表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/26

第2話〜雨が教えてくれた想い(朋花パート)〜

今回、初めて女性視点で書きました。

……………難しい



ザアアアァァァ…………






激しい雨が降る中、いつもの通学路を歩き、帰宅する……

今朝、慌てて家を出たので傘を持ってくるのを忘れてしまった。


だけど私は今、傘をさして歩いている。

…彼が……陽が…傘を貸してくれたから…




陽と私は幼なじみで、小さい時からずっと一緒だった。


彼の笑顔は太陽みたいに明るく…彼の笑顔が私は大好きで…

いつも優しく私の心を暖めてくれて…ずっと側に居てくれた。


そんな彼の事が私は大好きで…昔も…今でも…ずっと大好き…

これから先、ずっと…ずっと彼の隣に居られると……思っていたのに……




5年前に……私は…陽に……嫌われてしまった。

それからずっと陽から避けられていて、会話をしていない。


そのまま避けられ続け小学校を卒業…。

中学校も陽と同じ学校だったけど、3年間で同じクラスには1度もなれず、特に接点も無いまま卒業してしまった。


このまま陽と離ればなれになってしまうのは絶対嫌だった。

偶然、陽の志望校を知った私は同じ高校に進学。


久しぶりに陽と同じクラスになれたけど……

いまだに避けられている…。



なんで嫌われてしまったのか、分からない。

原因は私なのかもしれないが、何が原因なのか…私には分からなかった……


私から陽に話掛けようとも思ったけど…

もっと嫌われてしまうのではと思うと……怖くて勇気が出ない……。


もう5年以上も疎遠になってしまった。

陽が隣に居なくなってから…何をしても心から楽しいと思えなくなって、まるで胸の真ん中にポッカリと穴が開いてしまったみたい。




でもさっき…傘を忘れ困っていた私に……陽が…傘を貸してくれた…自分は濡れてしまうのにも関わらず…

少しだけ触れた彼の手からは…昔と同じ暖かさを感じた。


嬉しかった…凄く、凄く嬉しかった…陽が私を気に掛けてくれた事が…

陽の声を聞けたのが……何よりも彼の優しさが嬉しかった。



あぁ…また昔みたいな関係に戻りたい……

陽と喋りたい…大好きな彼の…陽の側に…隣に…居たいよぉ…








〜翌朝〜






「……はぁ〜…ふぅ〜…」





自分の家の塀に寄り掛かり、深い深呼吸をして、陽が出てくるのを待っていた。

緊張で胸がドキドキと高鳴っている…

昨日、陽から借りた傘を返す為に陽が出てくるのを待っているのだけど…





遅いなぁ…どうしたんだろう?…そろそろ学校行かないと遅刻しちゃう…

すぐ隣の家の…2階の陽の部屋に目を向けると、窓のカーテンは閉まっていた。




あ。…ひょっとしてもう学校に登校してるのかな?

陽がいつも何時に家を出てるのか知らないから…家出るのが遅かったのかも。




遅刻しちゃうし、私も学校に行こう…

で…陽に会ったら傘を返して…ちゃんとお礼を言おう。






〜学校〜





学校に到着し、4階の私達の教室、1-Bに着き扉を開ける。





ガララッ……




「…あ、百瀬さんおはよぉ〜」「…おはよ〜」「…はよぉ〜」



教室に入るとクラスメイトから朝の挨拶を受けて、私も挨拶を返しながら、横目で陽の席の方に目を向けると、彼は見当たらない。

あれ…いない…どうしたんだろ…おトイレかなぁ…?


教室内をキョロキョロと見回しながら自分の席に着くと……





「…おっはよ〜朋。」

「…朋ちゃん、おはよぉ〜」



2人の女生徒が私の席に近くに来て、朝の挨拶をしてきた。




「…あ、優ちゃん、莉っちゃんおはよ〜」



この2人は私の中学時代からの大の仲良し。

最初に声を掛けてきた娘が大原優子おおはらゆうこちゃん。

背が高く活発で私達のリーダーみたいな存在。

いつもポニーテールにしている。


その隣にいるのが小嶋莉子こじまりこちゃん。

少し天然ぽいけど、色んな事に鋭く、的確なツッコミを入れてくる。

ショートヘアーで前髪をいつもヘアピンで止めている。

吹奏楽部に所属していて、部の先輩の中に彼氏がいる幸せ者。



朝の恒例、2人との談笑が始まった。

……傘は放課後に返そう。







……………






……私はようやく異変に気づいた……

朝のHRの時間になり先生が教室に入ってきて、みんなが席に戻っていく時に、何気無く陽の席に目を向けると、そこに陽の姿が無かった。



教室の前側に席がある私は、優ちゃん莉っちゃんと会話中、ずっと黒板方向を向いていた。

後方の陽の席に目を向けずにいたから先生が来るまで気づかなかった…。




陽が…いない?……え?どうして…?学校に来ていないの?…お休み?


