ソーク、魔王の玩具にされる
カノスたちが枕投げの準備をしていたころ、ソークは人間に化けた魔王と共にカノスたちを尾行していた。
「なるほど……ワシを倒した後に権力と女を欲しいままにしていると……なかなかにカノスという男は悪いなあ……さっさとぶち殺したくなってきたぞ!」
「そう言ってくださると幸いです。魔王様」
ソークはパーティーリーダー時代とは打って変わり、魔王になびくだけの三下に成り下がった。
品のない作り笑顔で彼は魔王の相槌に応じた。
「さて、どうやらあいつらはいったんエストウ村に向かうみたいだ。ワシたちはヤツらが村から王都へ帰るところを狙うぞ」
「分かりました。魔王様」
ソークが気持ち悪い作り笑顔を浮かべてそう言った。
「……さて、カノスのこともだいぶ聞いたし、そろそろお前に力を与えよう」
そう言うと魔王は自分自身とソークを再び亜空間へと転移させた。
「ここは…またあの空間……」
「下僕よ、喜べ!お前は今から不死身になるのだ!」
困惑するソークをよそに魔王は彼に謎の赤い液体を飲ませた。
「ウグッ……これは……」
「これはな、不死鳥の生き血だ。人間が飲むと不死身になれるらしい」
「不死身……この俺が……いいじゃないか!最高じゃないか!ありがとう魔王様!お前はもう用済みだ!!!」
そう言ってソークが魔王に剣で切りかかろうとした。
しかし、魔王はとっさに本来の姿になり攻撃を受けた。
魔王の骨の方がソークの剣より圧倒的に硬かったため、彼の剣は一瞬にして粉々になった。
「愚か者め!不死鳥の生き血を飲んでも不死身になるだけで、お前の強さは全く変わってないのだよ!」
そう言って魔王は両手から衝撃波を出してソークを木っ端みじんにした。
「ギャアアアアアアアアア痛いよおおおおおお!!!!!」
鼓膜が張り裂けそうなほどの断末魔をあげてソークは消えていった。
しかし、直後に不死鳥の生き血の効果が発動し、かれは瞬く間に生き返った。
「うう……ここは……天国なのか……」
ソークが子犬のような情けない声でそう言った。
「バーカ!お前はまだ生き地獄の真っ最中だ!!」
魔王が再びそう言いながら衝撃波を放つ。
「うぎゃあああああああ!!!!」
ソークは再び粉々になるが、一瞬のうちに復活する。
魔王はそれを見てまた衝撃波を放つ。
そんなことが何十回も繰り返された。
「いや~お前は本当に最高の玩具だ!なんか言ったらどうだ」
「…あう…あうあう…」
ソークがうつろな目で何かをつぶやいた。
魔王の遊びによって玩具は壊れてしまった。
しかし、魔王は壊れたオモチャを直す術を持っていた。
「『心理修復魔法』発動せよ!」
心理修復魔法。
それは倫理に反するとして大昔に人間たちが封印した魔法である。
魔族はそれを密かに受け継いでおり、部下いじめの証拠隠滅に使っていたのだ。
「あー。ひどい目にあったぜ……もうお前に逆らうのはこりごりだ……」
心が治ったソークが生気のある目で魔王を見る。
「まったく……ワシに心理修復魔法を使わせやがって……これからは絶対に逆らうなよ」
「わかった。もう逆らいません」
「よろしい」
その後、彼らは亜空間内でカノスたちを殺すために話し合いを続けたのであった。
明日、決戦の時…
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