第23話〜怪しい行動(朋花パート)〜
久しぶりの朋花パート……
最近、陽の様子が何かおかしい……
夏休みの間は特に変わった様子は無かった。
あの柊先輩のプライベートビーチに行った時も、凄く楽しく過ごさせてもらって……
陽と……キスも……してしまった……てへ♪
結局3日間もお泊まりさせてもらって、最後の最後まで柊先輩やメイドさん達にお世話になって、本当に楽しかった。
……その後も、陽と一緒にプールに行ったりお祭りに行ったりと……たくさんデートして充実した夏休みになったのだけれど……
夏休み開けの新学期になった数日後から陽の様子が変だった……。
学校終わりに一緒に帰ろとすると……
「……陽〜帰ろ〜…」
「……あ、えっと……ごめん朋!……俺、ちょっと用事があるから先に帰るね?」
「……え?…用事って…?」
「…ホントごめん!…気をつけて帰って?…じゃ、じゃあね!」
「…あ、陽!?…待って!陽、陽ってばぁ〜〜…」
陽は私の静止も無視するように、鞄を抱えて慌てるように教室を飛び出していってしまった……
……そしてその日、陽が自宅に戻ったのは夜の9時過ぎ頃……
帰って来たの見てから陽の家にお邪魔して、何処に行って何をしていたのかを聞いても……
「…え!?いや、えっと…あ、あ〜……あ!そう!こ、晃太先輩ん家に行ってたんだ…うん…」
「…あ、そ、そうだったんだ……ふぅ〜ん……」
……………怪しい。
あからさまに何かを隠している……
でも確信も根拠も無いのに陽を問い詰めるような事はしたくなかったので、私はその日は納得したけど……
……でも陽のこの行動は連日、続いていた…
放課後になると、急いでいるみたいに1人で教室を飛び出してしまうし……
学校が休みの土日には、朝から出掛けてしまって夕方過ぎまで帰って来なかった……
……そんな陽の不審な行動が連日続いていて、今日は3連休の初日…
本当は陽と一緒に過ごそうと思ってたのに、陽は今日も朝からいなかった。
…するとそんな私達の事に気づいて、心配になった優ちゃんと莉っちゃんが、今日ウチに遊びに来てくれていた。
「……なるほどねぇ……それは確かに千堂くん、怪しいわね…」
私は相談がてら、優ちゃんと莉っちゃんに、ここ数日の陽の行動を説明していた。
優ちゃんもやはり陽の行動は怪しいと感じてくれたみたいで、神妙な顔つきになっている。
「…うぅ〜ん……なんか千堂くんってぇ〜…朋ちゃんに隠し事して何かするってタイプではないからぁ〜…なんか意外だねぇ〜…」
莉っちゃんの言うように、陽と付き合い始めてから……ううん、仲直りしてから陽は私に隠し事はしなかったのに……
その反動のせいか、今回の陽の行動が凄く心配になってしまう。
「…まぁ…千堂くんに限って浮気はないと思うけど……」
「…………………え!?」
優ちゃんの言った何気無い一言に私は過敏に反応してしまい、一緒で脳裏にイヤな映像を思い浮かべてしまった。
それは陽が…私以外の女の子と一緒にいて……仲良くしている所を想像してしまい……
う、浮気……?陽が……浮気…?
そ、そんな……まさか……陽が浮気なんて……
ダ、ダメだよ…変な事考えて、陽の事を疑ったりしたら……
で、でも……最近、私に内緒で何処か出掛けてるし……
「…ちょっと優ちゃん…朋ちゃんが……」
「……あ!…ご、ごめん朋!…変な事、言って……だ、大丈夫だよ千堂くんなら!…だ、だからそんな真っ青にならないで…ね?」
優ちゃんが慌てるくらいに私は真っ青になっていたみたい……
そ、そうだよね……大丈夫だよね…陽の事、信じてあげないと……
「……ちなみに朋ちゃん。……明日、千堂くんは…?」
「……え?……あ、明日も…朝から出掛けるって……言ってた…」
「…ふぅ〜〜ん……そっかぁ〜……んん〜〜……」
莉っちゃんが陽の予定を聞いてきたので、連休前に陽から聞いた予定を説明した。
陽が言うには連休の初日と2日目は朝から予定があるって言ってたので、明日も朝からいないハズ……
そしてそれを聞いた莉っちゃんは何かを考え込んでいる……
「……じゃあさぁ〜朋ちゃん。……後をつけてみよっかぁ?」
「「………え!?」」
莉っちゃんの言った提案に私と優ちゃんは同時に驚いてしまった………
〜翌日〜
………私は今、優ちゃんと莉っちゃんと共に、少し前を歩く陽の事を尾行していた。
本当はこんな事いけないと分かっている……
陽の事を信じていないみたいだし、裏切っているみたい……
でも胸の中の不安が大きく、強くなってしまい…決行してしまった……
「……千堂くん、何処に向かってるんだろ…?」
「……此方って…駅の方角…だよねぇ…?」
小声で話す優ちゃんと莉っちゃんが言うように、陽の事を自宅からつけているけど……
住宅街とは逆の駅の方角に向かって歩いている。
駅付近にあるのはショッピングモールやお店とかくらいしかないけど……
「……え!?…ねえ…あ、あれ……」
「…………え?」
……尾行を続けてから数分、駅近くの交差点で、1人の女性が陽に近づいてきて親しげに話しを始めていた。
「…あ、あれ……誰だろ…?随分年上っぽいけど……」
優ちゃんの言うように、その女性は大人の女性って感じで凄い綺麗な人だった。
離れているから会話の内容は分からないけど…
陽は凄い楽しそうに喋っている…
……そ、そんな……は、陽……や、やっぱり……浮気…?
