第22話〜海に行こう⑤〜
海編ラストです。
柊先輩のプライベートビーチに皆で遊びに来た俺達。
同部屋だった俺と朋は1つのベッドで一緒に寝ることに………
シーンと静まりかえった薄暗い室内…
俺と朋は大きめのベッドで一緒に横になっているが…広く大きいベッドの為、俺はやや朋から離れてポジションを取っている。
以前のお泊まりの時と一緒で、とてつもない緊張感…眠気など一気に消えてしまった。
な、なんか…息がしづらい…心臓の鼓動が…早く強く刻んでいて頭の中で響いている……
……これ…寝れるのかな…?
……とその時だった…。
……ギシッ…ギシッ…
朋が寝ている方のベッドが軋み揺れて、それが俺の方に近づいてくる……
……え?あれ?…朋?……起きてって…いや近づいて来て…る?
そして朋の方に背を向けて寝ていた、俺の背中辺りに気配が……
瞑っていた両目を開けて、顔を背中の方に向けると……
「…あ、やっぱり起きてたぁ〜」
「…と、朋…?……ど、どうしたの?」
朋はすぐ後ろの所で正座し俺の方を覗き込むようにしていて、俺が起きてると分かり笑っている。
「……陽……どーして、こんなに離れて寝てるの?」
「……え!?…ど、どーしてって……えっと……」
確かに朋の言うように、俺は広いベッドの一番端っこに寝ていた。
理由は……色々と…我慢できるか分からないから…とは言えない。
「…そんなに離れないでよぉ……もっとこっちに来て?………その……寂しく……なっちゃうし……」
「…………う、あ、そ、そっか……わ、分かった……」
朋のシュンとした感じの寂しそうな顔を見ると、とても拒否はできそうにない。
上体を起こして、場所をズレようとした時……
「……あ……陽……見て…」
「……え?……あ……」
朋は窓の方を見ながら右手で指差している。
俺も朋の指差す方向を見ると……
2階の窓から見える景色は、息を呑むほど綺麗な星の海の夜空だった…。
その中でも一際綺麗だったのが、真円の満月……
「………綺麗……」
「………凄い……月が近く感じる……」
普段では見れないような夜空に2人で見とれていると……
「……ねえ陽……少しだけ……お散歩に……行かない…?」
「…………え?」
……………………
「……わぁ〜……本当に綺麗〜…こんなに星いっぱいの夜空……初めて見たかも……」
夜空を埋めるかのような星空の下、俺と朋は浜辺を歩いていた。
朋のお願いを聞き入れ、こっそり別荘を抜け出し散歩中……
幾つもの星ぼしが並ぶ中、俺は真円に輝くお月様を眺めていた。
目映いばかりに輝く満月……それを見ていると……思い出すのは、朋に言われたあの言葉……
〝…太陽がないとお月さまは輝けない…〟
……今、月が輝いていられるのは太陽の光を反射しているから……
……俺は……この満月のように……朋の事を輝かせて……いれてるのだろうか……?
…目の前でキラキラと輝くような笑顔を見せてくれている女の子を幸せにできてるだろうか…?
「………陽…」
……ギュッ
「……え!?朋?……急に…どうしたの?」
少し前をはしゃぐように歩いていた朋が、急に立ち止まると俺に近づき抱き着いてきた。
「…なんか……陽の顔……寂しそうに見えたから……」
「……あ……」
いかん…表情に出てしまっていたか…
「…大丈夫だよ……陽……私は…何があっても……ずっと陽の側に……いるからね……」
「……!……朋……」
俺の胸に抱き着き、俺の顔をジッと見上げているその表情は、にっこりと可愛く笑っていた。
…その笑顔を見て幸せな気分になった瞬間、俺は気づいた。
そっか…俺、一方的に朋を幸せにしようとしてたけど……
俺の方も……朋に幸せにしてもらって…いたんだった。
一緒にいてくれるだけで、こんなにも心を満たしてくれる。
朋の笑顔が…朋の存在が……俺の心を…輝かせてくれているんだ……
俺は抱き着いている朋の背中に両腕を回し、そっと抱き締め……
「……ありがとう…朋……」
「……あ……えへへ…♪」
朋は再びにっこり笑い、抱き着いている両腕を更にギュッと力を籠めてきて………
「……私も……ありがとう陽………いつも……私の側にいてくれて……私はね……陽の側にいられるのが……一番嬉しくて……一番の幸せ……だよ♪」
「………と、朋……」
朋の言ってくれた言葉に思わず泣きそうになってしまった。
溢れそうな感情をグッと堪えて……
「……朋、俺もだよ……朋が側にいてくれると……心が満たされて…凄い…幸せな気持ちになる……ありがとね朋…。」
「……えへへ…♪」
