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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第3輪「発進!ディヴァースロボ」
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今週のアジト訪問

 さて、〝(アク)(ハナ)〟の月面アジトへ二回目の訪問となった本日。

「はあ〜っ。絶景だな〜っ」

 セイカはラウンジから見える光景に、再び感動していた。

 この前(初めてのアジト訪問時)は途中から『星の間』に移動してしまったので、外側から見える地球を堪能していない。無数の星に包まれた『星の間』も素敵だが、やはり地球人としては宇宙空間で青く輝く地球を眺めていたい。

「また来たのか! 貴様等!」

 険のある声とどかどかと踏み鳴らす足音がして、〝青の薔薇〟が現れた。もちろん、一歩下がったところに〝白の廃園〟もいる。

 セイカはその姿を見てドキリとした。更に向こうもすぐこちらに気付いて微笑んだので、動悸が激しくならずにはいられない。

「よう、殿下。会いに来たぜ」

 ラウンジの一角でソファーの背に片腕を乗せて凭れ、長い足を組んで素顔のザッソー兵と雑談していたロメロは、自分はここだと片手を挙げた。

「来んでいい! というか貴様はなぜそこまで緊張感もなく敵地で寛いでいるのだ!」

「まあまあ殿下、とりあえず座ったらどうだ?」

 ロメロの前まで行き指を突きつける〝青の薔薇〟は、その手首を捕まれてあっという間にロメロの隣に座らされていた。

 流石は〝ハートブレイカー〟、見事な手際だ。そしてすかさず〝青の薔薇〟の分のアイスティーを出す素顔のザッソー兵もそつがない。

「ねーねー! 〝紫の百合〟のお姉さんは来ないの?」

「は。あの方はなんとも……」

「我々の前には滅多に姿を現さないので……」

 自作の服と自前の猫耳・尻尾で『ゆめかわいい』を体現している山猫獣人(リンクシーズ)のイクシアは、背後で腕を伸ばして指を組み、小首を傾げてその辺にいた素顔のザッソー兵に質問していた。あざとい。

 馬鹿正直に答える素顔のザッソー兵達は頬を染めている。

 そこからのイクシアは速かった。

「じゃあボク、お姉さんを捜してくるね!」

 素顔のザッソー兵が止める間も無く、身軽いイクシアは艦内の奥に駆けていく。

 可愛さで相手を油断させておいての突破、こちらも見事である。セイカもイクシアやロメロに負けてはいられない。

「……今週は会えないと思いました」

 〝白の廃園〟はコの字型に何列も並んでいるソファーの一番地球に近い側の通路、ロメロ達がいる隣の隣のボックスで足を止め、宇宙を正面にした最も眺めの良いお客様席に座っているセイカを見つめる。

「そちらに突撃されたのですから、こちらも突撃しますよ」

 地球を背にして立っている〝白の廃園〟の手を引いて、セイカは自分が座っていたソファーの斜め右側に彼を導く。触れた手が熱くなってしまうが、仕方ない。

 席に着くのを見計って、注文していたメロンクリームソーダと紅茶が届いた。

「ロボ戦は視られましたか?」

 緑色のソーダにバニラアイスと赤いさくらんぼが浮いた、典型的なクリームソーダをまず目で楽しむセイカは、〝白の廃園〟に確認した。

 通常の地上戦は担当のザッソー兵が撮っているが、ロボ戦のバトルフィールドは彼等を締め出してしまう。なので、その様子だけは軍がライヴ配信していた。

「ええ、視ていました。正直、あそこまでとは……宇宙政府軍の凄さを実感しましたね」

 変身ブレスでクリームソーダをスキャンしてから飲みだしたセイカを眺めながら、〝白の廃園〟はしみじみと言った。

 巨大化したプラントロイドの戦闘が街中で始まっても大事にはならない情報は掴んでいたが、方法は知らなかった、あそこまで完全に現実世界と隔絶できるとは思っていなかったと推察する。

「わたしも知らなかったので、ビックリしました」

「当事者でリーダーの貴方が知らなかったのですか?」

「はい。ぶっつけ本番です。仲間がいたので、この世界の科学力は高度だとか感心する余裕はありましたが」

 自ら目を逸らしていたとは言えず、セイカは先がスプーン状になっているストローの蛇腹を曲げてメロンソーダを飲む。

「おかげで、あなた方の罪が厳しいものにならなくてホッとしています」

「……ッ! …………」

 浮いてくるくる回るバニラアイスを食べようとストローで格闘しだしたセイカのしれっとした発言に、〝白の廃園〟は息を呑んだ。

 なんでもない風にしているが、その言葉は〝悪ノ華〟の構成員には重い。

 三方向のソファーで寛ぎつつも耳を(そばだ)てていた素顔のザッソー兵達のなかには、感極まっているのか鼻を啜る者もいる。

 この人には敵わない……と〝白の廃園〟はセイカを優しく見つめた。

「今日のお召し物も、とても可愛らしいですね」

 トランプの絵が裾のフリルより上にランダムに並んだ水色のワンピースに、白のエプロンドレスを着ているセイカだ。ロリータファッション定番のリボンやレースで飾られたヘッドドレスも付けている。

「これは地球で有名な童話『不思議の国のアリス』がモチーフなんです」

 褒める〝白の廃園〟の瞳がやけに熱がこもっている気がして、セイカは内心で焦った。

 人が多いラウンジを選択して正解だった。ロメロが言っていたとおり、『星の間』を使うのはここぞという時でないと雰囲気に流されて危ない。

「──なるほど。貴方はこの『敵地のアジト』という不思議の国に迷い込んだ美少女だと」

 妙な空気を払拭しようと童話の内容を説明したら、〝白の廃園〟はセイカに向けてそう結論づけた。

 いや、『少女』って言ったよね!? どこで『美』が追加されたのかなっ!?

「と、ところで。来週は〝青の薔薇〟の番ですよね!」

「おや。急な話題転換ですね」

 分かっているだろうに、〝白の廃園〟はわざと指摘してくる。セイカは明後日の方向に視線を向け、無駄にバニラアイスをストローでつついて回し続けた。

「まあ、いいでしょう」

と言って、〝白の廃園〟は紅茶を一口飲んだ。

「そうですね、順番通りならば来週は若が出撃します。……戦場で会えますね」

 ぐはっ。見逃してくれたと油断したら追撃がきた。セイカは内心でダメージを負った。

 しかし、戦隊のレッドとして大人しくやられてばかりはいられない。

「手加減はしませんよ?」

「? 私と闘う気ですか?」

「だってルニーさん、闘えるでしょう」

 〝白の廃園〟の手は、闘う人のそれである。この前『星の間』で触れた上腕も無駄のない筋肉に覆われていた。

 第一、『次代の王』のお目付け役だ。相当な戦闘力を有しているのが当然だろう。

「貴方という人は…………困りましたね」

 さっきとは打って変わって挑戦的な目で自分を捕えるセイカに、〝白の廃園〟は苦笑する。敵地で敵を挑発するとは。

 けれど、そういうところも好ましい。

「来週が楽しみです」

「……そうですね」

 セイカはニッコリとする。これは闘いは避けられない。悟った〝白の廃園〟は仕方のない人だと思うも、楽しそうにしているセイカの気持ちに水をさしたくはないので、一応同意するのだった。

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