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第21話〜海に行こう④〜

今年、人気の男児の名前の1位がハルト……偶然ですよ?狙ってないです

海に来てようやく朋と2人きりになり、キスまでもう少しだったのだが……

邪魔が入り結局キスには至らず……


一度良い雰囲気が崩れると、同じ雰囲気をまた創るのは難しく、逆に気まずくなってしまい2人きりはなれず……



それから時間は進んでいって日が沈みだし、辺りが暗闇に呑まれた頃…━━







「…はい、皆様。焼けましたのでお召し上がり下さいませ。」



金網の上で炭焼きされた食材が煙と共に香ばしい薫りを放ち、俺達の空腹な胃を刺激していた。


かなり高級そうな牛肉、アワビにサザエ、伊勢エビまで焼かれていて、やってるのは普通のバーベキューだが、その値段は聞かない方がよさそうだな……







「「「…いただきまぁ〜す!!!」」」




メイドさん達が焼いてくれてる食材を各々、自由に食べていく。





「…うまっ!…な、なんだこの肉…こんな肉厚なのに、すげー柔らかい…」



「…わ、わたし…こんなの初めて食べた……」



ヒロと大原さんが肉を食べた途端に涙眼になり、身を奮わせて感動していた。





「…はい。まー君の分。」



「…ありがとう莉子ちゃん。」



小嶋さんは上野先輩の分を取り分けて渡してあげている。

…なんか自然な感じで、まさに恋人って雰囲気だ。






「…はい晃太。あ〜ん♪」


「…晃太くん、こっちも♪」


「…ちょ、ちょっとみんな…じ、自分で食べれるから、自分の食事をして……」



「…あら。遠慮することはありませんわよ?」



「…そうだぞ晃太?私達はお前の彼女だからな。…奉仕するのは当然だ。……ほら遠慮せずにどんどん食べろ♪」



「…わ、わかっ…そ、そんな一度に…むぐぐ!?」



晃太先輩は篠宮先輩、藤間先輩、柊先輩、東雲先輩に囲まれ4人から一斉に口へと、お肉を押し込まれていた。

……あれは…あ〜んと言うにはかなり無理矢理な感じが……





「…ああ〜…美味しい〜美味しいわぁ〜…私の給料ではとても食べれない物ばかり…はぐもぐ…」



そして平沢先生は一心不乱に肉やら伊勢エビやらを食べていく。

凄い勢いだ……







「…陽…美味しいね♪」



「…!…う、うん。」



キス未遂から若干ぎこちない雰囲気だったが、朋は俺のすぐ隣でお肉を食べながら、にっこりと笑い掛けてくれた。


良かった……朋から放たれていた気恥ずかしい空気感が無くなっている。






「…はい。陽、あ〜ん♪」



「…あ〜…むぐ、…もぐもぐ…」



朋が楽しそうに、焼けた伊勢エビの身を一口分差し出し、お決まりのあ〜ん。

それをなんの躊躇いもなく、俺は頬張った。


朋は相変わらず人前でも気にせずあ〜んをしてくる。

ヒロや大原さんからの生暖かい視線が痛いが…まぁ気にしない。





……その後、食事が終わった後に洗い物や後片付けを手伝った。

何から何までお世話になりっぱなしだったので、これ位はやらせてもらいたかった。


メイドさん達は困ったように恐縮していたが、柊先輩にも頼み込み、皆で片付けをしたのですぐに終わり……

終わった後に、メイドさん達から笑顔でお礼を言われた時は手伝って良かったと実感する事ができた。








………………





「…ここは銭湯か…?」



俺、ヒロ、晃太先輩、上野先輩の4人で風呂場に入りヒロの呟いた一言は俺達4人の気持ちを代弁していた。


夜御飯後に、別荘の中にお風呂も完備されてる上に男湯と女湯があるとの事で皆でお風呂に入る事に……


そしていざお風呂場に入ると銭湯並みの広さだった……





「…本当になんでも広いな此所は……」



全員、髪と身体を洗った後に巨大な浴槽の湯に浸かり、晃太先輩が染々と言ってる。




「…あれ?晃太先輩も此所は初めてなんですか?」



「…うん。……去年は色んな所に行ったけど…此所は今日、初めて来たんだ。」



ヒロの質問に淡々とした感じで答える晃太先輩。






「…あ、そういえば陽斗くん。……なんか莉子ちゃんが良いムードだったのに邪魔しちゃったって……なんかごめんね?」



「……え!?いやそんな…上野先輩、謝らないで……」



「…あ、そこに那緒と咲良もいたって……ごめん陽斗。」



「…いやいや!晃太先輩まで!…ホント止めてくださいよ!?」



湯槽の中で、昼間の事を先輩2人に頭下げられ慌ててしまう。

……状況を知らないヒロは1人、不思議な顔をしていた。








「…あの〜…ちょっと聞きたいんですが……先輩達って…もうキス…しました?」



「「……え?」」