両腕で…全身で…お互いの温もりを感じ合うように…存在を確かめ合うように…幸せを実感できるように…
しっかりと…強く優しく…抱き締め合う……
ドクンドクンと…生きてる証が伝わってくる。
お互いの身体に埋めていた顔を同じタイミングで離すと、抱き合ったまま視線が交差し………
「………朋……」
「………陽……」
昼間の時と同じように瞳と瞳を見つめ合うと、お互いに何を考えているか…何を求めているか…想いが通じあったようになり……
……頬を赤く染めた朋は、ゆっくり瞼を閉じ唇を控え目に突き出し…
俺は朋の唇にゆっくりと、少し顔を斜めにしながら近づけていき……
・・・・・・ちゅっ
2人の唇が重なり、柔らか感触が伝わってきた……
朋と…人生で初めてのキスは…優しく触れ合うだけの…フレンチなもの……
ファーストキスはなんとかの味なんて色々言われてるけど…
正直、味なんて分からなかった……
分かったのは唇は凄く柔らかくて…暖かいってことだけ……
「………ん……はぁ…」
「………ん……ふぅ…」
……ほんの数秒触れ合った唇を離すように、顔を離して眼を開けると…
同じように眼を開けた、やや呆けた表情の朋とまた目が合った…。
…ほんの数秒だったのに凄く長く感じた朋との初めてキス。
今まで感じた事ないような不思議な気持ちになり、高揚しているような…気恥ずかしいような…名残惜しいような…
色んな感情が入り交じっているみたいで朋の顔を直視出来なかった……
「……ね、ねえ…陽……」
「……え!?あ、えっと……な、何…?」
視線をさ迷わせていると、真っ赤な顔をして俯いている朋が、俺のTシャツの裾を引っ張り……
「…も、もう一回……ち、ちゅー……して……」
「……!!!………………あ、う、うん……い、いいの…?」
「……う、うん……」
もじもじと恥ずかしそうにしながらも、ハッキリ意思を言ってくれた朋。
再び瞼を閉じ、唇を重ね2度目のキス……
「……ん……んちゅ……ん……ちゅっ……ちゅっ……」
1回目の時よりも深く強く唇を重ね、その後角度を変えながら、啄むようにキスをしていく……
「……ふぅ…………えへへ……ふふ……くふふ…」
「…?……朋……?」
キスを終えると朋は両手で口を隠すようにしながら楽しそうに笑っている。
「……えへへ♪……陽とキス……しちゃった♪……ふふ♪」
にっこり笑うと、俺の胸に頭をグリグリと押し付けて悶えている。
俺も最初のキスの後は困惑気味だったが……
今は絶叫したいくらいに嬉しい気持ちでいっぱいだった。
「……朋。……そろそろ戻ろっか…?」
「……あ、うん。……そーだね…戻ろ。」
俺と朋は恋人繋ぎで手を繋ぎ、歩いて別荘に帰ろとした時……
「……陽…」
「……ん?……なに……え!?」
朋に呼ばれ返事をしようとしたら、繋いでいた手をグイッと朋の方に引っ張られ………
「…………ちゅっ」
いきなり朋に3度目のキスをされてしまった……
……唇を離すと、俺の腕にしがみ着き顔を伏せている。
俺の角度からは顔が見えないが、耳まで真っ赤になっているのが分かった。
「……は、早く戻ろ…?」
「…う、うん……」
突然の不意打ちキスに動揺する俺を、自分からしておきながら同じように動揺気味の朋が先導し、引っ張っぱりながら俺達は別荘へと戻っていった……………
…………………
「…………………」
「…………………」
あれから別荘の自分達の部屋に戻り、再びベッドに入っているが……
俺と朋の距離はかなり近い位置にいる…
最初に離れて寝ていた事を朋に咎められたのを思い出し、今度はなるべく近い距離にと思いベッドのほぼ中央に位置して寝たら……
同じことを考えていたのか、朋も中央付近に寝た為、鼻と鼻が触れそうな程の近さ……
お互いに向き合い、無言のまま見つめ合っていた。
ふいに視線が朋の唇にいってしまう……
薄桃色した潤いのある可愛らしい唇……
さっきは…この唇に俺の唇が触れて…重なったんだよな……
「…………んっ」
「……あっ……」
俺の視線に気づいたのか自らなのかは分からないが…
朋はまた両の瞼を閉じて、その可愛い唇を此方に向けて突き出してきた……
俺も眼を閉じてお互いの両手を繋ぎ、そっと唇を重ねて…この日4度目のキスを交わす…。
「……ん…ちゅっ…」
朋の甘い吐息を感じながらキスをしていると、まるで朋の全てが流れ込んでくるみたいだった。
……最初の1回をするのにあんなに悩んでいたのがバカみたいに……
この夜、俺達は寝付くまで…見つめて合って、笑いながら…何度も…何度も…唇を重ねたのだった………
第22話終
登場人物多い割りに出番の少なさwww




