第六話 蹂躙と邂逅
前回の続き
更なるヒャッハーの世界が貴方を待ってます。
今更ながら、えぐめの描写が多数含まれます
ご注意下さい
洞穴は、思ったより広かった。
岩肌が露出した壁には松明が掲げられてて、目を凝らせば奥の方へと通路が続いているのが確認できる。
目の届く範囲にゴブリンは居ない。
奥の方にいるみたいだ。
僕は歩き出す。
微かに漂う腐臭。
その中には、淫臭の類も含まれている。
洞穴内は、僕の足音が反響する程の静寂に包まれてる。
「アハッ♪ 静かすぎるよ」
そう、静かなんだ。
あんなに、洞穴の入り口付近で仲間の悲鳴や助けが聞こえていたはずなのに。
女性の姦淫される悲鳴や、ゴブリン達の欲情した歓喜の声も、何一つ聞こえてこない。
はっきり言って不自然だ。
まあ、ゴブリン達は賢いしね。
さしずめ、この状況が意味することは……。
「ギョガ!」
「ゲゴジ!!」
「ガギョ」
「ギョギョギョ!!」
「「「ギャガヤギャ!!」」」
奥へ続く道を通って、広い空間に出たとき。
数えるのも億劫に成る程のゴブリン達が飛び掛かってきた。
「まあ、待ち伏せしかないよね?」
右手に長剣、左手に短剣を【再現】し、装備する。
奇襲からの圧倒的数の暴力、ある意味単純で最も効果的な戦略。
それに対する僕の戦略は……。
「ホイ♪」
「「「ギャギョベ」」」
ただ、斬るだけ。
うん。
シンプルイズベスト。
それに、数に対抗するには力押しが一番効果的だ。
下手な策は通じないからね。
その方が良い!
絶対良い!!
え、本音? こっちの方が楽しいからに決まってるじゃん♪
目に付いたゴブリン、間合いに入ってきたゴブリンを、かたっぱしから斬りまくる。
「ェギャ…!」
「ギャ!」
短剣が、血でダメになれば、遠距離から攻撃してくるレンジャーやメイジさんへ向けてリリース、また新しい短剣を再現する。
幾度となくそれを繰り返す。
「アハッ♪」
絶え間なく、手に伝わってくる肉を斬る感覚。
絶え間なく、耳に響き渡る、ゴブリン達の怒声と断末魔。
絶え間なく、体に降り注ぐ鮮血。
……最高だよ!!
「もっと! もっと楽しもう!!」
ここ最近、いや、数年間ずっと欲求不満で、フラストレーションが溜まってたんだ!
こんな機会はそうそう無い。
今日! 今! ここで!
発散しよう♪ そうしよう♪
「アハハッ! アハハハハッ!!」
「ヒギャ…」
「ギギャーー!!」
「アガア……」
あれだけいたゴブリン達も、徐々に数を減らしていく。
上位種のソルジャー、レンジャー、メイジ。
それは、ゴブリンの中でも高い実力を持つ彼らにとっても例外ではなかった。
ソードブレイカーと呼ばれる、刃に凹凸の突起が施された特殊な武器で、ソルジャーの剣を使えなくした上で蹂躙したり、壁を駆け上がって、上空から数え切れない程の短剣をレンジャーやメイジといった後方陣営に降り注がせたり。
この場において、僕という”狂気”を阻める者はいなかった。
──詰まるところ、彼らゴブリン達は、アルアイン・クラムという殺人狂・戦闘狂の燃料であり、食料でしかなかったのだ。
狂気の晩餐は続く。
◆◆◆◆
「アハハハハッ!! 痛い? 気持ちいい?」
「ガッ! グ! ゲハ!! ハッ…」
「ねえ? どうなのサッ!!」
「アグゥ…! ゴォ…グァ……」
「ハァア♪」
最期の一匹、一際大きい体躯のゴブリンがその生涯を終えた。
その風貌から、多分この群れのボス、ゴブリン最上位種のロードだったかな?
殺戮に夢中でよくわかんなかったや。
まあ、他のゴブリン達よりは手こずったのかな?
かなり高い質の僕の短剣を弾く防御力はなかなかだったけど、動きが緩慢だったからね。
攻撃力が高い大剣で四肢を斬り飛ばしてお腹を滅多刺しにしたら簡単だったよ。
生命力が強かったから、二分も楽しめた♪
ありがとう! ロード君!
楽しかっよ♪
流石に大剣は重かったけどさ。
さ、状況確認、状況確認♪
「…♪ いいね♪」
頭部の無い亡骸、胴体が上下に泣き別れた亡骸、体を両断された亡骸、体中に刃が突き立てられた亡骸、壁に貼り付けにされた亡骸、最早、原型を留めていない肉塊……。
見渡す限り、ゴブリン達の亡骸に埋め尽くされてる。
床は血の海と化し、辺りには鼻がおかしくなる程の血生臭い異臭と、数多の”死”の臭いが立ちこめてる。
一言で表すとしたら、地獄絵図かな?
まあ、僕にとっては凄く居心地のいい所なんだけどね。
転がってる死体は、僕にとってはインテリアとそう変わらないし、血だって気にならない。
この血臭だって、とうの昔に慣れきってる。
前世では、異国から輸入した”お香”の次に好きな匂いだった。
リラックスしたい時はお香。
興奮したい時は血の臭い。
そんな感じかな。
だから、狂ってる自覚はあるよ。
あ、獣臭いのは勘弁だからね。
十分満足したしそろそろ、出口に引き返そうかと考えた時だった。
「あ、貴方様は?」
「!!」
まだ、少し子供っぽさの残った声。
慌てて声の方へと武器を身構える。
そこには、地面から突き出た岩に両手首を縛られて、拘束された少女の姿が。
裸に向かれてるけど、ゴブリン達に味見された形跡は見られない。
どうやら、事が起こる寸前で僕が邪魔しちゃったみたいだ。
ビックリした~。
女性が捕らわれている可能性をすっかり忘れてたよ。
これだけ殺してるんだ、悲鳴の一つや二つ、上げなかったのかな?
それとも、僕が聞き逃した?
ま、取り合えずアフターケアは大事だよね。
それに、僕にとっては嬉しい誤算、いやシナリオ通りだったっけ?
懐に短剣を忍ばせてから、僕は少女に近づいた。