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時間屋  作者: 深澤雅海
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プロローグ

 よろしくお願いいたします。

 5丁目の端に昔からある時計店。

 この時計店には不思議な噂がある。


「タイムリープできる時計があるらしい」


 僕がこの時計店に訪れるのは今日で三回目だ。


 一回目。土曜日だ。店に来てみたものの、そんな夢物語みたいなことがあるのか? それを店員に言って笑われないか? と迷っている間に、男性客が店主(店主とは思えないほど若い男)に訊いてくれた。

 確かにそんな時計があるらしい。(店主は「時間移動」と言っていたが)

 ただ、その時計は一日に一度しか使えないらしく、その日はすでに使われていたそうだ。

 肩を落として店を出る男性を見送り、僕は腕時計のベルトを購入して店を出た。(何も買わずに店を出る勇気がなかった)


 翌日二回目。不思議な時計があることは分かったので今日は自分で店主に話しかけようと店の前まで来たところ、昨日見た男性客が店から出てきた。少し笑顔で、満足気だった。

 これは……と思い、店主に時計の事を聞いてみると、今日はもう使われたということだった。

 昨日の男性の様に肩を落として僕は店を後にした。


 そして、今日が三回目。

 僕の仕事は土日が休みのため、あれから一週間後の土曜日だ

 家を出る直前に電話がかかってきてしまい、やや出遅れてしまったが、まだ店が開店してから30分しかたっていない。土曜日の朝9時30分。こんな朝早くから時計屋に来る客はそうそういないだろう。


 今日こそ……


 僕は深呼吸してから店のドアノブに手をかける。

 前回来た時は驚いたが、この店の扉は音もなく開くが、とても重い。はっきり言って非常扉より重い。

 気合を入れて扉を押す。


 ……


 開かなかった。


「なんで!?」


 押しても引いても扉は開かず、しばらくガタガタと扉を揺すっていたが、犬の散歩をする青年にスマホを片手に凝視されているのに気付いて、そそくさと店を後にした。


 定休日ではないはずだ。先週の土曜は店に入れたのだから。

 臨時休業だろうか。なんとも運がない。


 諦めずにまた来よう。

 とりあえず今日は帰るしかない。


 とりあえず今日は。




 路面店で客が自分しかいない時に、何も買わずに店を出るのって気まずくないですか? 私だけですかそうですか。



 どーでもいいことですが、この「僕」は時計は付けずにスマホで時間を見る派です。

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