巨大化!
「異世界からの勇者! ディヴァースレッド!」
「カワイイは正義! ディヴァースオレンジ!」
「眼鏡は衣服です。ディヴァースアクア!」
「調教されたい奴は誰だ? ディヴァースシルヴァー」
「デュラムから来た用心棒、ディヴァースゴールド!」
強化スーツに変身して順番に名乗り、セイカが代表して前置きを口にする。
「希望を架ける虹の戦士!」
『特虹戦隊ディヴァースⅤ!』
初戦とは異なり立っている位置はバラバラだが、戦隊名の名乗りは見事に揃った。今日は街中なので爆発は起こらない。
しかし、驚くべきことに演出担当(?)のザッソー兵達は、後ろに壁などが無いのにプロジェクションマッピングのような背景を、各人から五人揃った分まで、何かの機材で空間に描いている。セイカのいた世界ではCGで映像に処理するところを現場で、一人一人の色に合わせた戦士名入りの、五人揃って戦隊名の名乗りには全体に虹が架かって煌めいている凝り具合だ。
その科学力はこの時代では当然なのか、セイカ以外の四人は平然としている。それよりも現場でこういった演出をしてきた意味──有閑令息達がライヴで見ている、という可能性が高いほうが問題か。
「ええい、ザッソー兵! やってしまえ!」
『サー!』
ニンジンロイドが命じると、ザッソー兵がかかってきた。
「お姉さんっ! こんなことしちゃダメだよ!」
身体能力の高い山猫獣人のディヴァースオレンジはそれを見事に飛び越えて、〝紫の百合〟の元へ駆けていく。
「そもそも、これでどう地球侵略をしようと?」
ザッソー兵の攻撃に加えニンジンロイドのスティック爆弾が飛び交うなか、陸での戦いが苦手なディヴァースアクアの近くでサポートしていたセイカは、彼の呟きを耳にする。
「こういうものなんです」
そう。戦隊モノの中ボスやラスボス、第三勢力でもない敵に、非情な強さを求めてはいけない。
初期の頃の戦隊は命をかけて戦っていたが、視聴者が子供メインの番組にそれはハードな設定で、だんだん変化していった。
悟りきったセイカの声音でディヴァースアクアは察した。
「そうですか。こういうものなんですね」
「はい。そうなんです」
今回は本気で地球侵略するつもりなどないだろう、有閑令息達の暇つぶしに付き合っているのだ。日本どころか一都も侵略できそうにない敵でも、奴等の注意を引きつけておければよいのである。
そうこうしているうちにザッソー兵は片付き、立っているのはニンジンロイドと〝紫の百合〟だけになった。
「くっ……!」
〝紫の百合〟は形勢を不利と見て、悔しげに姿を消す。
「あーあ。お姉さん行っちゃった」
アジトで会えるからか、ディヴァースオレンジは深追いはしない。セイカは彼を労う。
「テンプレを分かっていますね、ディヴァースオレンジ!」
「そう? ボクってえらい?」
「はい! えらいです! あとは皆さんと一緒にニンジンロイドを倒しましょう!」
「まかせて!」
五人でDブラスターを構える。
「ま、待て待て! まだ俺はほとんど何にも──!」
パワーが充填されていく銃をいくつも向けられたニンジンロイドは焦りだすが。
「すみませんが待てません! 成仏してください!」
セイカ達にここで『逃す』という選択肢は無い。脅威は少なかろうと、人々の暮らしを守るのには早い方がいいに決まっている。
それにプラントロイドには組み込まれた悪の回路が植物の身体に複雑に馴染んでいて、改心させるのも回路を摘出するのも無理だという。「出現次第、破壊せよ」と軍本部から命令が下っていた。
その仕様といい大幹部を脅していることといい、随分と気分の悪い『暇潰し』である。
『ファイナルDブラスターショット!!』
充填が完了したDブラスターから同時にエネルギーが放たれた。
「グアアアア──ッ!!」
膨大なエネルギーに包まれたニンジンロイドは爆発した。
怪人の倒し方は最近の戦隊方式だった。
『まだヨ! まだ終わりじゃないワ!』
感傷に浸っている間もなく、変身ブレスからシャーリー司令官の声が響く。
『プラントロイドは巨大化するわヨ!』
背を向けて爆発の光を目に入れないようにして(なかには決めポーズをとって)いた五人は、素早く振り返った。
『最新情報によると、プラントロイドは生命の危機に晒されると巨大化する仕組みになっているらしいワ!』
「なんだって!?」
「巨大化!?」
『だから現実世界の被害を無くすために、今からプラントロイドを起点にしてバトルフィールドを展開するわヨ! 準備はいい?』
「準備って!?」
「心の準備ですかね」
ディヴァースシルヴァーを除いて次々ともたらされる情報に焦るセイカ達と、もはや達観の域にいるのかディヴァースアクアは眼鏡のブリッジを押し上げてフッと苦笑する。
『セイカちゃん! 変身ブレスに「バトルフィールド展開」って言って!』
「はっ、はい! 『バトルフィールド、展開』!」
目の前でニンジンロイドがどんどん巨体になっていくのを見ていたセイカは、急いでシャーリー司令官の命令に従った。
その途端、上空から一筋の光がニンジンロイドに降り注ぎ、ドーム状の空間ができあがる。中には自分達以外の人も、飛行している自動車も建造物も無い。完全に現実世界から隔絶された場のようだ。
アクションや、もうちょっとプラントロイドが悪さをする展開を期待していた方、すみません。
当物語はこういう形式でサクサク進めます。




