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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第2輪「そうだ、アジトへ行こう!」
17/80

法則

 初陣の翌日。

「う〜ん」

 六角テーブルの一角。セイカは赤色の椅子にかけ、モニターを見てああでもないこうでもないと唸っていた。

「セイカちゃん、なにを画面と睨めっこしているの?」

 コトリとグラスを置いて、シャーリー司令官が声をかけてきた。

 水分を取れという気遣いは嬉しいが、またトロピカルなジュースである。彼女の中でセイカのイメージはどうなっているのか。 

「ありがとうございます」

 一応差し入れに対する礼を言い、丁度いいと顔を上げる。

「シャーリー司令官、わたし達の戦隊名とイメージカラーはどういった理由で決められたのでしょうか?」

 振り仰ぐセイカの質問にシャーリー司令官は目を丸くし、

「あら、説明してなかったかしら」

と頬に手を添え首を傾げ、記憶を探った。

「そういえば、僕も正式には知らないですね」

 左隣のヴァリーリアンが話に混ざってきたら、「ボクも知らなーい!」「オレもだな」と各自のフリースペースの方からもイクシアとロメロの声が上がった。

 イクシアは着替え用にセイカの私服を複数作っており、ロメロはソファーで組んだ手を枕にし長い脚を肘掛けに乗せて(くつろ)いでいる。

 エフェドラは本職を離れているとはいえ休職している訳ではないので、部下から報告を受けたり指示を出したりそれなりに忙しく、この場にはいない。

「アラアラ、アタシったら」

 歳をとると忘れっぽくなっちゃって、イヤーねぇ。とシャーリー司令官は(うそぶ)いているが、誰もツッコミはしなかった。薮蛇だから。

 セイカはグラスを手に取って、ストローを吸う。間がもたない時はジュースを飲もう。

「なんだかミンナして失礼なこと考えてる気がするけれど、ま、いいワ」

 いいんだ。

「ええと、戦隊名とイメージカラーの由来だったかしら? 戦隊名は見てのとおりヨ。『多様な五人』で『ディヴァース(ファイヴ)』ネ。『特虹戦隊(とっこうせんたい)』の『虹』は多様性の象徴からヨ。イメージカラーはアタシの直感で決めたワ」

 確かに、司令官も含めてこの戦隊は見事に個性がバラバラだ。それはセイカも予想していたが──

「この世界では多様性を表す虹は何色(なんしょく)ですか?」

「六色ね。日本人としては七色だろって思っちゃうけどネ」

 ふむ。セイカがいた世界と同じだ。

「ボクは『ピンク』がよかったのにー!」

「少佐は『黒』のイメージだよな」

「直感ですか……。虹の色彩にはしなかったのですね」

 そう、それだ。少佐は完全に『黒』のイメージだし、虹に『シルヴァー』や『ゴールド』は含まれない。それにシルヴァーとゴールドは今では『追加戦士』の色である。

 ゆえにセイカは悩んでいたが、シャーリー司令官の「直感」という理由を知ってハッとした。もしかしたら『追加戦士』はないが、『追加敵幹部』もしくは『追加第三勢力』のある1980年代戦隊方式ではないか、と。

 だとすると──

 セイカは再びモニターに向かい、キーボードを叩いて予想したものを入力していく。

 ビンゴだ。

「分かりました!」

 セイカは思わず叫んで立ち上がった。自分の推理が正しかったことよりも、その結果に興奮せずにはいられなかった。

「ど、どうしたのセイカちゃん。何が分かったの?」

 いきなり目の前にセイカの頭が迫ってきて、シャーリー司令官は背を反り気味にして聞いた。

 異世界召喚されても地球を守る軍人になっても初陣でも冷静でいた彼女が強く感情を表すなんて、どうしたのかと他の三人も注目する。

「これを見てください!」

 セイカはまだ興奮している。

「こ、これ?」

 言われてシャーリー司令官はセイカのモニターを覗き込んだ。そこには名前が並んでいる。ディヴァースⅤの五人と、〝(アク)(ハナ)〟の五人の名が。

 〝悪ノ華〟の五人は、昨日いた三人の大幹部と〝青の薔薇〟のお目付け役、そして召喚の代償で今は寝込んでいるであろう残り一人の大幹部だ。それも組織での役職名ではなく、本名である。

 〝紫の百合〟の本名は、ソフィー・アルカナ。

 〝青の薔薇〟の本名は、イカコ・クー・クー。

 〝白の廃園〟の本名は、タガルニナ・ノヴェチェント。

 まだ姿を現していない『追加敵幹部』の可能性がある〝()庭師(にわし)〟の本名は、トミー・J・ナイトシェイド。

 〝緑の指〟の本名は、ユーリィ・バートン・ハードハック。

 宇宙政府軍の情報収集力は素晴らしく、大幹部からザッソー兵の一人一人、果ては〝悪ノ華〟に少しでも何らかの形で関係している者に至るまで、このコンソールで詳細なプロフィールが閲覧できる。

「わたしのいた世界では伝説の初代戦隊で、戦士の本名の頭文字を繋げると敵の首領の弱点になっていたという法則がありました。ですからわたし達でも何かあるかもと思って探していたんですが──」

「見つけたのですね? その法則を」

 ヴァリーリアンが眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、瞳を光らせる。

「はい。アルファベット表記でわたし達五人と、虹の色が役職名に入っている〝悪ノ華〟の五人を合わせたら」

「どれどれ? D ・I・V・E・R・S・I・T・Y」

「ダイヴァーシティ──『多様性』ですね」

 モニターを覗き込んだシャーリー司令官がアルファベットを読み上げ、ヴァリーリアンが言葉にする。

「でも『T』が二人いるわヨ?」

「そうなんです。〝青の薔薇〟のお目付け役〝白の廃園〟のあの人か、わたしを召喚したらしい大幹部〝黄の庭師〟か」

 どちらも本名の頭文字が『T』である。

「虹に関係しているのなら、〝黄の庭師〟の方じゃないのか?」

「いえ、一概にそうとは決められませんよ。稀に夜、月明かりで見える虹を『ムーンボウ』といい、色は白に見えます。日本では古くから昼でも『白虹』が見られたという記述があります」

