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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第1輪「きみがレッドだ!」
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乱戦!

 広場は混戦の様相を呈していた。

 最初、順当にいけば距離はそれなりにあれど、セイカと対面している大幹部〝青の薔薇〟(+ザッソー兵達)との戦闘になると思われた。だが斜め左から放たれた光弾が〝青の薔薇〟の足を止め、両手でD(ディー)ブラスターを構えたディヴァースゴールドがすかさず間合いを詰める。

「なんだ貴様は!」

「ユーの相手はこのディヴァースゴールドが引き受けた。ヨロシク、青薔薇の(きみ)!」

 〝青の薔薇〟が振り下ろした剣を二挺のDブラスターで受け止めたディヴァースゴールドは、強化スーツで見えないがきっと彼に向けてウインクしているに違いない。

 ガンマンであるディヴァースゴールドが接近戦に持ち込んだのでセイカは驚いたが。

「ところでユー、好きなものは?」

「はぁ!? 貴様、なにを言っている!」

「だから、好きなものさ。花でも食べ物でも本でもなんでも。ああ、趣味でもいいぜ?」

「なぜ貴様にそんなことを教えねばならん!」

「決まってるじゃないか。ユーのことが知りたいからさ」

 またウインクしてるな、とセイカは確信した。

 ディヴァースゴールドは片方のDブラスターで〝青の薔薇〟の剣を()なし、もう片方のDブラスターで周囲のザッソー兵を片付ける。そしてその間も〝青の薔薇〟を口説くという、器用なマネをしている。流石はディヴァースⅤに選ばれし、マカロニの星から来た男。

 〝青の薔薇〟が気に入ったのなら彼に任せよう。そうセイカが呆れてザッソー兵を適当に片付けていると、

「そこの貴女(あなた)、わたくしとお話しない?」

と言う美しい声と共に、ひらひらした紫の布に隠れた黒いヒールが目の前を(かす)めた。

 危なかった! 反射的に身を退()かなかったらモロに(あご)に入っていた!

 いつの間にか接近していた〝紫の百合〟が、外した攻撃の勢いのままくるりと回り、今度は姿勢を低くして足払いを掛けてくる。

 それを跳んで避けたセイカは、話をしたいのならなぜに不意をついた最初、気絶する足技を仕掛けてきたのか? と疑問に首を傾げた。

 そこに割って入ってきたのはディヴァースオレンジだ。

「ねーねーお姉さん! ボクと仲良しになってよ!」

 猫獣人らしく身軽に空中で一回転して着地し、〝紫の百合〟に拳で向かっていく。……猫拳?

「ちょっとあなた、邪魔しないでくれるかしら」

「えー邪魔じゃないよ! お姉さんと親しくなりたいだけだよ?」

「乙女以外に興味はないわ」

「ボクって性別を超越してカワイイを極めてるから問題ないよ!」

 会話をしながら足技と猫拳の攻防を繰りひろげている。ディヴァースオレンジの自信も凄いが、白い足首が時々見えるくらいで済んでいる〝紫の百合〟の黒いハイヒールを履いた足捌(あしさば)きが巧みすぎる。黒の喪服に見えたドレスは一色ではなく(すそ)にいくほど紫色になっていて、薄い布が何枚も重ねられているようだ。

「ああでもこのカッコじゃボクの可愛さが分からないよね。今度デートしない?」

「……だからオスに用はないのよ!」

 ユニコーンの獣人なのでセイカを狙い、ハイヒールでも余裕の足技(馬は爪先立ち・馬種によっては後ろに立つと蹴られる危険性大)を展開し、ゆめかわいいデザイナーもしているディヴァースオレンジに目をつけられたという状況なのか。

 馬に、いやこの場合、猫に? 蹴られたくはないので、セイカはその場をそっと離れることにした。デイヴァースオレンジの攻めが激しいので気付かれはしないだろう。

『ソーッッッ!!』

 ザッソー兵が大量にやられる声が聞こえてきた。目をやれば、ディヴァースシルヴァーが縄で緊縛した〝緑の指〟を右足で踏みつけており、長い鞭で周囲のザッソー兵を一掃したところだった。きちんと円になって小さな爆発も起こっている。芸が細かい。

 そしてまた粉塵が消える前に新たなザッソー兵がディヴァースシルヴァーに向かっていき、ぐるりと鞭で打たれて円形に小さな爆発が起こる。この繰り返し。

 どうもザッソー兵達は自分で小さな爆発物を持っていき、鞭で攻撃される前に足元に置いているみたいだ。ドMがいっぱいすぎる。

 大幹部の一人なのに簡単に捕縛され足蹴にされている〝緑の指〟は、もがくたびに踏む力をかけられるのか「ぐっ」とか「くそっ……!」などと(うめ)いている。彼はドMではないようだ。