それを見ていると……私は胸が締め付けられるように苦しくなり、暗闇に呑まれたみたいに、心が重くなった…
目の前の現実が信じられず、私はその場にヘタリ込みそうだった……
「……あ、2人が移動する!……朋、しっかりして!?……ほら、後つけるよ!急いで!」
私は優ちゃんに支えられながら、尾行を続けた……
こんな事を続けても、もっと見たくない物を見せつけられるだけかもしれないのに……
瞳に溜まった涙が視界をボヤけさせ、身体に上手く力が入らないが……なんとか歩き続けた……
「……うぅ〜ん……」
「……莉子、どうしたの?」
私の左側で身体を支えてくれてる莉っちゃんが、何やら考え事をしている……
それに気づいた優ちゃんが私の右側で私の事を支えながら聞いていた……
「……私……あの女の人……どっかで見た気がする……」
「「……え!?本当!?」」
私と優ちゃんは同時に莉っちゃんの方に振り向いた。
「…うん……何処だっけぇ〜……ん〜〜……」
「……ちょっと莉子!…重要な事なんだから、ちゃんと思い出しなさいよ!?」
「………ん〜〜……あれぇ?……あ!2人が建物に入って行くよぉ!?」
「………え!?」
考えながら視線を前に向けていた莉っちゃんの言葉を聞いて、陽達の方を見ると……
確かに2人して、お洒落な外装の小さな建物に入っていく所だった……
しかも裏口みたいな扉から……
2人が建物に入ったのを見届けた後に、私達はその建物に近づいた……そこは……
「…え?…あれ?……ここって……ケーキ屋…さん…?」
建物の正面付近をこっそり覗くと、中は確かにケーキ屋さんみたいだった……
看板には『洋菓子店モン・シェリ』と書かれている。
「…確かここって…最近オープンしたんだけど…めちゃくちゃケーキが美味しいって評判のお店……じゃなかった…?」
優ちゃんが言ってた事は私も聞いた事がある。
駅前付近に凄い美味しいケーキ屋さんが最近できたって……
「…あ、思い出したぁ〜!……さっきの女の人ぉ、ここで働いてる人だよぉ!……前にケーキのショーケースにケーキを入れてる所見たことあって……」
「…え!?そうなの!?」
ここで働いてる人…?そんな人がどーして陽と…?
………ガチャッ
「……よいしょっ…と……ん?」
「「「………!!!!」」」
…と3人でお店の前で立って話ししていたら、先程陽達が入っていった扉が開き、さっき陽と一緒にいた女性がゴミ袋を持って出てきた。
しかも格好が白い調理服を着ていて、まさにパティシエみたいだった…
そして出てきた瞬間に、私とバッチリ眼が合ってしまい……
しかし見れば見るほど綺麗な人だった…
細くつり目っぽい瞳がキリッとしていて睫毛が長い。
私と同じくらいの長さの茶髪を1つに束ねていて、化粧っけがないのに美人……
まさに大人の女性って感じで………って…あれ?
その女性をマジマジと見ていると、何か違和感とゆーか……なんか…誰かに似ているような…?
