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彼岸の詩

作者: 藍染三月


 川の向こうに兄がいた。少し前に死んだ兄。

 どうして彼は死んだのだった?

 ああと嘆いてぼくは歌う。

 焼けて爛れた頬が熱かった。これは錯覚だ。



 ぼくの右手は麻痺してる。生まれた時からそうだ。

 どうしてぼくは死ねなかったの?

 ああと笑ってぼくはうたう。

 燃え盛るぼくの部屋が見えた。これは幻覚だ。



 両親はぼくに優しい。兄にはいつも怒鳴ってた。

 どうして兄は死んでしまった?

 ああと叫んでぼくはうたう。

 ぼくを突き飛ばした兄がいた。あれは現実だ。



 川の底に沈みたかった。今度こそ死にたいんだ。

 どうしてぼくはここにいるの?

 ああと呻いてぼくはうたう。

 向こう岸にいたのは僕だった。あれは幻想だ。



 真実を吐き出したかった。火を点けたのはぼくだった。

 どうしてぼくは黙ってるんだ?

 ああと嘔吐えずいてぼくはうたう。

 両親に嫌われたくなかった。これは本心だ。



 罪悪感で進めない。居場所が見つからなかった。

 どうしてぼくはぼくなんだろ?

 ああと藻搔いてぼくはうたう。

 向こう岸にはどう行けばいい。これは焦燥だ。



 家へと向かって走っていた。真実を叫ぶ勇気。

 どうしてぼくにはそれがない?

 ああと気付いてぼくはうたう。

 声に出してしまえば良いんだ。これは慟哭だ。



 川へと向かって走っていた。生きてく勇気が欲しい。

 どうして僕がそこにいるの?

 ああと気付けば僕がうたう。

 彼岸に立ったぼくは笑った。これは決別だ。

読んで下さりありがとうございました。

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