第20話〜海に行こう③〜
気づけば20話に……
皆で柊先輩の豪華過ぎるプライベートビーチに遊びに来た初日……
「……陽〜気持ち良いね〜♪」
「…本当、最高〜♪」
俺と朋はそれぞれ選んだ浮き輪に掴まりながら、綺麗な海の穏やかな波に揺られて満喫していた。
「……あれ?……ねえ陽……」
「…ん?…何?朋」
「…あの沖の方で…凄い速さで泳いでる人…生徒会長さん…?」
「……え?………………うわ!本当だ!!…速ぁ!!」
遥か沖の方で凄まじい水飛沫を上げながら、泳ぐ人影が……我が校の東雲生徒会長がクロールで泳いでいた。
……あれ?よく見ると何か紐を腰に巻いて、何かを引っ張ってる…?
…あれは浮き輪を装着した柊先輩と晃太先輩?
「…うわあぁぁ〜!!!…み、雅ぃ〜…は、速過ぎるよぉ〜…ひゃあぁぁ〜!!!」
「…み、雅さぁ〜ん!!!……も、もう少し……抑えてぇ〜…」
晃太先輩と柊先輩の悲鳴が遠ざかっていく……
どうやら東雲先輩、2人を引っ張って泳いでるみたいだけど……
それであのスピード……水中オートバイみたいだな…
「……陽……生徒会長さんって……凄いね…」
「……なんか…超人みたい…」
俺達は呆然と目の前の光景を見送った……。
………………
その後も俺達は海での遊びを満喫し続け……
男女2人一組でビーチバレーもしたが、そこでも東雲先輩の超人的な身体能力が発揮され、俺達は全く相手にならなかった。
お昼ご飯も柊先輩が用意してくれていて、ビーフカレーを頂いたが…
明らかに肉のグレードが普通の肉ではなく、凄まじく旨かった。
……そして昼食後、柊先輩の許可をもらい俺と朋はビーチを歩き回っていた。
詳しくは教えてもらえなかったが、ここは柊先輩の家が所有する無人島らしく、大きさは東京ドーム4個分程の大きさらしい。
「…本当に綺麗な海だね〜……ん〜〜風が気持ち良いぃ〜〜♪」
俺は青色の、朋はピンク色のラッシュガードを羽織り、のんびりとビーチを散策中。
……潮風に吹かれ髪を靡かせる朋は、日に照らされキラキラと輝いて見える。
時折座って真っ白な砂を弄ったり貝殻を見付けては嬉しそうにハシャイでいた。
…去年の今頃は、なんかぼけーっとして過ごしてて、何をしていたのかもよく憶えてない……
でも今年は朋と仲直りして…恋人になって…こんな綺麗な海で一緒に過ごせてる……
去年までとは雲泥の差……ああ〜……生きてて良かったぁ〜
幸せを噛み締めながら、ふと周りを見渡すと…俺と朋以外、誰もいない……
海に来てからずっと皆と一緒だったけど、これは……やっと2人きりとゆう状況では…?
こ、これって……キ、キスの……チャンス……?
「………陽、どーしたの?」
「…うぇ!?…あ、な、何が!?」
「……何かニヤニヤしてるから……」
少し前を歩いていた朋が、身体ごと俺の方に向けながら不思議そうな顔をして聞いてきた。
う、いかん…キスを想像して顔がニヤけていたか……
「…あ、いや、えっと……その………と、朋が…楽しそうに笑ってるから……なんか俺も…嬉しくなっちゃって…」
「…………え…あ、そ、そう……えへへ……だって…すっごい楽しいもん♪」
視線をさ迷わせながら、なんとか誤魔化すとハニカんだような笑顔で笑う朋。
…ああ…この笑顔を見ると、本当ほっこりしてくるなぁ…
「…そっか…じゃあやっぱり…来て良かったね…」
「…うん。…でもね………楽しいのは此所に来れたからだけじゃ……ないよ…?」
「………え?」
朋は俺の真っ正面まで歩いて近づき、上目遣いで此方を見ながら右手の人差し指を俺の胸に当てて……
「……陽が……陽が一緒だから……楽しいんだもん……」
「………朋……」
大好きな恋人に、柔らかな笑みと潤んだ瞳で見つめられながら言われた言葉は、心臓を射ぬかれたような衝撃と破壊力だった……
…俺と朋の距離は手を伸ばせば届く位に近く…ふいに無言で見つめ合う……
辺りはとても静かで、俺達以外に誰もいない…そして聴こえてくるのは波の音ばかり……
「………陽…」
「………朋…」
潤んだ瞳で頬を染めた朋が一歩距離を詰め……それと同時に俺はそっと両腕で包み込むように朋を抱き締める。
朋も両手を俺の背中に回して、ギュッと抱き着いてきた。
朋は俺の胸に顔を埋め、俺は朋の首筋に顔を埋める。
朋の匂いと海の香りが鼻腔を抜けていく……
女の子独特の柔らかな感触と共に心音も感じられ、早い鼓動が緊張感も伝えてきた。
「………陽の心臓……凄いドクンドクンって…鳴ってる……」
「……と、朋だって……」
どうやら俺の心臓も早い鼓動を刻んでいたようだ。
お互いの緊張感を感じ合いながら埋めていた顔を離して見つめ合うと………
「………陽ぅ…………ん…」
「……!……」
朋はゆっくりと両の瞼を閉じて、桃色の唇を可愛く突き出す……
それが何を意味するのかは、鈍い俺にもすぐに分かった。
俺は緊張しながらも右手を朋の頬に這わせ、ゆっくり少しずつ、可愛らしい桃色の唇に顔を近づけていき…
お互いの唇が重なりそうな瞬間…………
……ドザザッ!!
「「………え!?」」
突然、後方から何かが倒れるような凄い音が聴こえてきた。
驚いた俺と朋は、眼を開いて音のした方向を振り向いて見ると……
「……いたた……先輩〜…押さないでって……あっ。」
「……あ、えっと……あの〜…てへ♪」
「…え、えっとですね…これは何と申しますか……」
……視線の先にいたのは岩影の辺りから重なるように倒れている、小嶋さんと篠宮先輩と柊先輩だった。
3人は昔のコソドロみたいに頭からタオルをほっかむりし、俺達と視線が合うと気まずそうな感じで挙動不審になっていた。
「……こ、小嶋さんに…先輩達?…何して………………ハッ!?」
一瞬思考がついてこなくて呆然としていたが、抱き合っていたことを思いだしサッと離れて距離を取る俺達。
「…え、えっと…わ、私達の事は気にせず……つ、続きをどうぞ〜」
「……ご、ごめんね〜」
「…わ、私達は…こ、これで失礼しますわ〜」
3人はサッと起き上がると、後退りして逃げて行く。
それを黙って見送っていたら……
「………も、もぉ〜!……莉っちゃんに先輩達〜〜なにやってるんですかぁ〜〜!!!」
「……あ、と…も……………はぁ……」
……朋が顔を真っ赤にしながら俺の方を見る事なく、まるで恥ずかしさを誤魔化すように、逃げて行く3人を追いかけて走って行ってしまった……。
その場に1人残された俺はキスを逃した事と、ド緊張から解放された事で…深い深い溜め息を吐いた。
ああ…もう少しで…キスできたのにぃ……残念……
はぁ〜……またチャンス…くるかなぁ…
全身に潮風を浴びてると火照った身体を鎮めてくれるみたいだったが…
胸の中にはモヤモヤとした想いだけは、消える事なく残り続け…
そんな想いを抱えたまま朋達の後を追い掛けるのだった………
第20話終
もう少し文章力が欲しい




