第5話〜幼なじみの想い〜
企画を小説にするのはムズい
……朋と仲直りしてから、早いものでもうすぐ1ヶ月になろうとしていた………。
朋が隣にいるだけで、こんなにも日常が楽しくなるなんて……
ホント、仲直りできて良かったぁ……。
……だが楽しい事ばかりではなかった…。
近くにいれば気づくのは、やっぱり朋は美少女って事。
一緒に登下校していると、すれ違う男性通行人は、ほぼ全員が朋の事を目で追い、隣にいる俺に羨望や嫉妬の感情が見てとれる眼で睨んでくる。
…俺達の通う高校、聖晴夢学園は生徒の9割が女子という、とんでもない学校。
家から近いから選んだのだが、ここまで女子が多いとは……
そんな大多数が女子を占める学校内でも、朋は目立っているように感じる。
物腰が柔らかく、ほんわかとした雰囲気の朋。
数少ない男子からの人気は高く、仲直りしてから一緒にいると、下駄箱にラブレターが入ってるのを見たり、告白されてるのを度々目撃する事が増えた……。
俺達は仲直りしただけで、付き合い始めたワケではない。
朋に好意を寄せてる男子が、急に俺と仲良くなったのを目撃し、危機感を感じて告白し出してるみたいだ。
朋は全て断っているらしいけど……
「……陽よぉ〜…お前らいい加減に付き合っちまえよ…」
放課後、帰る前にトイレに行こうとしたらヒロがついてきた。
…用を足し、教室に戻る間際に俺と朋の関係に触れ、こんな事を言い出した。
「…な、なんだよイキナリ…」
「…イキナリじゃねーよ。……お前らってさぁー、端から見たらカップルにしか見えねーのよ?」
なんか深く染々とした感じで言われてしまったが……
「…カ、カップルって……ど、どこがだよ!?…お、俺と朋は……べ、別にそんな……」
カップルなどと言われて照れてしまい、しどろもどろになりながら反論しようとすると……
「…どこって…………全部?」
「………ぜ!?」
「…だってよぉー…お前らって登下校はずっと一緒…いや教室でもずっとベッタリじゃんよぉー…」
確かに仲直りしてから朋とは、ずっと一緒に登下校しているし、教室なんかでもずっとお喋りしていた。
「…それに今日の昼休みのアレ……なんなの?」
「…………うぐ…」
思わず言葉が詰まってしまう…
ヒロが言ったのは今日の昼休みの事。
仲直りしてからはお昼も一緒に食べているのだが……
〜お昼休み・学食〜
今日も俺とヒロ、朋に大原さんと小嶋さんの5人で、学食で御飯を取る事に。
俺と朋は弁当を持参、ヒロは購買でパンを買って、大原さんと小嶋さんは学食の定食を注文して、それぞれお昼を食べていた…。
俺は自分の弁当は自分で作ってきている…
この日はおにぎり2個にオカズがミニロールキャベツに卵焼き、ポテトサラダ。
おにぎりを頬張って食べていたら、隣の朋から視線を感じ……
「…もぐもぐ………ん?…なに朋?」
「…陽の食べてるおにぎり、……それ、具なぁに?」
おにぎりを半分位食べた事によって具が露出し、普通の具ではないから気になったのかも。
「…ああ。これはね豚塩カルビ。」
「…ふぅ〜ん………美味しそうだね…」
朋がおにぎりをものっそい凝視している……。
「………えっと…食べる?」
「…うん♪………あ〜〜ん…」
「……!」
朋が此方に顔を向けて、可愛く口を開いている。
え……?…これは…もしかして…あーんですか?あーんで食べさせてくれって事ですか?
…ふと周りに眼を向ければ、ヒロ達が……いや学食に居るほとんどの生徒が凄い形相をして此方を見ている……
い、いや……周りは気にするな。
朋だけに集中しろ。
えっと…俺が口をつけてた部分を食べさすとアレなんで、口をつけてない部分を差し出そう。
「…は、はい朋。……あ、あ〜〜ん……」
口を開けている朋の顔におにぎりをゆっくり近づけていくと……
「…………」
「…?……ど、どうしたの朋?」
朋は差し出したおにぎりをジッと見て食べようとしない。
どうしたのかと思っていたら…
「………え?…あ!」
「…あ〜…はむ!……もぐもぐ…」
「「「……!!!!!!」」」
朋は俺が持っていたおにぎりを、徐に摘んで角度を変え食べ掛けの部分にかぶりつき、一口分頬張り咀嚼している。
あ、あの……こ、これは………か、間接キス……では…?
