第24話〜誕生日〜
この回を含めてあと3話で終わりです。
━━…本日、10月2日は俺と朋の誕生日の前日になる。
つまり明日は、いよいよ待ちに待った誕生日。
先月は張り切り過ぎて、ケーキ作りに没頭したあまりに朋に余計な不安を与えてしまったからな……
……でもプレゼントも用意したし、先程明日の誕生日ケーキとなる大きめのガトーショコラを作り終え、準備万端……
……そして今は自室のベッドの下からある物を取り出そうとしている所……
「………んっと……ふう…取れた……」
ベッドの下の隙間、奥の方に隠していた、段ボール箱を取りだし蓋を開ける。
……中には綺麗な紙袋に包装された5つの物が……
これは朋と疎遠になってからも用意し続けていた誕生日プレゼントだ……
5年分…つまり5個のプレゼント…渡そうと思っても毎年渡せず、溜まっていってしまった。
捨てようと思っても結局捨てられず、残していたが…今年はやっと渡せる。
プレゼントは新しく用意したので誕生日が終わったら、この渡せなかった方は今度こそ捨てよう…
んで最後になんとなくもう一度眺めていた。
渡せなかった5個のプレゼントを眺めながら…明日は今までの分、朋にたくさん喜んでもらえる誕生日にしようと誓ったのだった。
〜翌朝・誕生日当日〜
「……Zzzz…Zzzz……」
まだ起床時間には間があり、布団の温もりに身を委ねるよう夢心地に浸っていると………
……カラカラカラ…
微睡みの中、耳に入った音に意識がはっきりと目覚め……
……ギシッ…ギシッ…
ベッドに近づく足音と共に殺気を感じ、バッと飛び起きるように上体を起こした。
「………あ。」
「……おはよう朋。」
「……お、おはよう陽。」
身体を起こすと同時に、明らかにベッドへダイブしようとしていた朋と目が合い、朝の挨拶を交わした。
「…むぅ〜…起こしてあげようと思ったのにぃ〜…」
膨れっ面でベッドの端に腰掛ける朋。
何これ…めっちゃ可愛いんですが…
「…ただダイブしようとしただけでしょ?」
「…ふぎゅっ…ふわれふぁ(ばれた)?」
朋の可愛く膨らんだ頬を右手で掴むように押し潰す。
「…あ、そーだった……朋、お誕生日おめでとう。」
「…あ…えへへ♪陽もお誕生日おめでとう♪」
ベッドで向かい合っていた俺達は今日という日を思い出し、お互いに相手を祝福し……
「…………ちゅっ」
おはようのキスを交わす………
…………………
登校時間になり朋と手を繋いで通学路を歩いていると……
「…お〜い…陽斗ぉ〜…朋花ちゃ〜ん……」
「……ん?……あ、晃太先輩。……それに生徒会長達も…」
後方から名前を呼ばれ、振り向くと此方に向かって歩きながら手を振っている晃太先輩。
それに東雲先輩、柊先輩、篠宮先輩、藤間先輩と晃太先輩の4人の彼女も一緒にいる。
「…先輩達、おはようございます」
「…おはようございます♪」
「…2人共、おはよう。」
「…おはよう」
「…おはようございます」
「…おっはよん♪」
「…おはよ〜」
挨拶を交わし終えると、晃太先輩が持っていた紙袋を差し出してきて……
「…陽斗、朋花ちゃん誕生日おめでとう〜……はい、プレゼント。…これは俺と那緒と綾乃から。」
「…え?あ、ありがとうございます」
「…わあ〜ありがとうございます♪」
差し出された紙袋を受け取り、2人でお礼を言うと、晃太先輩と篠宮先輩、藤間先輩がにっこりと笑っていた。
中身はお揃いのマフラーだった。
「…これは私からだ。受け取ってくれ。」
今度は東雲先輩が一歩、前に出て俺と朋それぞれに持っていた物を手渡してきた。
「…ありがとうございます東雲先輩。」
「…ありがとうございます……これ……勾玉?」
東雲先輩がくれたのは小さい勾玉の付いた数珠みたいな物だった。
「…一種の御守りだ。……右手に付けていれば強力な魔除けになるぞ。」
「……ま、魔除け……?」
何か良く分からないが俺達は言われた通り、それを右手にはめた。
「…そして私からは……コチラをどうぞ。」
「……?……な、なんですか?このリスト?」
柊先輩はいきなり1枚の紙を渡してきた。
何かのリストみたいだが……
「…その中からお好きな物をお選びください。……なんなら全部でもよろしいですよ♪」
「…え!?いや、ちょっと…え!?」
「…は、陽……このリスト……凄いのばかり載ってるけど……ほ、本当に…選んでいいのかな……?」
