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第零話──狂人の転生

2話目です。

 僕は今、空に浮いている。


 そう、浮いているんだよ。

 別に自分で何かしてるわけじゃない。体は棒立ちだ。それでも僕の体は、プカプカ、ふわふわ、水中を漂うクラゲよろしく空に浮かんでいた。


 先に言っとくけど、嘘じゃない。



「・・・」


 ふよふよ、プカプカ、実を言えば、この不思議な現象について既に説明は受けているんだ。彼女から。


 

 風に揺れる銀糸のような髪。


 常人なら息をすることも忘れて魅入ってしまいそうな美貌。


 “女”という性を凝縮したような魅惑的な肢体と、それを覆う黒の羽衣。

 

 僕と同じように空に浮かび、僕と向かい合っているその女性は、女神を自称した。

 

 神様なんて信じていない僕だけど、ああ、そうか神様なのか。なんて、そう思わせるだけの何かがあった。

 オーラって奴かな?


 そんな女神様に、身の上話を促された。混乱してたけど、仕方ないから生前の話をして、それから最後はユーモアたっぷりに締めたんだけど、肝心の神様はというと、初めから終わりまで、にこにこしていただけで、他に反応は一切ないんだよね。眉をピクリともさせなかった。だから、ちょっと怖いけど聞いてみる。あの、僕の話聞いてました? って。



『素晴らしいです♪』



 ん? 

 何が?

 

 良かった、ちゃんと僕の声は聞こえてるみたいだ。でも僕の質問と微妙に噛み合ってない返事が返ってきちゃったよ。どうしよう? というか、素晴らしいって何が?



『やはり、私の思った通りでした。あなたは素晴らしい感性をお持ちのようです。正に、私の加護を与えるに相応しいお方』



 え? ちょっと待って?

 やっぱり僕の話、聞いてないよね?


 自分で言わなきゃダメ?

 僕、狂ってるよ? 殺人凶だよ? 戦闘凶だよ?


 もし、さっきの話を聞いた上で更にそれを理解した上で言ってるなら、悪いことは言わない、考え直そう。



「あの、女神様『ゼフィアです』─はい?」



 何が?



『私の名前です。名前を教えるに相応しい人物だと判断しました。これからはゼフィアと気軽にお呼びください』



 ……要するに、さっきの話で見極めたってこと?

 僕の血だらけの人生話が高評価な理由が未だにわかんないけど。


 『それと、私は女神ではありません。邪神です』


 ……職業詐称ですか。

 別に気にしないけど。


「わかりました、ゼフィアさん」


 満足げに頷く邪神ゼフィア。

 僕は言葉を続ける。


 「えっと、そろそろ僕がここに居る理由をお聞きしても?」

 

 ゼフィアは、”あっ”とばかりに口元を覆う。

 ……何その反応。


 『スミマセン。まだ言ってなかったですね』


 ……はい。


 『えっと、今から貴方様には〔セレスティア〕と呼称される別世界に転生して貰います』


 ……はい?


 『理由は三つ。一:私に選ばれたから。二:私好みの感性を持っているから。三:私の頼みだから』


 ちょっと!

 そんな横暴な。


 『貴方様にとっても悪い話ではありませんよ?』


 僕の不満を見てとったのか、ゼフィアが言う。

 

 「どういう意味です?」


 『あちらの世界でやって貰いたいことがあります』


 「はい」


 微妙に話がかみ合わなかった気がする。


 『今から十八年後、私や魔王を滅するという理由で、他の神々が異世界から勇者なる者──丁度あなたと同じ年の人間を召喚する計画を練っているようなのです』


 ふむ

 

 僕の年齢は十八歳。

 世間一般で言えば”高校生”って職業・・だったかな?

 

 『そこで、貴方様には一からその世界で生を受け、力を付けて貰い、神々の狂行を阻止して貰います』


 「……つまり?」


 ゼフィアは、この日一番の笑みを浮かべて、涼しげに言った。


 『神を含めて、勇者全員、殺しちゃってください♪』


 「・・・」


 『勿論、それまでに人は殺し放題ですよ。殺人を取り締まる機関はありますが、あなたにはそれ相応の特典を付けますので、驚異になりません。勿論、普通の生活をして下さっても構いません♪』


 「…特典?」


 『ええ、〔セレスティア〕はあなたの世界で言う、ファンタジー世界です。剣と魔法、スピリッツな存在に魔物まで、盛り沢山。様々なバリエーションの殺しが出来ちゃいます♪』



 ……乗った!!



 ファンタジーが何かは判らないけど、仕事で母国に戻ったときに、『異世界転生』なる主旨のサブカルチャーが流行っていたのを思い出した。

 これはきっと、その異世界転生というイベントなんだろね。

 

 今まで出来なかった殺人……ゴクリ。

 それだけでも魅力的なのに、さらには殺し放題♪

 

 とっても、おいしい依頼だね。


 「判りました。その依頼お受けましょう」

 

 『そうですか! 良いお返事ありがとうございます。これで、少しは刺激的な世界に──コホンッ…えっと、良いセカンドライフを~♪』


 今のが本音かな?

 神様だって案外、暇だったりするんだろう。


 徐々に、体が透けていく。

 やがて、僕という存在がこの場から消える。




 



───こうして、僕の今まで以上に血にまみれた、最凶で最狂な、異世界セカンドライフが幕を開ける。

次回は少し日が空くと思います。



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