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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第1輪「きみがレッドだ!」
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侵略者

 暗闇に、巨大スクリーンが浮かんでいる。

『召喚は上手くいったようだね』

 スクリーンの中の一人が、赤色の液体が入ったグラスをゆったりと回しながら、満足そうに言った。

「はっ。万事、恙無(つつがな)く」

 発光するスクリーンの前、一段下がったところに、三人の男女が(ひざまず)(こうべ)を垂れている。

 答えたのは右端の、一見地味だが狡猾な表情をした男だ。

『アレが純血の日本人なんだな』

『驚いたよ』

『まさか女の子が出てくるとは』

『学生みたいだったね』

『まあ、条件付けは完璧だと言っていたから、問題ないだろう』

 高級な椅子に(もた)れた顔の映っていない数人が、スクリーンの向こうで他人事(ひとごと)のように喋っている。

『じゃあ次は、いよいよ全員揃っての宣戦布告だね』

 明日の天気の話でもしているかのような軽い口調で、ワイングラスを揺らした男がこちらに向けて言った。

 頭を垂れた三人に緊張が走る。

 だがスクリーンの中からは相変わらず、『やっとか』『意外に時間がかかったな』などと無責任な声が聞こえてくる。

『初めて君達の見せ場になるのだから、派手にいかなきゃね』

『華々しく登場するように』

『期待しているよ』

『ああ、愉しみだ』

『金はどれだけ使っても構わないから、存分にやるといい。その代わり、私達を満足させることが出来なかったら……解っているね?』 

 最後にワイングラスの男が釘を刺してきた。

 左端の美しい髪を垂らした女と、先刻地球で任務を終え戻ってきた中央の美青年は、従順な姿勢をずっと保ちつつもスクリーンの中の者達に気取られないように、震えた拳を握る。

 二人にとってそれは、脅し以外の何物でもなかった。

 そして、その姿をスクリーンの光が届かない部屋の片隅で見ていた美丈夫も、込み上げる感情をぐっと(こら)えていた。

 彼が見守る青年は、本来ならば人に(かしず)かれる立場の人間だ。決してあの様に他人に──それも犯罪者たちに、頭を下げる人間ではない。

 自分ではどうしようもないこととは分かっていても、憐れで胸が押し潰されそうだった。 

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