…とその女性が私達の方に少し近づいてきて、私の事をジーッと見てから……
「…………貴女、もしかして……朋花……ちゃん?」
「……え!?……ど、どーして…私の名前を…?」
その女性はいきなり、私の名前をピタリと言い当てたのだ。
私が驚いていると………
「…やっぱり!?……へ〜〜…写真で見るより実物の方が可愛いわ〜……顔、小っさ…うわぁ〜肌、すべすべ…」
「…あ、あの…ちょ、ちょっと……ふぐぅ…」
更に女性は私の両頬を両手で、包むように押したり撫でたりしてきた……
私は顔の弄くりから逃れるように一歩後ろにさがり……
「…あ、あの…なんで私の名前を知ってるんですか…?……貴女は……」
「…あ、そっか。…あはは〜ごめんごめん〜忘れてた〜……えっと、私はね……」
女性が思い出したかのような表情の後に笑っていると……
「……ちょっと、響子さん〜…何してる………え!?」
「……は、陽…?」
「……あ〜ごめん〜陽斗。」
女性が出てきた扉から、今度は陽が出てきた……しかもその格好は女性と同じようにパティシエみたいな姿をしている。
陽は私達を見て、かなり驚いている。
そしてこの女性はやはり陽と親しげに話し始め……
「……まぁこんな所で、立ち話もなんだし……みんな、中に入って?」
私達は女性に招き入れられ、ケーキ屋さんの2階の休憩室みたいな所に連れられて、そこで全ての説明を聴くことに………
〜ケーキ屋・2階休憩室〜
「「「……お、叔母さん!?」」」
「…う、うん…俺の叔母さん……母さんの妹で……」
「……初めまして♪陽斗の叔母で〜…ここ、モン・シェリの経営もやってる立山響子で〜す♪」
私達がハモッて驚いていると、陽の叔母さん…響子さんはおどけるように自己紹介をしてくれた。
陽の叔母さん……そっか…誰かに似ていると思ったら、陽のお母さんに似ているんだ…
姉妹なんだから、当たり前だよね……
「…それで、千堂くんは…ここで一体何してるの?…その格好からして…バイトとか?」
「……あ、いや、えっと……」
優ちゃんが陽の格好を指差しながら疑問を聴くと、また陽は慌てている。
「……ああ〜この子ね〜今、私にケーキ作りを習ってるのよ〜♪」
「…ちょ、ちょっと、響子さん!?」
「「「……ケ、ケーキ作り!?」」」
私達が今日、何度目かのハモりでの驚きと共に視線を陽に送ると、照れてる様子で顔を赤くしている陽。
「…で、でも……なんで急にケーキ作りを…?……しかも隠れて……」
「……う…あ〜…その……」
私が聞いても、何故か言い淀んでいる陽…
どーしてか、まだ隠そうとしているみたい……
「…もういいじゃない陽斗。……朋花ちゃん不安がってるよ?………大切な彼女に心配掛けてまで隠すような事でもないでしょ?」
「……う…ん……そう…だよな……ごめん朋……今まで隠してて……不安にもさせちゃって……」
陽は私に頭を下げて謝ると、照れてるような表情で視線をさ迷わせながら、何をしていたのかを話し始めてくれた……
「……えっと……俺と朋さ…来月、誕生日じゃん?」
「…え?…う、うん…」
「…だ、だから……朋に……誕生日ケーキを……作ってあげようと思って……ずっと練習してたんだ……」
「……え…」
陽の説明によると……夏休み終わり辺りから、来月10月3日の私と陽の誕生日に向けて、ずっとケーキ作りを練習していたみたいだけど…
なかなか上手く出来なくて苦戦していたみたい。
そこで陽の叔母さんの響子さんが駅前でケーキ屋を始めたのを思い出して、ケーキ作りを教えてもらう事に……
私にはサプライズであげたいから、ずっと内緒で練習を続けていたのが、今までの怪しい行動の数々だったのだ……
「……ホントごめん朋。……まさか俺が変に隠したせいで、朋を不安にさせてたなんて……」
「…あ、ううん……謝らないで陽……陽は私の為にしてくれたのに……私が変に不安がって、陽の事を信じてあげられなかったから……」
「…い、いやそもそも俺が隠し事みたいな真似するから朋が不安に……」
「……で、でも……」
私と陽が押し問答のように自分が悪いと言い合っていると……
「……あぁ〜…いいわぁ〜…アンタ達、青春真っ盛りって感じねぇ〜…なんかキュンキュンくるわぁ〜♪」
私達のやり取りを響子さんが楽しそうに笑いながら眺めていて…
周りに皆がいるのを思い出し、私と陽は赤くなって俯いてしまった……
