第25話〜隠していた物〜
ようやくこの話まできた。
俺と朋の誕生日当日、2人きりで過ごす為、俺の部屋に移動した。
夜御飯は済ませたが、少しの軽食と昨日作ったガトーショコラを用意し、さっそく始めようとしたら………
……ピ〜ンポ〜ン♪♪♪
「…ん?誰だ?……ちょっと待ってて。」
「……うん。」
突然の来客を報せるチャイム音に慌てて、1階に下り玄関を開けると……
「…は〜い。」
「…あ、宅配便で〜す…」
突然の来客は宅配便……荷物を受け取り、誰からの荷物か送り主を確認すると父さんと母さんからだった。
割りと大きめの段ボールだが、そんなに重くはなかった。
とりあえずこのまま2階に持っていってから中身を確認することに……
……ガチャッ
「…あ、陽おかえり。…お客さん誰だったの?」
「…宅配便だった……父さんと母さんが何か送ってきたみたい。」
「…おじさん達が?……それじゃあ海外からの贈り物?」
「…ん〜…多分…とりあえず開けてみる…」
段ボールを床に置き、ガムテープを剥がして中身を見ると、2つの紙袋が……
1つ青、もう1つはピンクのリボンで封をされていた。
「…あ、陽。……手紙が入ってるよ……はい。」
「…ありがと……ん〜?」
段ボールの中に封筒が入っていたのを朋が発見し、手渡してきた。
受け取って中を確認するとやはり手紙で内容は………
『陽斗。朋花ちゃん。誕生日おめでとう……いつも寂しい思いをさせてすまない。…息子を日本に1人にしているダメな親からの誕生日プレゼントだ。……青が陽斗の分でピンクが朋花ちゃんの分のプレゼントだ。……まだ当分帰れないが許してほしい。……朋花ちゃんや向こうのご両親にもよろしく伝えておいておくれ。………追伸、朋花ちゃんの分のプレゼントは母さんが選びました。』
「……だってさ…」
「…ふぅ〜ん…良かったね陽。……おじさん達からのプレゼントだよ?」
朋は優しく笑っている…何となく俺の心情に気づいてるのかも…
……ったく…プレゼントなんていいから、たまに帰ってくればいいのに……
「…プレゼント開けてみようか……はい、朋の分。」
「…ありがとう……なんだろ?随分軽いけど……洋服とかかな?」
「…俺の方は…なんか重い…」
俺と朋はリボンを外して中身を確認してみる……
「…な、なんだこれ…!?」
「…陽のプレゼント……そ、それなぁに…?…鎧?」
袋から出てきたのは、映画とかで見たような昔の西洋甲冑の仮面。
かなり古そうな物だけど……これまさか本物じゃ……ないよね?
父さん……これをどうしろと…?
「…と、とりあえず…棚にでも飾っておくか……」
「…えっと……私…の………は………え……ええ!?」
「………ど、どうしたの!?」
朋が袋の中身を見た途端に、何故か顔を真っ赤にして驚いている。
…朋が袋を逆さにすると中身が全て出てきた……それは……
「……な!?…え、こ、これ下着!?」
「……う、うん……しかも…かなりエッチな……」
袋から出てきたのは多数の女性用の下着…それもかなり際どいとゆーか…セクシーとゆーか…
色は黒や紫、濃いピンクでセクシーなレースや透け透け…
生地の面積が殆ど無いのや、大事な部分に穴が空いている物…
ほぼ紐みたいなヤツまであって…
俺と朋は互いに顔を赤くし無言になってしまった。
……く、母さん何を考えているんだ!?……こんなエロい下着を送ってくるなんて……
「…ご、ごめん朋…母さんが変な物を……す、捨てておくから…」
「…あ、ダメだよ。せっかくおばさんがくれたのに…」
俺が捨てようとしたエロ下着をまた丁寧に袋に戻していく朋。
「…い、今すぐは…ちょっと恥ずかしいから無理だけど……もう少し大人になったら……き、着て…あげるからね…」
「……え…うん…………うん?…ん?え?」
朋は顔を赤くしたまま、照れたように俯きながらそんな事を言ったのだが……
着て…あげるからね……って…な、なんかその言い方だと…着ている姿を見せてくれるみたいに聞こえるんですが……
……い、いや俺達は付き合っているんだし、いずれはその……そーゆー展開にもなるワケだけども……
チラッと朋に視線を向けると、俺と眼が合った瞬間に朋は赤い顔を更に赤くし、湯気が出てきそうなくらい照れていた……
「…あ、あ〜…えっと…あ!ケ、ケーキ!…朋、ケーキ食べよっか!?」
「…あ、うん!た、食べる!」
とりあえず変な雰囲気の空気感を裂くように話題を切り替えた。
………ウチの親のプレゼントセンスは斜め上をいってるようだった………
…………………
「…ん〜♪…美味しいぃ〜♪……陽、凄い美味しいよ♪」
「……良かった…お口にあったのなら何よりです♪」
朋がガトーショコラを一口頬張り、幸せそうな顔で褒めてくれている。
この顔を見れただけで、頑張ったかいがあったな…
……この後、ガトーショコラや軽食を食べ終え、ゲームしたり写真撮ったりイチャついたりと……
2人でまったりした時間を過ごし、そろそろプレゼント交換をする事に……
「…あ、その前にちょっとトイレに……」
「……あ、その間に部屋、軽く片付けておくね。」
「…ありがとう。」
朋にお礼を言ってから、1階のトイレに向かう。
………………
ジャアアァァ…
洗面台で手を洗いながら、正面の鏡に眼を向ける……
自分の顔を見ると、緊張からか…その表情は変に強張って見えた……
今回用意したプレゼントは……まぁかなり緊張する物だしな…
「……はぁ〜……ふぅ〜……………よし!」
深呼吸をした後に軽く気合いを入れてから2階へと戻った。
………ガチャッ
「……お待たせ、と……も……………え?」
「………あ、陽………あの…勝手に見てごめんなさい…………えっと……こ、これって………」
「……あ!?……そ、それは…」
俺が部屋に戻ると、朋はベッドの下に隠していた、渡す事が出来なかった5年分の朋へのプレゼントが入った段ボールを開けてみていた。
「…お片付けしてたら、ゴミがベッドの下に転がっちゃって……取ろうとしたら段ボールがあったから……最初エッチな本かなぁ〜…って…」
「…ええ!?」
危ない…お宝本は押し入れの奥に移動させて良かった……ってそうじゃなくて!!
