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俺が操縦できなくなったら親父はここはどうする?

「ええぇ!? あのモノリス、ジョージが作ったの?」

 驚くリサに、冷静に語りだすジョージ。


「あれは2か月前に、鉄鋼プレートを空輸した時に誤って落としてしまった物……かもしれないんだ」

「まだ確定ではないが、ニュースの動画に出ているサイズと近い物をタスマ州のギジ自然公園付近で落としたのは間違いないんだ」

「もしこれが事実だったら、俺は犯罪者として捕まるかもしれない」


「なんで捕まるの? 別に悪いことしていないじゃない」


「あの場所は許可なく通過するのはダメなんだ。後、落としたことを管轄している所に報告しないといけないのに何もしていなくて」

「この後、親父の倉庫に行って確認しようと思っている。正直、見当違いであってほしいよ」


「なんとかなるよ! ジョージはなんでも乗り切れる勇気があるからね」


「おうよ! 結果はマッツァ(SNS)で報告する」

 その後、ジョージは車でリサを駅まで送り別れた。ジョージは貯めていた不安を吐き出して、少し気が晴れた。


 2時間半かけて車を走らせてルゴビ市の山奥にある実家に到着した。夜の7時、11月の夜は冷え込んで真っ暗になっていた。

「親父、いるかい?」


 玄関のドアにあるベルを鳴らしながら、横の窓に向かって首を傾けて問いかけた。愛犬と庭で遊んでいる隠居生活を行っている親父は、今日は居なかった。


 仕方ない、とジョージは輸送機が格納された倉庫に向かった。丸いアーチを描いた倉庫が2つ並んでいて、間に連絡路とドアがついている。暗証番号で開ける南京錠がかかっているが、回すことなく開けることができる。こんな奥地に誰も盗みには来ないのだ。右側の倉庫のドアを開けて入ると、真っ暗で奥が見えない広い空間が広がっている。息が白く、外の暗さも相まって不気味な雰囲気となっている。ジョージは横に手を伸ばし、白熱灯がつくスイッチを手探りで探す。見当たらないので、スマホの明かりをつけてようやくスイッチをONにできた。


 ふわっと広い空間に明かりが照らされて、ジョージは目を細めながら右手で目を上から覆った。少し目が慣れた後、あたりを見渡し、運搬に使っていた緩衝材のあるエリアまで歩いて行った。ジョージはスマホをいじりながら、ニュースとなっているモノリスの動画を再生している。人が縦に並んで調べている場面で一時停止し、モノリスのサイズを目測で確認してみた。


「横幅は……1メートル弱。高さは、見えるところで大体2.5メールって所か」


 緩衝材は輸送後にきれいに残っていればまた使いまわすことができる。2か月前に使った緩衝材がまだ残っているかもしれない、とジョージは埃をかぶった奥まで探しに行く。ようやく見つけた大きな緩衝材は、折れ曲がったり欠損したところはあるが、凹凸で全体の寸法を見ることができた。この大きさ、間違いなくあの時に使った緩衝材だ。


「えっと…… 横93センチ、厚さ20センチ、奥行きが4.2メール。動画にある寸法とほぼ一致ている」

 大きくサイズが違っていたら、と希望をもって測っていたジョージは寸法を確認するごとに落胆し、最後には地べたに座り込んだ。見間違いの偶然が確証と絶望に変わり、ジョージは視界が狭くなって気持ち悪くなった。



--素直に今から落下して無くしたと管轄に申告するか? いやもう3か月経っているし、

今更事故で落としたの鋼鉄でした! なんて言ったら運送業としての信頼は失墜して仕事にならなくなってしまう、どうすれば……



 夜7時半に、夕食も取らずに急いできたジョージは座ったままどうすればよいのか必死に考え続けた。音と明かりに気づいて振り向いた時にはすでに夜9時になっていた。入ってきたドアから出たジョージは、家の明かりと車を見て父親が帰宅したことがわかった。


「おーい! 親父、ちょっと話があるのだけど、今いいかな?」

 今回はベルを鳴らさずにそのまま窓に向かって話しかけた。窓は半開きなので、手前のリビングから奥のキッチンまで丸見えになっている。


「おお、ジョージか。どうしたこんな夜に。 明日が早いから、あと1時間位なら話を聞ける」

「入るよ」


ジョージは玄関のドアを開けて、父親のいる部屋に向かって歩き出した。


「最近、彼女とよくやっているか?」

「余計なお世話だよ!! 何で知っているの」

「たまに彼女連れて、輸送機自慢しているだろ。キンキン声がここまで入ってくるからすぐわかる」

「よく見ているね……」


 いつも出してくれるレモネードを飲みながら近況報告や世話話をしていた。ジョージは事業を継ぐ時に両親と揉めたため、お互いにギズギスした所もあった。それでも久々に顔を合わせて話せることがうれしかった。


「そういえば、ギジ自然公園にモノリスが発掘されたってニュースを見たか?ここから250kmと近いから、直接行って見ることができるかもしれない。どうだ一緒に行くか?」

「お、俺はあまり興味ないから、親父だけで見に行ってくれ」


 ジョージは父親の急な話にドキリとしながらも、本題の話に切り替えた。


「もし、の話なんだけどさ。例えば結婚して州を離れるようになったり、事故で手が動かなくなったとする」

「俺が操縦できなくなったら親父はここはどうする?」

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