話題のモノリスを落としたのはジョージさん、あなたですか?
「モノリスの落とし主報告に5万ドルの検証! 連絡はこちらまでXXX-XXX」
メディアは落とし主を探し始めた。クリスマスに向けて準備を進める12月中旬、全Aがジョージを探しに来たのだ。
ジョージは請け負った仕事は12月の初旬に全て片付け、それ以降は受けることができなかった。
輸送依頼は電話やネットのページで行い、受け渡しの確認はマスク着用でやっていたため、顔バレすることがなかったのだ。いつ見つかって逮捕されるのか気が気でなかったが、12月を過ぎてからはもう見つからないかもしれないという安堵の心も芽生え始めた。
--ピロリンピロリン!
余り鳴ることがないフェイスモックに通知が来た。
「この写真にある、鉄鋼ってあのニュースのモノリスですか?」
それは3か月前に自撮りした写真に、輸送する前の鉄鋼がわずかに映りだされていたのだ。
--はあぁっぁぁぁl!?!?!!
それは死の宣告だった。フェイスモックは月に数回使う程度で、身内以外は見ることがほぼないのでモノリスニュース以降で全く気にしていなかった。コメントをした人が誰かは分からないが、数年前のお客か友人であろう。問題はそこではない。モノリスの落とし主がジョージだとバレると、公有地への無許可飛行と落下物の報告無視、その他諸々で捕まってしまうのだ。
指先が震え、汗が滝のように流れ出す。指先がヌメヌメしてうまく文字が打てない。
脈と呼吸が鮮明に聞こえるようになり、体温が上がって胃液が出そうな気持ち悪さになってきた。
--どうする!? どうする? 無視するか、誤魔化すか、それとも黙ってもらうようにお願いするのか……
ジョージは臆病者であった。人生を分けるであろう窮地に追い込まれたときに、ポキンと心が折れてしまった。スマホを投げ飛ばし、日が沈みかけた夕方にはそのままベッドに飛び込み毛布を首元でがっしり掴みながらガクガクと震えていた。そのあとの記憶は残っていなかった。
翌日の10時半過ぎ、番号の知らない電話がかかって目を覚ました。今日は休業日なので電話の音に驚いて目が覚めた。悪い予感しかしない……だが出ないわけにもいかない。どの友人から問い詰められても対応できるように、ジョージは数秒考えた末に通話状態にした。
「テレビ局BNNのピーター・L・ウィリアムです。ポール・A・ジョージさんでしょうか?」
「えぇぇ? は、はい」
頭が真っ白になったが、問いに答えてしまう。
「話題のモノリスを落としたのはジョージさん、あなたですか?」