俺は思いきって、彼女いる歴が俺より長い2人の先輩に疑問を尋ねた。

……ちなみにヒロは広い浴槽内をラッコのように浮かんで泳いでいる。





「…うん。したよ……僕は付き合い始めた日に…」



「……え!?…その日に!?」



上野先輩が照れた感じで教えてくれた。

小嶋さんからしてきたとか……小嶋さん、結構積極的だな…





「…俺は…キスは毎日してるな……なんか、挨拶みたいな感じで。」



「…ま、毎日!?」



さ、さすが晃太先輩……彼女4人もいると違うな……

てゅーか…やっぱりそーゆー事って割りと早くするものなのか…?






「……なあ陽斗。」



「……あ、はい。」



「別に気にする事じゃないぞ…?……こーゆー事は焦ってするものじゃないし。……何よりも相手の気持ちも考えないといけない。」



晃太先輩がいつになく真剣な表情で、言ってくれた言葉は優しい口調なのに重みを感じた。






「…こーゆーのは恋人同士、双方の気持ちが大切だ……周りの事なんか気にする必要はない。……陽斗達は陽斗達のペースで関係を築いていけばいいだよ。…な?」



「……晃太先輩……………はい。ありがとうございます。」



晃太先輩は最後にニッコリと笑い、横にいる上野先輩も笑いながら頷いている。


そうだよな…焦る必要はない…焦って朋の気持ちを考えない行動だけはしないようにしよう……。



この時、湯槽の中でそんな事を考えていた俺は、この後もっとドキドキするイベントが待っているのを忘れていた……









…………………





「……はい。あがりで〜す。」



「…だぁ〜!!…また負けたぁ〜…!!!」



「…ヒロ、ホント勝負事弱いな……」



ヒロが持っていたトランプ投げ出し悔しがっている。

周囲にいる俺達はそれを笑いながら眺めていた。


お風呂の後に、皆でリビングに集まり、メイドさん達も加わって一緒にゲームやってる最中。

ボードゲームやUNO、トランプ等々……


時間も忘れて盛り上がっていると、いつの間にか夜中の1時近くになっていた。

何人かアクビをかいてる者も……





「…あら。もうこんな時間でしたか……そろそろお開きにしましょう。」



時計を見た柊先輩の言葉を聞いて、皆が周りの物を片付け始め……






「…それじゃあおやすみ〜」

「…おやすみなさい」

「…おやすみなさいませ」



片付けが終わり各々が挨拶をして、泊まる事になっている部屋に戻っていく。








「…おやすみさ〜ん」

「…おやすみ〜」



2階に来て、同じ階のヒロ、大原さん、上野先輩、小嶋さんに挨拶をしてそれぞれ部屋に入っていき、俺達も部屋に入る為に扉を開けると………





……カチャッ…キイイ…




俺が扉を開けて、先に朋を部屋に入れてから俺も部屋に入り扉を閉める。


遊び疲れたせいか結構、眠気が襲ってきていた。

何も考えないで、朋の後をつけるようにベッドの設置されてる方向に歩き………






「…………あ。」



ベッドの前に来てようやく思い出した。

そう……この2人1組のこの部屋に設置されてるベッドは大きいとはいえ1つだけなのだ……。




2人でベッドの前に並び、沈黙……


わ、忘れていた…ベッド1つなんだよな…どうしよう…?

この前、朋が家に泊まりに来た時、一緒にベッドで寝たけど……

あの時は状況が状況だっただけに一緒に寝てしまったが、今回はそーゆー訳にはいかないよな…


あの時、まだ付き合ってなかったから抑制できたけど、恋人同士の今、一緒に寝るってヤバくないか…?

それに朋の格好……タンクトップにショートパンツとゆー…かなりの薄着だし…


なんか大きいソファーがあるし、俺はそれに寝たほうがいいよな……うん。そーしよう。







「……ねえ……陽。」



「……え!?…あ、何?」



考え事をしていると隣に立ってベッドを見ていた朋が俺をジッと見つめながら声を掛けてきた。






「……自分はソファーで寝るとか……言わない……よね…?」



「……え!?…あ、いや…えっと……」



まるで考えてる事を読まれたかのように、朋に言い当てられ戸惑ってしまう。






………キュッ




「……あ……朋……」



朋は俺のTシャツの裾を右手で摘み、頬を赤く染めながら俯き加減だった顔を上げて………






「………一緒に……寝よ?」



「……………う、うん。」



優しい笑みと吸い込まれるような澄んだ瞳に見つめられ、考えていた事はすっ飛んでしまい、言われた言葉にただ頷くしかできなかった……………






第21話終

海編は次が最後です

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