 ま、まあ伝説の初代レッドも主な武器が白い鞭だったし……ディヴァースシルヴァーも問題なく戦っているということで。どちらが悪役か分からない所業だけど。

「くっ……! 水中戦なら楽勝なんですがっ」

 三人の戦士がそれぞれ大幹部に積極的なので、楽なのか呆れていいのか判断に困りつつD(ディー)ソードでザッソー兵の相手をしていたら、ディヴァースアクアの悔しそうな呟きが耳に届いた。

 彼はDブラスターで周囲から次々と攻撃してくるザッソー兵をなんとか倒している。

「アクア、大丈夫ですか!?」

 ザッソー兵の半分を引き受けるべくセイカは素早くディヴァースアクアの背後についた。

「レッド、済みません。助かります」

「お互い様です。石に偽装した爆発物が近くにあるので、足元に気をつけてください」

 セイカはDソードで、ディヴァースアクアはDブラスターでザッソー兵を片付けていく。時々あちらこちらで爆発が起こる。

 こうなるともう映画規模の戦場だ。初戦だからって〝(アク)(ハナ)〟、張り切りすぎでは?

 立っているザッソー兵が少なくなってきたから、もうちょっとで終わるかな。

 ディヴァースアクアが苦戦していたザッソー兵を倒したセイカは、全体の様子を眺める。と、遠くで一人佇む美丈夫の姿が目に留まり、ドキリとした。

 〝白の廃園〟と名乗ったその人は、後ろ手にして立っており、『若』と読んだ〝青の薔薇〟の方を見ている。『お目付け役』と言っていたとおり、『若』に何かない限り、参戦しない方針なのか。初めて会った昨日も召喚時に受け止めてくれただけで、攻撃はしてこなかったし。

 やがて全てのザッソー兵が倒れ、まだ戦える状態なのは〝紫の百合〟と〝青の薔薇〟の二人のみになった。爆発物も使い切ったと見て取った〝青の薔薇〟は、

「チッ、今日はここまでにしてやる!」

と捨て台詞を吐き、昨日とは異なる大型の空飛ぶ円盤で、サッと通ると全員を回収して去っていくという、近年の戦隊モノお決まりの謎退場をした。

 ディヴァースシルヴァーの足元にいた〝緑の指〟も漏れなく回収されている。

 宇宙時代ともなると、ああいった去り方も現実で可能になるらしい。

「あ〜あ、行っちゃった〜」

「まだデートの約束をしてないぜ?」

 宇宙船が去った空を見上げて、頭の後ろで手を組んだディヴァースオレンジが残念そうな声を出し、ディヴァースゴールドは二挺のDブラスターを腰の左右のホルスターにくるりと回して収める。

 二人はそれぞれ目をつけた大幹部が去ったことを惜しんでいるが、セイカとしては「え? これで終わり? 怪人は? 巨大化は?」である。街中での戦闘は現実的ではないのでフラグが立たないよう、()えてディヴァースロボとかあるのかないのか聞いてこなかった。自然破壊も良くないが、ここは人里離れた宙を飛ぶ車もいない場所なので。

「どうかしたのか? リーダーどの」

 変身を解いたエフェドラが、セイカにだけ異変を感じて歩いてくる。他の三人も〝悪ノ華〟が去った方角を見上げているのに、鋭い。

「いいえ。皆さん怪我はありませんか?」

 セイカは大したことではないと首を横に振り、変身を解除する。

「はぁ、はー、つ、疲れました」

「ヴァリー体力なさすぎ! もうちょっと鍛えなよ」

「セイカみたいに朝練から始めたらどうだ?」

 変身を解いて膝に手をつき息の上がったヴァリーリアンに、同じく素顔の戦士に戻ったイクシアとロメロがダメ出しする。

 映画並みの人数の敵と爆発だったが、どうやら皆無事のようだ。

「そ、そうですか。昨日の今日でセイカさんが朝練を……」

「いえあのどれだけ自分が動けるのか確認したかったのでっ」

 だからそんな尊敬した眼差しを向けられても困る。

「と、とにかく帰りましょう。シャーリー司令官も待ってらっしゃるでしょうし」

「だな。基地に戻るか」

 いつの間にかタイミング良く夕陽が辺りを赤く照らしだした。番組ならここでBGMが流れること間違いない。

 ──こうして特虹戦隊ディヴァースⅤの初陣は無事に幕を閉じた。

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