節制―小さな鉛筆
小学生の頃は、みんなが鉛筆を使っていた。
たまに、いいお家の子はシャープペンシルを持っていたりしたけれど。
でも、先生たちは鉛筆を使いなさいと言ったし、授業の数だけきれいに研いだ鉛筆を筆箱に入れているのが当たり前だった。
女の子たちの間では、かわいい鉛筆そのものもだけれど、特に鉛筆に被せるキャップでおしゃれをするのが流行っていた。
私は、両親から買い与えられたかわいげのない鉛筆を使っていた。
立てて見ると三角で、正しい持ち方のための鉛筆というもの。
キャップも、取り立ててかわいいわけではない、誰でも持っている平凡なものだった。
でも私は、そんなことはどうでもよかった。鉛筆について、私は別のことに関心があった。
鉛筆を使っていくと、だんだん短くなっていく。みんなは、持ち手が七、八センチメートルを切るくらいになるとそれを捨てて、新しい鉛筆を研ぐ。
もっと早いうちに捨ててしまう人もいた。
私は、鉛筆の限界を試すのが好きだった。小さい鉛筆削りで、限界まで研いで使う。削っていない部分が一センチメートル前後になるくらいまで。
ものを大切にしなさいと、両親が鉛筆補助器具をくれていたのも大きかった。
私はそれで持ち手を補強して、短い鉛筆を最後まで使った。
限界まで使い切った鉛筆は、また小さい鉛筆削りで丁寧に研いで、特別の箱へしまう。今までありがとう、お疲れさま、と心の中で言いながら。
小学校を卒業する頃には、箱は小さなかわいい歴戦の戦士たちでいっぱいだった。
中学生になると、鉛筆を使う機会がめっきり減った。
シャープペンシルでないと、中学校の授業の書く量にはついていけなかったのだ。
マークシート試験のときか、絵を描くとき、鉛筆を使いたくなったときくらいにしか、鉛筆を削ることはなくなった。
でも、あの鉛筆たちの箱は、そのまま、まだ大切にとってある。
これから先も、仲間が増えるかもしれないから。
【Temperance : Little Pencils】