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「よう。今、ちょっといいか?」
『珍しいのぉ、ヌシがワシに電話するとは……何時もは直接じゃったのに……で、仕事はなんじゃ?』
「話が早くて助かる。実は、かくかくしかじかで……」
「なるほどなるほど。あい分かった。では、最近手にしたものでよければ、提供するが如何か?」
「それでいい。で、俺は何を支払えばいい? 言っとくが、才色兼備の俺でも無理難題は止せよ。満たすのに時間が掛かるから」
『いやいや、惇は昔、顧客じゃったからのぉ。大安売りで今度の月曜日、拙者と会う約束で充分じゃよ。
ついでに、らんぜっちゃんと我が同志を連れてきてくれると有り難いんじゃよ。ただし、あの関西女狐を連れて来たら死体が一つ出来るとだけ言っておくのじゃ』
「どんだけ、嫌いなんだよ……」
『世界が滅ぶ前に自分の手で殺したい人間ナンバーワンじゃ!』
「それ、一般じゃ駆け落ちに分類されると思うぞ?」
『ワシはアブノーマルじゃよ?』
「自分で言うな。後、疑問に疑問符つけて返すな。ま、そのぐらいならお安い御用だ。感謝するぜ、|蓮
《はす》」
『なんとッ! 最後の一言でワシの好感度七〇パーセント増しじゃ!』
「ちょろいな、お前……。じゃあ、切るぜ」
『おおっと、ちょっとまっ――――』
切った。
あー……イライラした。あの話し方ムカつくぜ、まったく……。
用件は、メールでいいか……。イライラ度、三割は軽減できる。
電話したのは、あいつのモチベーションが知りたかったから。
あいつ、気分次第で結構変わるし。
今さっきのあいつのテンションは、上の中ぐらいだ。何か良いことでもあったんだろうか?
さてと。
『おい、品を送れ』
と、送ったところ、案外早く返信を告げる着信音がなった。
『上から目線のナルシストに送る添付画像集』
添付を開けと言いたいのだろう。文章に毒があるのが不愉快だが。
指示通り、添付を開くと案の定、そこには必要な情報がかなり、載っている。
流石。前もって調べておいたのか。
仕事が速いのはいいことだ。
『サンキュー。放課後に顔を出すから、部屋くらいは掃除しとけ』
送って二秒も経たないうちにまた、着信音がなった。
本当に速いことでもう返信が来たようです。
『了解じゃ! 楽しみにしてるんじゃよo(^▽^)o』
相変わらず、調子のいい奴だ。
まぁ、これで、準備は出来た。
明日になるのを待つとしよう。
残念な奴が仕返しをしてはいけないと誰が、決めた?
世の中にある暗黙の了解なんてどうでもいい。
能ある鷹は爪を隠すように、日陰者は常に牙を隠し持っているものだ。浮かれた日向者の首を食い千切る為に。
俺が残忍なのは、今に始まったことじゃない。
ただ。
普段は、お面を被っているだけ。万人が被っているお面を。
残念な俺。
そんな浅井惇耶を俺は肯定する。