捕まりたくねぇよ……親父ごめん
「お前が継いだ仕事ができなくなることは考えてねぇ。 そうなったときに考えれば良い」
「だがな、もし現実そうなったときは。前に一緒に働いていた従業員たちに相談して代わりを探すか、ダメなら事業を売っぱらう」
「そ、そうだな」
聞いて少し安堵を浮かべるジョージ。何があっても親父のことは絶対と押し付けられてきたジョージは、ミュージシャンの道を絶って仕事を継いだ。今回の件で仕事ができなくなったら、自身の身がどうなるかわからず怖くなっていたのだ。
30年前に親父が始めた運送事業は、大型輸送機では届けられない地域に届ける事で差別化できていた。順調に事業拡大し、全盛期の頃は7人の従業員を抱えていた。年商80,000ドルの社長だと自慢していた時の親父は輝いていた。それが10年ほど前に新たに路線が追加され、大型輸送機で大量に安く送ることができる事になってからは徐々に仕事は減っていった。
母親は俺が物心つく前に離婚していた。親父が言うには、事業の話で意見が合わなかったのだと。姉がいたらしいが、母親が引き取っていて俺は何の記憶も残っていなかった。親父が引退する時には、もう従業員を雇うほど仕事がなく、一人で輸送するようになっていた。2つの大きな倉庫のうち、左側が全くの手つかずで放置されているのはそういうことなのだ。
--俺はその背中を見て、手伝いをしながらこの仕事を継ぐことになるだろうと思っていた。親父の事は尊敬しているが、もう商売としてやっている時代ではないんだよ
「急にそんな質問をして、何か心当たりでもあるのかジョージ?」
「いや、仮の話さ。2か月先まで予約が入っているし、順風満帆だよ。問題ない」
内心、問題が大ありだと心臓をバクバクさせながら父親に話している。
モノリスが観光地になったら周辺の地域が活発化して地価が上がるから、今のうちに買っておくか! とガハハと笑う父親にジョージは作り笑いで対応した。
「もう22時か。そろそろ帰るよ」
「ああ、気を付けてな」
車に乗り込んだ後、ジョージはリサにマッツァで報告した。あのモノリスは間違いなく落としたものだと。すぐに返信が来た
「だったらすぐにでも落としました! って言ったら?」
「こっちにも色々事情はあるんだよ。今回の話は、誰にも話さないでくれないか?」
「わかった。」
アパートに戻ったジョージははどっと疲れてベッドに顔面から入り込んだ。少し落ち着いた後に、シャワーを浴びてそのまま寝ようとした。将来の不安と緊張で寝ることができない
あのモノリスもどきが鋼鉄プレートだとバレて、ジョージの不法行為が明るみに出たら親父もリサも悲しませてしまう。後悔の念で涙が出てきた
「捕まりたくねぇよ…… 親父ごめん」