朋の言うようにリストに載ってる物はかなり高級品ばかりで、俺達にはとても買えないような品が多数、載っており困惑する事に……
結局、柊先輩の厚意を無下にするワケにもいかず、一番安くて無難そうな物を選んだ。
………柊先輩はやや不満気だったが……朝から気疲れしてしまった………
〜学校〜
「朋、千堂くん、誕生日おめでとう〜♪」
「おめでとぉ〜♪」
「…おめっとさ〜ん」
教室に入ってから大原さん、小嶋さん、ヒロに囲まれ祝福を受けている俺と朋。
「…ほれ。これはオレから2人にプレゼント。」
「…ありがとう…封筒?」
ヒロが渡してきたのは1枚の封筒…受け取った朋が中身を確認すると……
「…あ!…これインフィニティワールドのフリーパスペアチケット!?」
「…ええ!?ヒロ…お前、こんな高い物……いいのか…?」
インフィニティワールドとは老若男女に人気の遊園地やプール等が複合した娯楽施設。
1日フリーパスチケット1枚でも一万円近くするのに……
「…ふっ…気にすんな…親友の為なんだから、これくらい……」
「…ヒロ。……アンタこれ、親戚のおじさんにタダ当然で貰ったって……」
「……バ、優子!シーッ!シーッ!」
「「……………」」
大原さんが真相をあっさりバラし、慌てているヒロ。
普段から金欠だって騒いでる男がおかしいとは思ったけど…
「…でも、まぁ…サンキューヒロ。」
「…ありがと中尾くん。」
「…お、おお…い、いいってことよ……」
タダでもこんな高い物を俺達にくれたのは事実だし、しっかりお礼は言っとかないとな。
「…はい。これはわたしぉと優ちゃんからぁ〜」
「…ありがと〜莉っちゃん、優ちゃん〜」
「…ありがとう大原さん、小嶋さん。」
大原さんと小嶋さんからはペアのマグカップを貰った。
………この後も仲の良い他の級友達から、次々とプレゼントを貰った俺と朋だった。
〜放課後〜
……普段の帰路を朋と歩いている…だが今日は手を繋いでいなかった。
普段の学生鞄とは別に、みんなから貰ったプレゼントを持っている為、手を繋ぐのは無理なのだ。
「…陽〜…こんなにいっぱいプレゼント貰えるとは思わなかったね〜…」
「…本当、みんな優しいなぁ〜…」
朋と2人で晃太先輩やヒロ達、クラスメイトから貰ったプレゼントを抱え、皆からの心遣いに感謝の気持ちでいっぱいになっていた。
「…あ、そうだ。後でウチに来てくれる?お父さんとお母さんが陽にもプレゼントあるって言ってたから…」
「……おじさん達が?……なんか悪いなぁ〜…」
朋と付き合い始めてからは、おじさんとおばさんともより一層仲良くなった。
今、日本にいない両親の代わり……いやもう1人の父さんと母さんみたいな存在になっていた。
〜百瀬邸〜
「…はい。朋、陽くん。お誕生日おめでと〜…」
「…わぁ〜…ありがとうお母さん、お父さん♪」
「…ありがとうございます。……すいません、俺にまで……」
自宅に着いて着替えてから朋ん家に行くと…
さっそくおばさんにリビングに引っ張られ、朋と並んでソファーに座ると対面にいるおばさんとおじさんからプレゼントを手渡された……。
それぞれにお礼を言うと……
「…もぉ〜…そうゆーこと言わなくていいのよぉ!」
「…そうだよ。陽斗くん…君は家族の一員みたいなものなんだから……」
胸の奥底から暖まるような言葉が、プレゼント以上に嬉しかった。
……ちなみにおじさんとおばさんからのプレゼントは俺も朋も、タブレット端末。
朋はともかく俺までこんな高い物貰っていいのか、恐縮していたら……
「…ああ、平気平気〜…パパの仕事のコネで安くしてもらったから。気にしないで。」
……と、おばさんがあっけらかんと答えていた。
何にせよ、大切に使わせてもらおう。
……そしてそのまま朋ん家で夜御飯をご馳走になった。
俺達の誕生日って事で普段よりもかなり豪勢な夜御飯になっていたが……
これは誕生日パーティーってワケではなかった。
…みんなから誕生日プレゼント等は貰ったが、みんなで集まってパーティーはしないと言われた…。
その理由はおばさんもおじさんも…いやヒロや大原さんも小嶋さんも、晃太先輩達までも…全員が同じ事を言っていた……
『せっかく恋人になれたんだから、2人きりで過ごしたら?』
…そういう訳で、久しぶりに朋と過ごす誕生日パーティーは2人きりでやる事に…………
第24話終
インフィニティワールドはディズニーランドをモチーフにしてます




