GO!ディヴァースロボ
近年のロボ戦は作り込まれたリアルな都市の中で攻防が繰りひろげられ、毎週わくわくして視ていた。だがそれが現実となると、話は別だ。巨大ロボがミサイルで攻撃したり転がって受け身をとったりバイクに乗って走行したり、巨大怪人が最期に爆発したり……被害が甚大になるのは明白である。
だからセイカはフラグを立てないように、敢えてロボのことを質問しなかった。説明もされなかったし。
けれどもこの何も無いドームの中でなら安心して戦える。科学が進んだ時代ではいろいろとできるらしい。便利だ。
『みんな! 今からメカを送るわヨ! レッドは戦闘機「D-ジェット」に、オレンジとアクアは潜水艇「D-マリン」に、シルヴァーとゴールドは重戦車「D-タンク」に乗り込んで!』
変身ブレスからシャーリー司令官の指示が届く。
「なんでぶっつけ本番なんだ……」
「ボク水系なの!? ヤだよー!!」
ディヴァースゴールドは呆れ、ディヴァースオレンジは苦手な水モノが不満で両手を突き上げその場でぴょんぴょん跳ねる。
ディヴァースアクアとディヴァースシルヴァーは動じていないので、知っていたのだろう。
まあね。フラグを回避してもダイナー(食堂)での人出を見ていれば、あると分かってたよね。ツナギを着た人達が結構沢山いたからね……。セイカは遠い目をした。
「ガアアアア──ッ!!」
ニンジンロイドの巨大化が終了した。セイカ達はバトルフィールドに飛び込んできた各メカにギリギリで乗り込めた。
「食らえ! スティック爆弾!」
巨大化前と同じ、ニンジンロイドは両腕を伸ばし、第一関節を折り開いた指の中からニンジンスティック爆弾を飛ばしてくる。
「ええい、ちょこまかとッ!」
空中にはD-ジェットが、足元ではD-タンクと、どういう原理か背鰭以外が地面に沈んだサメ型のD-マリンが動きまわて攻撃しており、ニンジンロイドは連射しているスティック爆弾の狙いを定められずにイラついている。
演習なしでD-ジェットに乗り、折りを見て攻撃を加えているセイカは、やられた、と思った。
秘密基地には遊戯室があり、その半分くらいがゲームセンターそのものだった。壁際には数々の筐体が並び、中央には叔母が十代の頃に好んで遊んでいたという、戦闘機に乗ってノルマの敵機を撃墜したり空母に攻撃を加えるゲームがある。操縦席はレバーの操作に連動しているリアル路線のマシンだ。今のセイカならプレイできると嬉々として搭乗し、日々高得点を叩き出していた。
D-ジェットはそのゲームにそっくりだ。遊びだと楽しんでいたら、訓練だった訳である。
しかし、ゲームで高得点をマークし続け、操縦が極力簡略化されているとはいえ、ド素人にいきなり実戦させるとか、ない。セイカが逃げないように説明しなかったのか、戦隊好きならなんとかなると謎の信頼を寄せてきたのか。シャーリー司令官は意外にスパルタだ。
「どわぁっ!」
D-マリンとD-タンクに翻弄されていたニンジンロイドは、ついにバランスを崩して後ろに倒れた。
『今ヨ、ミンナ! 合体しなさい!』
「ええーっ!!」
「合体!?」
シャーリー司令官の命令に、ディヴァースオレンジとディヴァースゴールドは驚かずにはいられない。
『合体するロボットは日本の専売特許ヨ!! ソコに「合体」のボタンがあるでしょ!? 四の五の言わずにサッサと押すの!』
確かにセイカのいた世界では、昭和の中期には合体するロボットアニメが大量に放映されていたという(叔母さん談)。
それはともかく、今のうちに合体を済ませてしまわなければ。
「皆さん準備はいいですか?」
「OKレッド。こうなったらやってやるぜ」
「僕達も問題ないです」
「なんでアクアが答えてんの!? こっちもOKだよ!」
ディヴァースアクアとディヴァースオレンジがまた揉めている。半魚人と猫の相性が悪いのか、だが今はそれを気にしている場合じゃない。
「ではいきますよ!」
『合体!!』
セイカの掛け声で、一斉に合体ボタンが押された。
するとまずD-タンクが胴体と両足に変形する。次にD-マリンが二つに分かれてD-タンクの胴体に合体、両腕になって先から手が出現した。最後にD-ジェットが上を向いてD-タンクの胴体に合体し、腹部が割れて顔が現れる。
内部では全ての運転席が動き、胴体にある一部屋に集められた。席順は一番前にディヴァースレッドが座り、その後ろにディヴァースオレンジとディヴァースアクアが、そのまた後ろにデイヴァースシルヴァーとディヴァースゴールドが並んでいる。
オーソドックスなタイプである。
『完成! ディヴァースロボ!』
全員で宣言したのと同じくらいに、ニンジンロイドが立ち上がった。
「ちょっとコレどうやって動かすの!?」
『簡単ヨ! レッドが操縦してオレンジは右腕で攻撃、アクアは左腕の盾で防御、シルヴァーは右手で扱う武器を変更、ゴールドは各所についているマシンガンとミサイルで攻撃! トドメは全員で「スーパーレインボービーム」、略して「SRB」ボタンを押すのヨ! 以上!』
操縦室内にシャーリー司令官の早口な説明が響く。
「もーっ! ドコが簡単!?」
無茶振りの連続に堪らずツッコミを入れてしまうディヴァースオレンジだ。
「五人で力を合わせて倒さなくては戦隊の意味がないということですね!」
セイカの気分は高揚していた。D-ジェットから見る景色もだが、ここから見る大画面にも同様にガイドラインや計器が表示されていてカッコ良い。巨大なニンジンロイドが両手を向けてくるが、それさえも臨場感のあった戦隊番組のワンシーンに思えて恐怖は全く感じない。
「いきますよ!」
「防御ですね」
スティック爆弾を横に転がって回避し、盾で防ぐ。そして攻撃が途切れたところで反撃に出るが。
「シルヴァー! 鞭ばっかり持たさないでくれる!? 接近したから剣でしょ剣!」
「そうか」
ディヴァースオレンジに怒られて、ディヴァースシルヴァーは素直に武器を変えてやる。その間、ディヴァースゴールドはマシンガンでニンジンロイドを牽制していた。
「クールに『そうか』じゃないよ、まったく! オマエもワンパターンな攻撃ばかりだし! ていっ!!」
半ば八つ当たり気味にディヴァースオレンジは剣を振るい、攻撃を再開しようと突き出していたニンジンロイドの両腕を白刃一閃して吹っ飛ばす。
「よしっ」
ニンジンロイドは後ろによろけ、ディヴァースオレンジはガッツポーズをした。
「では、決めますか」
「はい。決めましょう!」
眼鏡のブリッジを押し上げるディヴァースアクアにセイカは同意する。
「ニンジンロイドさん、今度こそ成仏してください!」
『スーパーレインボービーム!!』
五人が『SRB』ボタンを同時に押すと、ディヴァースロボの胸部から必殺技、七色の超破壊光線が放たれた。
「グオオオオ────!! みんな、ニンジンを食ってくれよ────ッ!!」
ニンジンロイドは倒れながらそう言い残し、ディヴァースロボが背を向けた瞬間、爆発する。
不思議な空間にいるが、このロボ戦も有閑令息達が愉しむために中継されているに違いない。
セイカはディヴァースロボに決めポーズをとらせ、爆風が治まると静かにそれを解いた。
ロボ戦もゆるいです。すみません。