私が困惑している内に、先生との朝の挨拶が終わり、HRが始まる直前に……




「…あ〜…さっき千堂から連絡があってな。…風邪をひいたらしく今日は休みだ。……多分昨日の雨にやられたのかもな……みんなも気をつけるよーに…。」



私達のクラスの担任教師、辻本瞳つじもとひとみ先生が言った一言に教室内がざわつく中、それを聴いた私は……胸を締めつけられるような思いだった…。







……授業中何度となく、いつも彼が座っている席に目を向けると其所に彼は…陽は居ない。


今朝、先生から陽が風邪ひいたというのを聞いてから私の気持ちはずっと重かった……




今頃、陽は風邪で苦しんでいるのかな…

ごめんね陽…私に傘を貸したからだよね?…ごめんね……








キ〜ン〜コ〜ン〜カ〜ン〜コ〜ン〜♪♪♪






放課後になり私は急いで帰り支度を始めた…。

ホントは凄く怖いけど…彼の家は今、ご両親が海外にいるから家に1人きり。


…お見舞いに行きたい……ううん行きたいじゃない……行く!







「……朋ぉ〜帰ろぉ〜♪」



帰り支度を済ませた優ちゃんと莉っちゃんが声を掛けてきた。

…そっか今日、莉っちゃん部活休みって言ってたから3人でクレープ屋さんに行こうって昨日、話してたんだっけ。





「……優ちゃん、莉っちゃん、ゴメンね…今日、ちょっとクレープ屋さんに行けなくなっちゃった…」



「……えぇ〜?そうなのぉ〜?…残念〜」



「……どうしたの?…なにか用事?」




「……わ、私…これから陽の…お見舞いに行きたい。」



私は正直に2人の目を見て本心を話した。

…実は優ちゃんと、陽のお友達の中尾浩くんは私と陽みたいな幼なじみ。

中尾くん経由で優ちゃん達も私達の関係性を知っていた。





「…朋。……そっか。分かった…行ってきな。」



「…朋ちゃん、頑張って♪」



「…優ちゃん、莉っちゃん、ありがと………じゃあ行ってくる!」



2人に見送られながら、私は急いで教室を出た。


…階段を下り、下駄箱で靴に履き替えると校舎を走って出ていく。







「…はぁ…はぁ…はぁ…」



いつも歩く通学路の道を、急いで掛け抜けて行く。

急かす気持ちが私を走らせる。





陽…今どうしてる?…風邪ひいてお家で1人ぼっち…

心細くないかな…?体調大丈夫かな…?


傘、ありがとう…凄く嬉しかった…

ぶっきらぼうで、あまり目を向けてはくれなかったけど…嬉しかったよ…


私…嫌われてるかもしれない…でも…でも…陽に……会いたい。

……待ってて…陽!








「はぁ…はぁ…ふぅ…」





つ、着いた陽の家……って言っても私ん家の隣なんだけど…



あ…お見舞いになんか買ってきたほうが良かったかなぁ…

てゅーか…陽、お家に入れてくれるかなぁ…

勢いで来ちゃったけど…もし入れてくれなかったら………くすん




…ううん。今は…とりあえず、お礼だけでも……

こ、この傘も返さないといけないし…



私は陽ん家の玄関の前まで、移動し深呼吸した後でインターホンを押した。





ピ〜ンポ〜ン〜♪♪





「……………」





……あ、あれ?も、もう一回。





ピ〜ンポ〜ン〜♪♪





……やっぱり出てこない…居ないのかな…?それとも寝てるのかな…?


どーしよう…………あれ?



よく見ると玄関の扉が少し開いてる…や、やっぱり居るのかな…?

最初、躊躇したけど思いきってドアノブに手を掛けて扉を開いた。





ギイイ…




「……お、おじゃましま〜す」



金属の擦れる音と共に扉を開け、一応、声を掛けながら玄関へと入る…

中は照明が点いてなく、静かだった…






「…ご、ごめんくださぁ〜い……」



思い切って割りと大きな声で呼び掛けたが、やはり返答は無い。

…やっぱり居ないのかな…?




玄関から見えるのは右側に2階への階段。

玄関入って、すぐ左の扉は確かリビング……だったよね?

