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土下座謝罪への決意

 カノスたちが剣ができるまで王都の料理を堪能していた頃、ソークたちはギルドの職員に現実を突きつけられていた。


「またクエスト放棄ですか……皆さんこのままですと、次のクエスト放棄で一気にDランクくらいにまで冒険者ランク下げられますよ……」


 ギルドの職員の一言を聞いてソークら3人はぞっとした。


 彼らはカノスが抜けてからというもの、クエストをこなせなくなってしまい、引き受けては放棄といったことを繰り返していた。


 もちろん、そんなことをしている冒険者をギルドが黙っているわけがなかった。


 更なる窮地に追い詰められた3人は逆転の一手を打つ必要があった。


 なんとしてでもカノスより下のDランク降格は避けなければいけない。


 職員からの話を聞き終わった3人はギルドの建物のすみっこで作戦会議を始めた。


「どうする…何かいい案はないか?」


「一つある」


 ソークの呼びかけにローゲが答えた。


「新しくパーティーメンバーを雇おう」


「なるほど。それはいい考えかもしれない」


 こうして、早々に結論が出た3人はパーティーメンバー募集の張り紙を出した。


 3人ともAランクのパーティーなら、簡単に人が集まるだろうとソークたちは予測した。




 数日後、彼らはギルド職員から誰も応募しなかったとの報告を受けた。


「なぜだ!なぜ来ない!」


 ソークがギルド職員に向けて怒鳴る。


「なぜって……あなたたちが本来ならE級冒険者でもこなせるような依頼を、軒並み放棄していることがすでに知れ渡っているからでしょうね……」


 そう、彼らの悪評はすでに収拾がつかないほどに広まっていた。


「……そんな!そんな!ふざけるな!」


 ソークがギルド職員に手をあげようとしたが、ローゲとウニョが全力で止めた。


 なんとか冷静さを取り戻したソークは、逃げるようにギルド職員から離れていった。


「危なかった……このまま職員に手をあげていたら危うくギルドそのものから追放されるところだった……」


「ソークは昔から感情的になりやすい癖があるから気をつけろ。まあ、俺もだけど」


 そう言ってローゲは眼鏡を触って過去を回想した。





 ソーク、ローゲ、ウニョはレゴヨ村の幼馴染同士であった。


 彼らはガキ大将のソークを中心に、小さい頃からよく村の外に無断で出ていた。

 

 彼らはそこでモンスターを倒し、戦闘技術を身に着けることで、大人の村人を力で屈服させて村の実質的支配者になった。


 ソーク12歳、ローゲ13歳、ウニョ11歳の時のことであった。


 それから5年後、村の支配に満足できなくなったソークたちは王都へ行き、冒険者になることにした。


 彼らはレゴヨーズという名前のパーティーを結成し、どんどんクエストを達成していった。


 そんな中、カノスという名の少年が加入を希望した。


 彼らは丸一日話し合った後、彼を新たな仲間に加え入れた。


 それ以来、彼らはますます活躍していくようになり、結果としてAランク冒険者の地位を手に入れたのであった。



 


「なあ、ソーク。一つ提案がある」


 思い出を回想し終えたローゲがソークにこう言った。


「カノスのクソ野郎を……いや、カノスをもう一度パーティーに加え入れよう」


「お前……!?何バカなことを?!」


「お前だって本当はもう思い出してるんだろ。ソークのおかげで俺達がここまで来れたっていうことを」


「……」


 しばらくソークは黙っていた。


「……実は私も思い出したんだ。カノスの痛覚操作魔法がいかに私たちの役に立っていたのか」


 ウニョが沈黙を破った。


 すると、ソークが大きな図体に合わず、静かに泣き始めた。


「……そうだった。俺達は本当は無力だったんだ。ただの悪ガキだったんだ。痛みに敏感な悪人だったんだ。」


「ソーク……」


「俺達はソークに謝らないといけない。自らのぶざまさを晒さないといけない。それが、俺達がカノスを追放した代償だ」


「ソークさん……」


 やがて、ソークは涙を拭いてローゲとウニョをまっすぐ見つめた。


「ローゲ、ウニョ、俺はこの絶望的状況を何とかする唯一の手段を思い付いた。もう一度カノスを仲間にしよう。全力で土下座して謝ろう!」


「ソーク……」


「ソークさん……」


 ソークは生まれてこのかた誰にも謝ったことがない悪ガキだった。


 そんな彼が謝罪を決意した。

 

 それはいかに彼らレゴヨーズが追い詰められているかがわかる一言であった。


「わかった。俺も一緒に謝る」


「私も」


 ローゲとウニョが協力の意を表す。


「さて、カノスを探すとするか」


 そうソークが言ったその時であった。

 

 ガチャン!


 ギルドの扉が開いた。


 そこには剣を受け取り、これから依頼を受けようとしたカノス一行がいた。


 絶好の謝罪のチャンスであった。


 しかし、ソークはカノスの周りにる少女たちを見て、謝罪の気持ちよりも瞬間的な憎悪の気持ちが上回ってしまった。


 そして、とっさに剣を抜き、カノスに切りかかった。


「カノスめええええええ!!!お前だけハーレム作って幸せになりやがってえええええ!!!」


 しかし、ヨリアがとっさに受け取ったばかりの剣を使ってそれを防いだ。


 理性を取り戻したソークは剣を急いでしまい、土下座をした。


 ギルド内は騒然とした。


 

本日最後の投稿は18:00すぎです!


ぜひご期待ください!


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  彼らはガキ大将のカノスを中心に、小さい頃からよく村の外に無断で出ていた。 ↑ ここでガキ大将のカノスという流れはオカシク無いですか?ガキ大将はソークの間違い???
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