宣戦布告!
結局、敵襲来の警報が鳴り響いたのは、お昼ご飯を食べて、イクシアも起きてきて、午後のお茶の時間になる前だった。この世界で昨日、セイカが喚ばれた頃だ。
六角テーブルの上段から地図が浮かび、敵の位置を示す。
「これが正式な初陣になるワ。ミンナ、用意はいい?」
シャーリー司令官はテーブル周りに立つセイカ達の顔を見回す。
「遅いくらいだよ」
「オレはいつでもオーケーさ」
「左に同じく」
「…………」
セイカは強い目をして頷いた。
同じ目をしたシャーリー司令官も頷き、号令を下す。
「特虹戦隊ディヴァースⅤ、出動!」
『了解!』
五人は揃って敬礼し、出動用昇降口へ向かった。
地図が示した場所に着くと、セイカは「ああここか」と納得した。近年、爆発を多用するロケ地といったらこの山中である。
しかし、秘密基地からすぐに来られた。科学技術でではない。都内にあるのだ。これは一体どういうことなのか。
疑問に思うが、今は目の前の任務に集中しなければ。
「気をつけてください。各所に点在している石は、偽装してある爆発物です。演出用ですが、近付きすぎると爆風でも火傷などの怪我をします。私達の分もあるようですので、所定の位置についてあげましょう」
仲間達──特に陸地での運動が苦手だというヴァリーリアンに危険を促し、それぞれの立ち位置を教える。
ざっと見ただけでも、随所に爆発物が仕掛けられている。危ないナパームは少なそうだが、セメント爆弾はそこかしこにあった。
もしかして遅くなったのは、これらの設置をしていたから? こだわりに呆れかけた、その時。
「──ッ!!」
切り立った山側で横一列に三ヶ所、空から何かが落ちてきたように、大きな爆発が起こった。色付きで、左から紫、青、緑だ。
広場の逆側にいたセイカ達は、十メートルほどの崖を背後に、横一列に対する。
粉塵の中にそれぞれ人影が見えてきた。
「秘密結社〝悪ノ華〟大幹部が一人、〝紫の百合〟」
澄んだ声でそう名乗り、紫の粉塵の中から姿を現したのは、神秘的な雰囲気を持つ美しい女性だった。
白銀の腰のあたりまであるストレートな髪、長い睫毛に縁取られた濃紫の瞳。喪服みたいな隙のないフリルロングワンピースが、白い肌を際立たせている。だが一番の特徴は、額に生える一本の角だろう。
「一角獣人──『モノセロス』の彼女ですね」
セイカの左に立つヴァリーリアンが眼鏡のブリッジを押し上げつつ呟いた。
彼が妖しく瞳を光らせているということは希少種族で、ゆめかわいいの代表的なモチーフであるユニコーンの獣人だからかイクシアまでもがキラキラした目で彼女を見ている。
「同じく大幹部が一人、〝青の薔薇〟」
真ん中の青の粉塵を突っ切って現れたのは、昨日新宿の某公園で何らかの方法でセイカを召喚したと思われる美青年だ。
ウィッグみたいに見事な青い髪、冬青の瞳、元の世界でアジア人に多い淡褐色の肌。イケメンなのに常にこちらを睨みつけていて、必死で強者を演出しているように感じる。
「彼が未開の地の宇宙人です」
ヴァリーリアンは「実に興味深い……」と呟いて、具に観察している。
確かに、青い髪の美青年は◯◯文明と名付けられる古代っぽい、どこかアジア風の独特で豪奢な民族衣装を身に纏っていて、考古学者が飛びつきそうな謎な匂いがする。
ヒューッと口笛を吹いたロメロは、別の意味で興味を持ったようだ。
「同じく大幹部が一人、〝緑の指〟」
右の緑の粉塵をバックに現れたのは、海松藍色の髪に檸檬色の瞳をした、狡猾な表情をした男だ。中肉中背で、これといった特徴がない顔をしているが、変な……いや、とても個性的な髪型をしている。
悪の組織の大幹部にしては他の二人と比べると地味な感じが拭えない。が。
「…………」
隣の隣、結構離れたところに立っている少佐から、素人でも分かる殺気がダダ漏れてくる。
「彼は少佐と同じ惑星の出身です」
ヴァリーリアンはこっそりと教えてくれた。
なるほど、少佐と彼は何か因縁があるんですね。ただの地味で変な髪型の人じゃないんですね?
立ち位置がほぼ真正面で、隻眼でも強烈な少佐の視線と殺気を受けているのに、怯むでもなく耐えられるとは流石地味メンで大幹部を務めている男……と感心していたら、
「〝青の薔薇〟こと若のお目付け役、〝白の廃園〟です」
と、爆発もなくそっと美青年の斜め後ろに現れたのは、昨日『お姫様抱っこ』で受け止めてくれた、あの人……!!
セイカの胸がドクンと大きく跳ねた。
暗い赤みの茶色の髪をオールバックにし、落ち着いたオリーブイエローの瞳、淡褐色の肌。美青年の物よりは軽装にした民族衣装を着た、映画やドラマにそのまま出ても違和感のない美丈夫だ。
やっぱり彼も敵なのか。
「時は来た」
青の美青年が厳かに口を開く。いつの間にか四人の後ろには、多くのザッソー兵達が蠢いている。
「これより秘密結社〝悪ノ華〟は地球侵略を開始する!」
こちらに手を向け宣戦布告した瞬間、一味の背後で横一列に黒いセメント爆弾が爆発した。




