズが合った靴をいくつか貰った。イクシアの指示か、こちらもロリータファッション的)にしている。

「はぁ〜……」

 セイカは空飛ぶ車の窓に齧り付いて、外の景色を眺めていた。

 林立するビルも、その合間を通る何層にもなった半透明の空中道路も、その上を飛んでいる自動車も、完全にSFの世界だ。実際にそんな輪の中に入って体感しているので、余計に圧倒される。

「凄いです……!」

 これまで外出といえば〝悪ノ華〟のアジトに乗り込む時だけで、基地の宇宙港にも月面の宇宙港からアジトに行くのにも空中に浮く車には乗ったが、道程はSFチックな高層ビルが立ち並ぶ場所ではなかった。一応任務中だから、月の都市に寄り道もしなかったし。

 イクシアとロメロには日常風景である。でも飽きもせず感動しているセイカのために目的地には行かず、運転を任されているロメロはいろんなルートを選んでビルの合間を飛ぶようにしている。

 ロメロの故郷の星にはこうした大都市は数えるほどしかなく、大半の地方は『マカロニ・ウエスタン』の世界そのままだ。ロメロもそういう街で育った。ゆえに今では慣れたが、セイカの気持ちが解る。

 諜報部で活躍していたイクシアは宇宙中とは言い過ぎかもしれないが、大都市には馴染みがある。おとなしくしているのは完全に善意だ。外の景色に夢中のセイカの隣で自分のブランドの新作を考え、スケッチブックにデザイン画を描いて時間を有効活用していた。

「ドライブは楽しめたかな? お姫様」

 やがて高層ビルに左右が繋がった空中庭園の真下にある駐車場に車を停め、後部座席のドアを開けてロメロは(おど)けた風に言った。

「ありがとうございます。ちっちゃな子みたいにはしゃいでしまってすみません……」

 自動車が停まって現実に戻ったセイカは恥じ入る。いや、今の状況──ビルとビルの間に空中庭園があり、その下の駐車場でもすごく眺めがいい──にも興奮を隠せないのだが。

「いーのいーの。誰も迷惑してないから!」

「だな」

「それよりお買い物! ショップに行こう!」

 反対側から降りてきたイクシアに背中を押される。

 二人とも優しいなぁ……と心がほっこりするセイカだった。




 それから目当てのロリータファッション店で服や靴のサイズを確認し、店頭でしか入手できないテーマの一式を二、三、購入した。その際、セイカとイクシアが店長に気に入られて専属モデルにならないかと熱烈に詰め寄られたとか、ラブリーな紙袋を両手に沢山持たされたカウボーイという違和感満載の付き添いが悪目立ちしていたとか、いろいろあったが問題ない。美少女の自覚がないセイカはイクシアなら解るが自分がスカウトされたのを不思議に思いつつ、モデルは断ったし、ロメロはそもそも人目を気にする(たち)ではない。

 そして荷物を置きに一度車に戻ってから、オシャレなカフェで昼食、ウインドーショッピング、スイーツ食べ歩きと続き、自動車の停めてある空中庭園に戻ってきた。

 その庭園の中心を見て、セイカは嫌な予感を覚えた。とてもひろいそこは大半が緑や花壇に囲まれている。だが周囲より低いところにある中央の憩いのスペースには白いテーブルと椅子が置かれ、元の世界のロケ地の一つ──某県にあるセンター広場にそっくりである。

「キャーッ!!」

 突如、悲鳴が響いた。

 往々にして、嫌な予感とは当たるものである。

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