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時間屋  作者: 深澤雅海
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振り子時計 4

 僕は子供の頃から勘の良い人間だった。

 子供の頃から直感で何が「正解」なのか分かるんだ。

 下手に勉強して思え間違えりより勘を信じた方が良いくらいだ。だからあまり勉強したことがない。


 進学も、就職も全て勘で決めた。


 受験は簡単だ。問題を見るとなんとなく答えが分かる。

 組織も資料を見て人に会えばどんな組織なのか把握できた。

 一を知り十を知る。

 何の苦労もせず今まで生きてきた。


 恋愛も、告白されて付き合って、その後別れたとしても、何かしら勉強になったりいい経験だったりしたから、それを得るためのものなんだと納得していた。

 妻との結婚も、それが「正解」だと分かったからだ。

 彼女から告白され付き合って、結婚したいと言われて頷いた。


 でも、息子が生まれた時に分かってしまったんだ。

 「僕の子じゃない」


 そしてそれを口に出すのが「正解」ではないのも分かっていた。


 妻がどう思っていたかは考えたことがない。ただ、僕が気付いていないと思っているのは分かった。

 ありがたいことに、妻と息子とは仲良くやってこれた。

 

 情けないことに僕は、子供が生まれるまで彼女の浮気に気付かなかった。

 結婚することが「正解」だと分かっていたから、考えたこともなかったんだ。

 浮気に気付いてしまってから、全てが分かるようになってしまった。

 知らなくて良かったのに。


 僕と結婚する前から浮気していたこと。

 相手は家庭に縛られず自由にしていたいから結婚しないこと。

 それでも彼女を愛していること。

 二人とも、僕に申し訳なく思っていること。


 二人のために僕は犠牲になっている。

 自業自得でもある。

 

 でも、

 この結婚を「正解」だと感じたのはなぜなんだろう。

 今までずっと外れたことはなかった。

 苦しいのは、辛いのは今だけで、未来では幸せなんじゃないのか?

 そう思い、堪えて生きてきた。

 でもだんだん疲れてきた。

 だんだん、息子の顔を見ても寂しく思うようになった。

 

 そんな時、この店の話を聞いたんだ。

 過去でも未来でも、好きなところに連れて行ってもらえる。

 過去を変えようとは思わない。僕が「正解」だと判断して進んできた人生だ。

 今のこの苦しくて辛くて寂しくて切なくて苛立ちや焦りを感じるこの状態は。


 いつ、終わるんだ? それが知りたい。


 未来で幸せになれると分かれば、僕は耐えられる。頑張れる。


 それほど遠くない未来であってほしい。

 僕は僕の家で、僕の家族と、楽しく笑っているだろうか。

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