「…ちょっと見てみたいなぁ〜…と思って開けたら………あの、これって…」
朋が戸惑った表情で此方を見上げていた……
まさかこんなに簡単に見つかってしまうなんて…
………でも見られた以上、隠してもしょうがないし…白状するか…
「…ふぅ〜……えっとね……それ……本当は朋に渡すハズだったプレゼントなんだよね……」
「……え!?…え?これ…え?」
簡単な説明に頭がついてきてないのか、更に戸惑う朋。
俺は朋の隣に座って、段ボールの中身を眺めながら……
「…俺さ……自分のせいで朋と喋れなくなったくせに、あの小5の時から……毎年、朋へのプレゼントは用意してたんだ………」
「…毎…年…?」
「…誕生日がくる度に、謝ってプレゼントを渡そうと思ってたけど………渡せなくて……その結果が……これ……」
プレゼントを指差しながら苦笑いをする……
朋は黙ってプレゼントを見つめていた。
「……あ、でも今日、渡そうと思ってるのはちゃんと他に用意してあるから、これは忘れて?……今度捨てようと思ってたし…」
「………え…?……捨て…?」
捨てると聞いた朋が驚いた表情をした後に、少し考え込むような顔をして………
「……陽。ちょっと待ってて!」
「…え?…待つって…何を……え?…朋?」
………ガラガラガラ
…朋は何かを決心した表情をして、いきなり立ち上がり窓を開けてベランダに出ると、そこから自分の部屋に戻っていった。
俺も続いてベランダに出て、朋の様子を伺うように部屋の中を見ると………
朋は押し入れを開けて何かを探しているみたいだった。
………?…朋は何を探してるんだろう?
……しばらくして朋は押し入れから大きな袋を引っ張り出しいた。
その袋は真っ白な布袋で、紐で封がされている。
それを抱えて窓際まで歩いてきて……
「…陽、ちょっとこれ持っててくれる?」
「…あ、うん。」
朋は抱えていた袋を俺に渡すと、自分の部屋の窓から、ウチのベランダに渡ってきた。
また俺の部屋に2人して戻ると……
「……陽……その袋……開けてみて……」
「……え?……開けていいの?」
「……うん。」
朋から受け取ったまま持っていた大きな袋。
大きい割にはそんなに重くはない…何が入ってるんだろ…?
袋を床に置いて、紐を解いて口を広げて中身を見ると…
「……え?……あ、こ、これって……」
中身は大きさも形も違うが、全てが綺麗な袋でラッピングされた物が5個入っていた。
「…私も……あの時からずっと……誕生日プレゼント……用意してたんだ……。」
「………朋……」
「…毎年……プレゼント用意してたけど……渡せなくて……でも……なんとなく……捨てられなかったの……」
朋は恥ずかしそうな…どこか寂しそうな…そんな苦笑いをしている……
朋も……プレゼント用意してくれてたんだ…俺の為に……
「……ねえ……陽……」
「……え…?…」
「…今年用意した分と合わせて……プレゼント、いま6個づつ……あるよね…?」
「…う、うん……」
俺も朋も渡せなかったプレゼントが5個づつと今年用意した分とで6個づつだけど……
なんか朋の表情が、すごくワクワクとしたような感じに……
「……この…いまあるプレゼント…全部………交換…しない…?」
「…え?…………………え、ええ!?……ぜ、全部って…この昔のヤツも!?」
「……うん、そう。……だめ?」
「………い、いや……だ、だめって……ゆーか……一番古いので、小5の時のだから絶対古くさいヤツだよ?」
5年以上前の子供の頃のプレゼントなんて……そもそも何買ったんだっけ…?
「…それでも…いいの……昔の陽が私の為に用意してくれたプレゼントも……欲しいの……ね?……お願い……」
「……うぐ……」
そんな潤んだ瞳の上目遣いされたら断れないよ……
…それに…俺だって、昔の朋が用意してくれたプレゼント……欲しいしな……
「…わ、分かった……しよっか……6年分のプレゼント交換…」
「……あ……うん♪」
俺が了承すると朋は満面の笑みで大きく頷いた。
この笑顔が見れるなら、なんでも許せちゃうな………
………そんなワケで、昔の物も引っくるめたプレゼント交換をすることになってしまった………
第25話終
この作品を姪と作ってる時に、昔のプレゼントが出てくるエピソードは、是非とも作りたかった部分です。




