激痛聖女
キングオーガを倒した翌朝、ジルコニウスさんが宿にやってきた。
「本当に娘がお世話になりました!おかげでオレも鍛冶仕事を再開することにしました」
「いえいえ。そうだ、もし鍛冶仕事を再開するのであれば、一つ依頼したいことがあるのですがよいでしょうか」
そう俺が言うと、ヨリアが説明し始めた。
「実は、魔王との戦いで聖剣が使用不可能になってしまい、新しい剣を作ってくださる方を探していたんです」
「おお、そうでしたか。わかりました。あなたたちは娘にとっての恩人なのでタダで作りましょう!」
「「ありがとうございます!」」
俺とヨリアはきちんとジルコニウスさんにお礼をした。
「さて、さっそく剣を作りたいところだが、実はオレには材料にこだわりがあってな」
「そうなの。父さんは、王都から東に徒歩半日のところにある『クガネ第二廃坑』にのみ出現する『ゴルドゴーレム』の破片のみを使って剣を作るの」
近くにいたルミネが補足説明をした。
モンスターは一般的に、死ぬと何も残さずに消滅する。
しかし、たまに体の一部分やまったく関係のなさそうなアイテムを残して消えるモンスターがいる。
おそらくゴルドゴーレムもその類であろう。
「すまないが、3人でそれをとってきてほしい」
「わかりました。とってきます」
俺はジルコニウスさんと約束を交わした。
それから俺達は徒歩で王都へと向かった。
そして、クガネ第二廃坑への地図をもらうべくギルドの本部へ向かった。
「私、またギルド本部の空気を吸える日がくるとはおもってなかったから、今すごく感慨深い」
そう言ってルミネが思いっきり空気を吸っていると、なにやら遠くからやせ細った少女が俺達に向かって駆けてきた。
そして、俺の瞳を見てこう言った。
「お願いします!私を皆さんの仲間にしてください!」
彼女は綺麗な水色の瞳をしており、綺麗な金髪を持っていた。
そして、背丈は俺達3人より低かった。
「もしかして、生活に困ってる感じかしら」
ルミネが少女にたずねる。
「はい!私、魔力が過剰すぎるせいで回復魔法を使うと効果抜群だけど、相手に激痛が走ってしまうことから、どのパーティーにも入れてもらえなかったんです!」
「なるほど、それで俺を頼ったというわけか」
「はい!カノスさんは確か痛みを極端に軽減させることができると聞いたので!」
なるほど。確かに彼女の性質は俺の能力と相性がいい。
「俺は賛成なんだが、みんなは彼女をパーティーに入れることに対してどう思う?」
「いいね!気が合いそうだし回復役欲しいところだったし!」
「いいと思う。」
こうして、俺達は満場一致で4人目のパーティーメンバーを加え入れたのであった。
「そうそう、私の名前はテデザです!」
仲間にした後、そう言って彼女は自己紹介してくれた。
それから俺達は、夕食を食べるべくギルド本部近くの宿屋に備え付けられてあった食堂へと行った。
テデザの迎え祝いということで、少し奮発して高い肉料理を頼んだ。
ちなみに、俺とヨリアは魔王討伐の一件で一生年金をもらえることになったので財産面での心配はないのだ。
みんなが肉料理を楽しむ中、ルミネががむしゃらに食べているテデザに質問した。
「ねえ、テデザって解呪魔法使える?」
「はい!使えます!」
「実は私、こう見えてすごく強い呪いにかかっているの。だから、失敗するかもしれないけど解呪の魔法かけてほしいな」
どうやら、解呪に挑戦するようである。
「そうそう、私、今痛覚軽減魔法で痛覚無いから存分にやっちゃっていいよ」
「わかりました。行きますよ!『解呪魔法』発動!」
そう言ってテデザがルミネに手を向けると、ルミネの身体が一瞬だけ青白く光った。
「……カノス、痛覚軽減魔法を解除してみて。なんだか身体に長年付きまとっていたものが取れた気がするの」
俺は言われたとおり、痛覚軽減魔法を解除した。
「じゃあ、やってみるわね。『光魔法』発動!」
そうルミネが言った途端、彼女の手のひらにあらゆる色の小さな火花が一瞬だけ生じた。
彼女の表情は全然苦痛層ではなかった。
「……やった。ついに本当の意味で魔王の呪いを克服できた。テデザは聖女だ」
ついにルミネが呪いを克服した。
俺達はみんなでそのことを喜び、肉料理を腹いっぱい食べた。
その後、解呪の興奮が収まらなった俺達は、酒場に行った。
酒が飲める年齢が17歳からなのに対し、俺とヨリアは18、ルミネは19、テデザは17だったため、みんな飲むことができた。
俺達は程よい強さのお酒を頼んだ。
やがて、4人分の酒入りコップが運ばれてくると、俺達は乾杯の準備をした。
「それでは、テデザの加入及び、ルミネの解呪を祝ってシードルズに」
「「「「カンパーイ!!!」」」」
今夜は楽しくなりそうだ。
本日は予定を変更し、4話投稿します!
次は16:00過ぎに投稿します!
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