「…あ、そうだ、陽斗。……もうバレちゃったんだしさ、みんなにアンタの作ったケーキ、試食してもらったら?」
「……え!?…いや、え?…マジで?」
「…あ、食べたい食べたい!」
「…わたしもぉ〜食べた〜い♪」
響子さんの提案に優ちゃんと莉っちゃんが勢い良く挙手し、顔を輝かせている。
「…わ、私も…陽の作ったケーキ……食べたいなぁ…」
「…うぐ……わ、分かった……けど……美味いかどうかは……分からないからね?」
私も控え気味ながらも挙手し、陽を見ながら意思表示する。
陽は渋々と腰を上げて、みんなで1階へと向かった。
…………………
「……どーぞ。」
「……わあ〜…」
私達3人は調理場の端のスペースに招かれ待ってると……
響子さんが紅茶を用意してくれて、そして陽が緊張した面持ちでお盆を私達の目の前のテーブルに置いた。
お盆には苺のムースケーキ、ガトーショコラ、モンブランが載っていて……どれも私の好きなケーキだった……。
「……はぁ〜…凄いぃ〜…これ本当に千堂くんが作ったのぉ?」
「…え?…あ、う、うん…まぁ…い、一応…」
莉っちゃんが眼を輝かせて聞いた質問に、まだ緊張した感じの陽は返答がたどたどしかった
「……は、はは……千堂くん、絶対に私より女子力あるなー……はぁ〜……」
優ちゃんが目の前のケーキを見て、遠い眼をしながら何故かダメージを受けているみたい…
そういえば優ちゃんって料理とか苦手って言ってたっけ……
「「「…いただきまぁ〜す♪」」」
私達3人は手を合わせてから、フォークを持って最初にモンブランを食べ始めた。
「…あ、美味しい!……うん、凄く美味しいよ陽!」
「…美味しいぃ〜♪…甘味も丁度良いしぃ……千堂くん、グッジョブ♪」
「……す、凄い美味しい……お店で売ってるヤツみたい……」
「…ほ、本当に……?」
私達各々の感想を聞いても、信じられないといった感じの陽。
「…私が仕込んであげたんだから当然でしょう?……もっと喜びなさいよ陽斗!」
「…いて!いたた!」
響子さんが得意気な感じで笑みを見せて、陽の背中をバシバシ豪快に叩いている。
……その後も苺のムースケーキとガトーショコラを頂いたけど、どちらもお世辞抜きに本当に美味しいくて……
私は胸の中で、幸せな気分と共に陽を疑った罪悪感が混同し入り交じる複雑な気分だった………
…………………
……ケーキを食べ終えた後、響子さんと少し話をしてからお開きとなり、響子さんにお別れを言ってからお店を出て、優ちゃんと莉っちゃんとも別れ、今は陽と一緒に帰路を歩いていた。
「……朋、本当ごめんね…」
「……どーして陽が謝るの?……陽は悪くないよ?…私の為に頑張ってくれてたのに……私が陽の事を変に疑っちゃったから…」
「……で、でも……朋を不安にさせたのは事実なんだし…」
陽はいつも私の事を考えて行動し、大切にしてくれていると実感できた今日の出来事……
でも私が疑ったせいで陽は今、気を落としてしまっている。
私が謝っても、なんか逆効果な感じだし…どーしたらいいかなぁ……
……ん〜………ちょっと恥ずかしいけど……あれなら……陽、元気になってくれるかな…?
「……陽、そこに立って眼を瞑ってくれる…?」
「……え!?…め、眼を…?瞑るの…?」
「……うん……お願い……」
「……わ、分かった……」
陽は私がお願いした通りに、両眼を瞑りジッと立っている。
そっと陽との距離を詰めて、少し背伸びをし………
「…………ちゅっ」
陽の唇に自分の唇をそっと重ね、優しいキスをしてから離れると…
「…と、とと…朋…?…え、い、今…キ…?」
陽は顔を赤くして戸惑っている……
海で陽と初めてキスをしてからは毎日のようにキスをしているけど……
私から不意討ち気味にキスをすると、陽はこうやって顔を真っ赤にして照れてしまうのだ。
「……陽……ありがとう…私の為に頑張ってくれて……あと疑ってごめんなさい………陽、大好き♪」
自分の想いを言葉に変えて、勢い良く陽の胸に飛び込み抱き着いた。
陽は最初困惑していたけど、私の背中に両腕を回して、優しく抱き締めてくれた。
彼の腕の中で、彼の温もりを…心遣いを…優しさを感じながら…
私の居場所である、彼の側に居る幸せを実感しながら私達は抱き合っていた……………
第23話終
女の子ってこーゆー状況で、こんな行動にホントに出るかな…?