 ロメロの指摘はもっともだが、ヴァリーリアンは知識を披露して結論づけるには尚早だと言う。

「じゃあどっちもってことでいいじゃん」

「シア、面倒くさくなってない?」

 服を作りながらぞんざいな発言をするイクシアにシャーリー司令官は呆れた目を向けた。

「で、セイカちゃん。これが分かったところでどう解釈するの?」

「敵方との合わせ技ですからね。それが意味するのは……」

 シャーリー司令官はセイカに視線を戻すと単純に不思議そうに問い、ヴァリーリアンは真面目に考え込む。

「この戦いのテーマは『多様性』、モチーフは『虹』と『植物』だと思います」

 セイカは確信していた。

「仲間にもうシルヴァーとゴールドがいることで『追加戦士』はなく、〝黄の庭師〟が後半戦で『追加敵幹部』として出てくる可能性が高いでしょう」

 どうしてそう言い切れるのか、元いた世界の戦隊シリーズのパターンを簡単に説明する。

「そして七色の虹プラス白虹で、虹の色をイメージカラーとしている五人の敵を『改心させる』または『救い出す』のがわたし達の使命です」

 でなければ、『ダイヴァーシティ』の文字は揃わない。

 セイカの心は燃えていた。戦隊シリーズの中で、複数の敵が紆余曲折あって味方になるというスペースオペラな世界が舞台の作品が、一番好きだからだ。

 ここは現実で、主要敵五人全員を味方にするには相当難しいだろうが。

「それはまた……苦労しそうですね」

「でもまあ脅されて大幹部をやらされているコ達は救済する方向で動いているし、〝緑の指〟はエフィに任せておけば大丈夫でしょ」

 シャーリー司令官は大幹部の一人を〝漆黒の魔王〟に丸投げした。昨日ヴァリーリアンが名乗り時に教えてくれたとおり、エフェドラと〝緑の指〟は同じ惑星出身だとデータにある。どういう因縁があるのかまでは書かれていないが、戦いの最中の扱いを思い返すとちょっとだけ〝緑の指〟が気の毒になった。

「問題は〝黄の庭師〟だけど……正直、謎が多すぎるのよネ。種族的にも、動機的にも」

 人差し指を顎に当てて、シャーリー司令官は虚空を見上げる。

 確かに〝黄の庭師〟のプロフィールは空欄が多い。セイカとしては『D』の頭文字が召喚条件に組み込まれていたのかどうかを聞きたいところだ。

「情報はそのうち集まってくるだろうし、出番が先なら出てきてから考えたらいいんじゃないの?」

「おや、〝諜課のワイルドキャット〟ともあろう人の発言とは思えませんね」

「そのケンカ、買った!」

 イクシアは今度も小さなボールを次々と出し、フリースペースからヴァリーリアンに投げつける。慌ててセイカは自分のジュースを守った。

「よし、〝悪ノ華〟のアジトに行こう」

 唐突にソファーから起きたロメロが言った。

 瞬間、みんなの動きがピタリと止まる。

「大幹部を味方につけなきゃならないんだろ? 情報収集にもなるし、日本語で言うところの『一石二鳥』だぜ」

 フロア全体が「なに言ってんのコイツ」みたいな空気になったのも気にせず、ロメロは立ち上がる。

「そんなこと言って、ただ〝青の薔薇〟を口説きに行きたいだけじゃないの?」

「ダメじゃないだろ? 脅される理由が無くなった時、素直にこちら側に来られるようにしておくのもオレ達の務めじゃないか?」

「はいはーい! ボクは〝紫の百合〟のお姉さんを担当しまーす!」

 ボールを投げていた手を上げて、イクシアはロメロに同調する。

「じゃあ、セイカとシアとオレとで行ってくるわ。いいだろ、司令官」

 え? わたしも!? ていうか〝悪ノ華〟の最前線のアジトは月に係留中の宇宙船じゃなかったっけ? 宇宙時代だからって、そんな簡単に月に行けちゃうの!? いや彼等は頻繁に地球に来ているけども!

 他人事(ひとごと)だと思ってジュースを飲んでいたセイカは混乱している。

「僕は留守番組ですか?」

「珍しい宇宙人がいても使命を見失わない自信があるなら来な。だがその前に、行く気ないだろ」

「バレましたか」

 水中なら行けたんですけどね、とヴァリーリアンは苦笑する。宇宙人の稀少種に釣られるより、陸での運動神経の(つたな)さを自覚しているから、気軽に敵地には行けない、と。

 その気持ちは凄く解る。セイカもつい二日前まではありえないほどの運動音痴だった。普通に動けることがこんなに便利なのかと未だに驚いている。

 ヴァリーリアンに同情しているセイカの傍らで、シャーリー司令官は溜め息をついた。

「しょうがないわネ。行くからにはちゃんと成果を上げてくるのヨ?」

「もちろんだ。ただし、誰が相手でも口説くには焦りは禁物、時間をかけるものだぜ?」

 ロメロは〝ハートブレイカー〟らしい心得を説き、カウボーイハットを被った。

 こうして〝悪ノ華〟に宣戦布告された翌日、彼等のアジトに乗り込むメンバーにされてしまったセイカだった。なにもかもが急展開すぎる!

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