第6話〜幼なじみの想い(朋花パート)〜
やはり女の子視点はムズい
私と陽が元の……昔のような関係に戻れてからもうすぐ1ヶ月になる……。
今は毎日がホントに楽しい。
大好きな彼の…陽の側に…隣に居られる事で…こんなにも心満たされるなんて……。
でも……一緒にいると、気づかされる事もある。
周りの女生徒達が陽へ熱い視線を送っている事……。
そしてそんな陽の隣にいる私を見ている事に……
陽と仲直りしてから、頻繁に下駄箱にラブレターが入ってたり、告白を受ける事が増えた。
……でもそれは陽も同じみたいだった…。
この前もたまたま、陽が他のクラスの女の子から告白を受けている所を目撃してしまった。
陽はその告白を丁寧にやんわりとお断りしていたけど……
……告白の現場を目撃してから……私は今のままでいいのか…考えてしまう…………
「……ご、ごめんなさい。……お気持ちは嬉しいんですけど……そ、その私……他に好きな人がいるので………お気持ちにはお応えできません。………本当にごめんなさい……」
「……そ、そうですか……はぁ……」
私の言葉を聞いて、目の前の男子生徒は落胆の表情と肩を落として、その場を去っていった。
「………………はぁ…」
その場に残った私は1人深い溜め息を吐いて、身体から力を抜く。
…今朝、下駄箱にまた手紙が入っていて、中休みの時間に校舎裏に来てくださいと書かれていた。
相手は隣のクラスの男の子で中休みになり校舎裏に来てみれば、やっぱり告白をされた。
私はちゃんとお断りをした……好きな人がいるからと……
よく知らない人でも、告白を断わる時は気が重くなる。
「………朋。」
「………朋ちゃん。」
「………あ、優ちゃん、莉っちゃん……」
物陰に隠れてた2人が私の近くまで寄って来て……
「……朋、大丈夫…?」
「……うん。…ありがと優ちゃん…」
優ちゃんが心配そうに声を掛けながら頭を撫でてくれている。
私がこーゆー事を苦手なのを知っているから、優しく接してくれている。
「…朋ちゃん、はいどうぞ♪」
「…あ、ありがとう莉っちゃん…。」
莉っちゃんが持っていたビニール袋から紙パックのコーヒー牛乳を取り出し笑顔で差し出してきた……。
それを受け取ると、冷たくて緊張で高まっていた気分を静めてくれてるみたい…
それから私達は中庭に移動し、近くに設置されているベンチに腰掛けて会話を始めた。
「「…早く千堂くんと付き合っちゃえばいいのに……」」
「………むぐっ…」
ベンチに3人並んで座っての会話の途中で、私の両サイドに座る優ちゃんと莉っちゃんが、ハモッて言った一言に、危うく口に含んでいたコーヒー牛乳を噴き出しそうになってしまった……。
「…い、いきなり…何を…」
「…いきなりじゃないでしょ?……あんた達が公衆の面前でイチャコラしてるのに、まだ付き合ってないから男どもがアプローチをしてくるんじゃないの…。」
「…べ、別…私達イチャついてなんか……」
優ちゃんが説教口調で言った事を、ハンカチで口を拭いながら反論しようとしたら……
「…朋ちゃ〜ん……昨日のお昼休みのあーんは何かなぁ〜?」
「…え!?……あ、あれって…イチャつく事に入っちゃうの!?」
「「……入ります!」」
またもや2人が口をハモらせて断言されてしまった。
……あーんって普通だと思ってたんだけど、違うんだぁ……
「…てゅーかさぁ…朋は千堂くんの事、どー思ってるの?……好きなんでしょ?男の子として…」
「……う……うん………す、好き…」
優ちゃんにズバリ聞かれてしまった事を俯き、頬を赤くしながらも正直に答えた。
私は陽が好き……昔からずっと、幼なじみとしても…1人の男の子としても…ずっと好き。
