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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第1輪「きみがレッドだ!」
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ダイナーにて

 夕飯のラッシュをとうに過ぎたダイナーで、超個性的な四人が一つのテーブルを囲んでいる。

「で? どう思う?」

 単刀直入に問うのはこの場で一番上の位にいる、シャーリー司令官だ。澄まし顔で小指を立てて湯呑みを持ち、もう片方の手で底を支えて食後の日本茶を飲む。

「バカ令息(ボン)が召喚したことを抜きにしても、レッドに相応しいかと」

 隣に座るヴァリーリアンは眼鏡のブリッジを中指で押し上げて断言した。瞳は妖しく光っていない。

「オレにも少佐にも(なび)く気配が微塵もないな。ほぼ年長者の中で、忌憚(きたん)なく自分の意見も言える。純血の日本人だとかいう前に、貴重だぞ」

 ヴァリーリアンの向かい、頭の後ろで手を組んで背もたれに上体を預けきり、長い脚をテーブル(わき)からはみ出して交差させているロメロも、肯定した見解だ。

 どれだけ自分に自信があるんだというツッコミは入らない。顔面偏差値の高いこの中にいるとあまり目立たないが、通称を名字にしたモテ(りょく)は伊達じゃない。セイカに警戒心を(いだ)かせていないのがその証拠だ。

「なにより、いつも威嚇する猫のように牙と爪を丸出しの、滅多に他人に心を開かないイクシアが、あの(なつ)き具合ですからね。言葉を交わす前から、初対面で身を案じていましたし」

 本能で分かるのでしょうか、と言うヴァリーリアンの瞳は今度は妖しい光を湛えている。

 その話題のイクシアは今、ここにはいない。セイカが退室した途端、我慢の限界を越えたのか「セイカの私服はボクが作る! リーダーに変なカッコはさせらんないっ!」と叫んで、司令室のフリースペースでさっさと作業を始めてしまった。明日に間に合わせたいらしく、鬼気迫るものがある。

 ああなったイクシアは、誰にも止められない。食事も携帯ゼリーで済ますのだ。

 仲間達と上官にできるのは、脱水症状にならないようスポーツドリンクや、簡単につまめる固形の栄養食品を差し入れることくらいである。

「エフィ、アナタは?」

 シャーリー司令官はテーブルの向こう、正面に座る人物に話を振る。

 コートを羽織った姿に戻ったエフェドラは、こちらも長い脚を組んで、ブラックコーヒーが入った何の装飾もないマグカップを手にしている。

 エフェドラとロメロ、長身の二人が同じソファーに座っていると──座高が低いのが憎らしいが──、とても狭そうだ。

「あれは、〝魂〟を見ている」

 そう言って、エフェドラはマグカップの中身を口にした。

 彼女は時々、詩人か哲学者のような、独特な言い回しをする。特別な銀の瞳には、世人には分からない何かが見えているのだろうか。

「人の本質を察しているってことかしら?」

「下手な誤魔化しは効かない。信頼を無くすだけだ」

 質問の答えとしては微妙な発言をして、エフェドラは腕を組み背もたれに凭れた。

 しかし、三人は納得の表情だ。

「この時代より遥かに遅れた倫理観の世界から来たのに、アタシにもシアにもエフィにも、普通に接していたわネ」

 セイカの持っていた教科書から、ある程度の文化的水準は推測されていた。それはこの宇宙時代から千年以上、遅れたものだ。特に人権について、LGBTQ等を社会的少数者としている時点で遅れに遅れている。差別をしていたら、多様な宇宙人とは暮らしていけない。

 まあそうは言っても、現在(いま)でも差別主義者は一定数いるのだが。

「どころか、少佐の特異性を受け入れた上で、(かば)ってもいましたよ」

「少佐を庇う、か。ありえんな。『この少佐』を『庇う』だぞ? 宇宙ひろしといえど、そんな勇者はいないだろう」

 ロメロは親指だけ立てて、隣のエフェドラを指した。軍人でなくとも戦(闘)う者──ロメロの前職は宇宙を股に掛ける賞金稼ぎだった──なら、彼女の存在は知っている。

「〝勇者〟! 言い得て妙だわネ!」

 シャーリー司令官は両手を合わせて喜色を浮かべた。

「〝勇者〟に〝魔王〟ですか。もはや無敵のチームですね」

 二人とも女性だなぁとは誰しも思ったが、口に出す者はいなかった。

「レッドになるべくして()ばれたあのコは、真にレッドに相応しかった。それでいいかしら?」

『異論なし』

 シャーリー司令官の問いに戦士三人は迷いなく揃って答えた。

「じゃ、明日が早速初陣になるかもしれないし、お開きにしましょ」

「ええ。おやすみなさい」

「オレはシアに差し入れしてくるか」

 四人はめいめい席を立つ。

「そのあとちゃんと寝るのヨ。エフィもネ」

『…………』

「なんでそこで黙るのかしら」

「分かった分かった、夜更かししないって」

 携帯食の自動販売機を目指していたロメロは、両手を肩の高さで挙げて降参する。エフェドラは背を向けたまま無言だ。

「ま、いいワ。大人だもの、自己責任よネ」

 手をひらひら振って、シャーリー司令官はダイナーを後にした。

 これでセイカのちょっとした人となりや、司令官はじめディヴァース(ファイヴ)の全員が彼女をレッドと──仲間と認めたという情報が、秘密基地内に行き渡るだろう。ダイナーでこの四人が同席している光景は珍しいし、食事を取っている人数がまばらなほうが声も届く。シャーリーは司令官として、自然と耳目を集める時間帯を狙って、わざと話していたのだ。

 この世界にセイカが召喚された責任は宇宙政府軍(じぶんたち)にもある。それが解らず、要らない嫉妬をする者が出てはならない。彼女にこれ以上の迷惑はかけられない。

 人気のある四人に囲まれ、チヤホヤされている紅一点に見ている隊員がいたならば、すぐに首を()げ替える。

 セイカが秘密基地(ここ)で過ごす中で人柄が知れ渡るまで、その後でも、勘違いする輩がいたら容赦をするつもりはないシャーリー司令官だった。

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