もう一度、周り眼を向けるとみんなの形相が更に強張っていた。
「……んくっ……美味しい〜……陽、これ美味しいね♪」
「…あ、あぁ…口に合ったのなら…良かった…」
朋の方はそんなの気にした様子はなく、満足そうに笑っていた。
「…あ、陽。……お返しに私のお弁当、何か食べる?」
「……え?…あ、えっと……」
朋のお弁当箱は2段重ねタイプで1つはご飯、もう1つにオカズが入っていて、オカズが入っていている方を差し向ける…
中身はタコさんウインナー、アスパラベーコン、ミニオムレツに茹でブロッコリー等。
「…え、えっとじゃあ……アスパラベーコンを……」
朋もお弁当は自分で作ってるみたいで、どれも美味しそうだったが、眼を引いたアスパラベーコンを選んだ。
「…アスパラベーコンね。……はい陽。…あーん♪」
「………!!??」
4つあるアスパラベーコンの内の1つをフォークに刺して、此方に差し出してきた。
ええ!?…まさかのあーん返し!?
しかもこのアスパラベーコン、さっき朋が一口だけ食べた、食べ掛けのヤツ……
って事はこれも……間接…キス…
む、無心だ…無心になれ…何も考えてはダメだ。
「…あ、あー…ん……もぐもぐ…むぐむぐ…」
「…どう陽?…美味しいかな?」
キラキラと期待を込めた瞳で、感想を待つ朋。
「……んぐ……う、うん…美味しいよ朋。」
「…えへへ♪……良かったぁ〜」
正直に言うと、緊張感タップリのせいで味なんて、よく分からなかった…………
周囲の生徒達から、『リア充爆ぜろ』『リア充もげろ』『カップル消え失せろ』と…色んな罵声が聴こえた………………気がした。
〜現在・放課後〜
「……ったく…人前であれだけイチャついて、カップルじゃねーとか……ありえねーだろ。」
「…別に俺達はイチャついてなんか……」
否定しきれないのが、悔しいような…もっともなような…
「…てゅーかよ。…真面目な話、ホントに百瀬と付き合わねーの?………好きなんだろ?」
トイレから教室へノンビリとした足取りで戻りながら、急にマジトーンで話し出すヒロ。
「…そ、それは……まぁ……」
「…お前ら2人が仲直りした途端に、お前も百瀬もアプローチされまくってんだろ?」
朋が最近、告白やラブレター貰ったりしているのと同様、俺もあんまり話した事がない女子から、最近やたら話し掛けられたり、告白をされた事も……あった。
朋程多いワケではないが、そーゆーのがあったのは事実……
「…お前らがベタベタしてるのにも関わらず付き合ってないから、周りの連中からはまだチャンスがあると思ってんだろ。………だからさっさと告白して付き合っちまえって。」
「………そんな簡単に言えたら苦労しないよ……」
ヒロの言っている事も分かるが、ひょいひょい告白できれば苦労はしない。
「…俺さ、やっと朋と仲直りできてさ……今すげー楽しいんだよ……」
「…だったら恋人同士になったら、もっと楽しいんじゃねーの?」
「…朋が俺を恋愛対象で見てるか分かんないんだよ……」
俺と朋は確かにずっと一緒でべったりしているが、それは5年以上疎遠になっていた反動からで、朋に恋愛感情があるかは分からない。
「…これで告白してダメだったら……せっかく仲直りできたのに、またギクシャクしそうで……」
疎遠だった5年間、朋にツラい想いをさせていたから、今の笑顔を大事にしたい。
また自分勝手な想いをぶつけて朋に大変な想いだけはさせたくない……。
「…ふぅーむ…………じゃあ……ちょっと試してみるか?」
「……………はっ?」
ヒロの言った事が全く理解できなかった。
今の会話の中で試すって何…?
……と会話をしている内に教室に着き、中に入ると一緒に帰る為に俺達を待っていた朋と大原さんが会話をしながら待っていた(小嶋さんは部活)。
「…なぁなぁ〜百瀬〜〜」
「…あ、2人ともお帰り……って…なぁに中尾くん?」
教室に入ると足早で2人に近づき朋に話し掛けるヒロ。
ヒロのヤツ一体何を……?
「…今度さぁ〜陽を合コンに連れていっていい?」
「………………え?」
「………な!?…おい!ヒロ!?」
「…ちょっとヒロ。…あんたイキナリ何を…」
俺と大原さんが同時にヒロに問い掛けようとしたら、ヒロが無言で合図を送るようにして、俺達に静止を呼び掛ける。
向かい側にいる大原さんは、何かに気づいたように黙ってしまった……
「…女の子側からさぁ〜陽を誘ってって頼まれててさぁ〜………いいかな?」
「…………………」
朋が困惑したような表情で俺とヒロを交互に見て……
「……と、朋…?………おわ!?」
朋が急に俺の側に近づいてきて、俺の右腕に両腕を回し、しがみ着いて…………
「…だ、だめぇ…………だめ……だもん……」
悲しそうな表情で言った一言に、俺はときめいてしまった………………
第5話終
リメイク前は高校の名前すら無かったwww