…あ、扉の隙間から光が見える…明かりが点いてるみたい。





「…お、おじゃましまぁ〜す……」



私は声を掛けながら家に上がって、リビングへの扉をそっと開いた…。





…カチャッ…



「……こ、こんにち……わ」



扉が開いた出入口からそっとリビング内を覗いたが誰も居ない。


リビングに入って周りを見渡しながら奥に進んでいき、リビングと連なったキッチンに歩を進めた…。





キッチンテーブルの上に、食べ掛けのカップ麺と風邪薬が置いてあるのに気づいた。



え?…陽、ひょっとして……これ食べてたの…?

カップ麺のプラスチック容器を手に取り中身を見ると、半分以上残している。

もの凄く胸が締めつけられ、切ない気持ちになった。




陽…風邪ひいてるならもっと栄養のある物とか…消化にいい物食べないと…ダメなのに……


そっか…今、1人なんだもんね…風邪ひいてるから、御飯も作れないんだ…





『……ッ………ッ………』



………え?今、微かにだけど……確かに何か聴こえた。


私はリビングを出て階段の方へと向かった…すると…





『………げほっ……げほっ……』



2階から咳き込む声が…陽の声だ…いた。

やっぱり寝ていたんだ。




私は決心し階段を昇る…。

2階へと近づく度に、陽の咳き込む声が大きく聴こえてきた。


陽の苦しそうな声を聞くと辛くて堪らない…。






2階に着いて陽の部屋の扉の前に立ち…




…コンコン…カチャッ…




「…と、朋花です……」



2回ノックした後、ドアノブを回して扉を開けながら、変によそよそしい感じで声を掛けながら、部屋を覗くと…





明かりは点いてなく、ベッドに陽が寝ていた。

私は部屋に入り、ゆっくりベッドに近づいて陽の顔を覗き込むと……




「…は、陽……?」



「…はぁ…げほっ…げほっ…」



どうやら寝ているみたいだけど……

顔がほんのり赤く、咳き込み苦しそうだった。

そっと陽のおでこに手を当てると……熱い…熱もあるみたい。



本来なら私がこうなっていたかもしれない。

私は申し訳なさで泣きそうになってしまった。





ぐすっ…泣いてる場合じゃない…何か熱冷ましシートか濡れたタオルを当ててあげないと…

それと…お粥か何か作ってあげよう。


一度、部屋を出て行動を開始した。







…………………





「…はぁ…はぁ…げほっ…」



「……陽ぅ……」



私は陽が寝ている、ベッドの脇に座って、彼の首筋の汗を拭っていた。

陽ん家に来てから1時間位が過ぎたが陽はまだ目を覚まさない。


熱に魘されているみたい…


とりあえず熱冷ましシートをおでこに貼ってあげて、汗も拭ける範囲は拭いている…。

お粥も作ったけど、陽が起きないと…無理に起こすのも可哀想だし……。




あ、タオル汗を吸い込んでビッショリになっちゃった…新しいのを持ってこよう…。


立ち上がり部屋を出ようとした時だった……






「…はぁ……と、朋……げほっ…朋ぉ……はぁ…」



「…………え!?…は、陽…?お、起きたの?」



陽に呼ばれたのに気づいて、再びベッドに近づいて顔を見たが、やっぱり寝ているみたいだ…




「……ね、寝言…?」



陽は夢を見ているのか、私の名前を繰り返し呼んでいる。



「…どうしたの陽?…私ならここにいるよ…?」



彼のあまりにも苦しそうな表情に、思わず陽の右手を両手で握って、安心させようと声を掛けてしまった。






「……朋……ごめん……ごめんね…」



「…………え?」





「…ごめん…ね……好きじゃ…ないなんて……嫌い…なんて…言って……ごめん……朋……泣かせ…て……ごめん…ね…」



…そして陽の両目からはどんどん…どんどん涙が溢れて…流れ出していた。






「…………は……る………」




それを見ていた私の視界はだんだんと霞んできて……

陽と同じように、両眼に涙が溜まり、瞬きしたと同時に流れ落ちた。





「……ぐすっ……は、陽ぅ………うぅっ……陽ぅ……くすん」



私は陽の謝罪の言葉を…本心を聞いて……彼の涙を見て………涙が止まらなかった。



嬉しいハズなのに……一番聞きたい事を聞けて…嬉しいハズなのに……涙が……止まらなかった……………







第2話終

女性視点って慣れないことしてみたけど、おかしくなかったか不安だらけですwww

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