仲直りしてから、また一緒にいるようになって、その想いは強くなっている。
「…じゃあ、早く告白すればいいのに………ぐずぐずしていると他の誰かに千堂くん盗られちゃうかもよ…?」
「…そうだよ朋ちゃん……この前、千堂くんまた告白されてたじゃない……断わってはいたけど。」
「……う、うん……それは……分かってるんだけど………」
2人の言ってる事も、もっともだし分かるけど…
「…だ、だって………陽が…私の事、1人の女の子として、見てくれてるのか……分かんないだもん……」
仲直りしてから、陽は昔以上に私に優しく接してくれる。
だけどその中に恋愛感情があるのかまでは分からない。
「…も、もし陽が…私の事…幼なじみ以上として見てなかったら……せっかく仲直りしたのに……またギクシャクしちゃうかも……しれないし……」
「…うぅ〜ん……確かに朋ちゃんの言う事も分かるけどね…」
「……ん〜…じゃあさ!……ちょっと試してみようか?」
「………え?……試すって?」
いきなり優ちゃんが何かを思いついたような顔をして立ち上がり、莉っちゃんの隣にいって何やら耳打ちしている。
「…ああ〜…なるほどぉ〜…うんうん。……やってみよ♪」
優ちゃんから何かを聞いた莉っちゃんが何度か頷いて、笑っている……
2人して何を話しているんだろ…?
「…さ、朋。……教室に戻ろう!」
「…戻ろ〜朋ちゃん♪」
「…え?え?え?…何?何?……どーしたの?いきなり……きゃっ!?」
2人して立ち上がると私の両サイドに立って、右手を優ちゃんが左手を莉っちゃんが掴んで、グイグイ引っ張っていく。
「…ちょっと2人共、どーしたの!?…そ、そんなに引っ張らないで〜…」
そのまま2人に引っ張られたまま、校舎内に戻っていくのだった。
……そして私達の教室に戻ると、2人は教室内をキョロキョロと見渡して…………
「…あ、いた。…千堂く〜ん…。」
「……え!?…ちょ、莉っちゃん!?……あ、優ちゃんまで…」
莉っちゃんが中尾くんと会話中の陽を見つけると、近づいていき……
優ちゃんも追い掛けるように行ってしまい、私も慌てて追い掛ける。
「……ん?小嶋さんに大原さん?……どーしたの?」
陽が不思議そうな顔をして2人を見ていた。
「…あのねぇ〜…部活仲間の男の子にぃ、朋ちゃんを紹介してほしいって頼まれちゃってぇ〜……いいかなぁ?紹介しても…」
「………………え!?」
「…ええ!?莉っちゃん!?…いきなり何を……むぐ!?」
莉っちゃんが突然、陽にとんでもない事を言い出した。
慌てて止めようとしたら優ちゃんに口を塞がれ、それを止められてしまう。
中尾くんは何かに気づいたように、ニヤ〜っと笑っていた。
……なんかこの流れデジャヴを感じるような………
「…で、千堂くん。……朋ちゃんの事、紹介してもいいかなぁ〜?」
「………え、えっと…あ、あ〜…」
陽が困惑気味に狼狽えていて、私の方を見ていた。
まさかさっき2人が言ってた試すって……これ!?
陽の反応を試しているんだ…
で、でもこれで陽が……いいって言ったら……私……
「………ダ…」
「…ダ???」
「…ダ、ダメ!……そ、そんなの……ぜ、絶対ダメ!」
椅子に座っていた陽は立ち上がり、顔を真っ赤にしながら力一杯に拒否をしてくれた。
優ちゃんが私の口を塞いでいた手を離してニッコリと笑い、莉っちゃんも私の方を見てニッコリと笑っていた。
……私は陽の態度を見て……胸は大きく高鳴り、心の中は暖かく満たされていくようだった………。
第6話終
朋の友人の小嶋莉子はインビジブルの主人公晃太のクラスメイト、上野の彼女です。
インビジブルでも名前だけは出てきてます