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第12話〜混乱・脱兎・告白〜

この作品、姪原作で本人が嫌ってるのか恋のライバルみたいのは基本的には登場しません。

朋の両親が1週間の旅行に行く事になった初日、いきなり朋が鍵を忘れてウチに泊まる事になった……


……が、泊まった日もその後の2人きりの土日も特に何事も無く……

せっかくの2人きりなのにチャンスを活かせず、告白のこの字もないまま月曜日になってしまった………。








〜放課後の教室〜





「…告白できなかったぁ!?………2人きりだったのにか?」



「…………うぐ……」




月曜日の放課後……今日は朋と大原さんが日直。

その2人は今は職員室に行っている。

他の生徒は皆帰って教室内は朋達を待っている俺とヒロだけだった…。



その途中ヒロが俺と朋の近況を聞いてきた。


豪雨の時のラッキースケベイベントは隠して、2人きりだった事だけを相談がてら話していた。






「…なにやってんだよ陽〜…そんな大チャンスをみすみす逃してどーすんだよ〜…」


自分でも分かってるだけに、他人に言われるとショックがデカいな………





「…じ、自分でも…チャンスって分かっていたんだけど………な、なんか朋と2人になると…その時間が楽しくて、告白の事が頭から抜けちゃうってゅーか……」



「……ん〜……そっか……お前らって5年の空白があるからな……2人になると楽しくなるって気持ちも……分からなくもないけどな……」



椅子に座りながらヒロは真剣に聴いてくれていた。


……あれから土日もずっと2人で過ごしていたが、朋と一緒に何かをするだけで楽しくなってしまい、時間が過ぎるのを忘れ、気がつけば1日が終わるという始末……





「……こんな調子で………ホントに告白なんて……できるのかな……はあぁぁ〜……」


目の前の机に顔を突っ伏せながら、深い深い溜め息を吐いた。





「…陽、あのよ『〜♪♪』…あ、ちょっとゴメン………んっと」



何かを言おうとしたヒロのポケットから着信音が……

話を止めてズボンのポケットから携帯を開いている。




「………メール?」


「……ああ。優子からだ。」



俺が聞くと、ヒロへのメールは朋と一緒に職員室に行っている大原さんだったみたいだ。




「……なんだって?……そろそろ戻ってくるって?」



「……ん?ああ…そう……だ……………………」



「……ん?……どしたヒロ?」



ヒロは急に、固まったかのように止まり、そこからニヤ〜ッと笑った後、右手に持った携帯を素早く操作している。





「……ど、どうしたんだよヒロ?……てか2人は?」



「…あ、ああ…え〜っと……2人な、まだ掛かりそうだから、もうちょい待っててくれってさ。」



ニヤけながら携帯を操作しているヒロに朋達の事を聞くと、まだ戻ってこないとの事。

ん〜…随分遅いなぁ……




〜♪♪♪



「…お。………うし。」



「……ん?またメール?」



ヒロの方からまた着信音が聴こえ目線を向けると、また携帯を弄りながらニヤニヤしているヒロ。




「…あ、ああ……いやなんでもない…」


「………?」


ニヤニヤしながら慌てて携帯をポケットにしまうヒロ。

なんか怪しい…?







「…なあ陽………お前さ……もう百瀬のこと…諦めたら?」



「……な!?…なんだよいきなり!?」



ヒロが俺の方に向き直ると、突然マジトーンで放った言葉に俺は驚いてしまった。




「…だってよぉ〜…せっかくのチャンスに告白もしないって…………結局、お前の中での百瀬の存在って、ただの幼なじみにしか過ぎないんじゃねーの?」




……ガタンッ!



「…そ、そんな事はない!!!」


俺はヒロの言葉にカッとなり、椅子から立ち上がって声を荒げた。




「…お、俺は…朋は…朋の事は…幼なじみ以上の存在に想ってる!!……想ってるけど……」



「……けど?」



「…時々思うんだよ…朋に辛い想いをさせた俺なんかが…そんな風に朋を想う資格……あるのか…って…」


今が楽しい分、5年の空白期間がどれだけ辛く重かったのか…

実感してしまう……





「…陽、お前さ…そんな事ばかり言ったり思ったりしてるけど……ただ単に…百瀬に対する想いに自信が無いだけじゃね?」



「………な!?」



「……中途半端に想う位なら、他の誰かに百瀬を任せた方が……」



「………ふっっざけんな!!!!!」


俺は気がつけば自分でも驚く位の大声で叫んでいた。






「……俺は……俺は他の誰よりも…朋の事は大事に想っている!!…それに……誰よりも朋の事…朋の事が……大好きだ!!」



「………陽。」



「…朋と疎遠になってから、朋の隣に他の男が居たらって考えただけで苦しかった………けどやっと仲直りできて……今度こそ……ずっと…ずっと朋の隣にいるって…………大好きな朋の側にいるって決めたんだ!!………俺は朋の事を中途半端に考えたりなんか………絶対にしない!!!!」


こんな大声で朋に対する想いをハッキリ口にしたのは初めてかもしれない。

自分自身で言った言葉だったが……

どこかスッキリした気もした…






「……ぷっ……くくっ……わ、分かった……悪かったよ陽。…………じゃあオレ帰るわ。」



「…………はっ????」



さっきまでマジトーンモードだったヒロが急に笑ったかと思ったら帰ると言い出し、自分の鞄と大原さんの鞄を持って、開いたままの教室の出入口に歩いて行ってしまう。





「…ヒ、ヒロ?……おい…なんで急に……てかなんで大原さんの鞄まで……?」


ヒロが教室の出入口から廊下に出て、俺の位置から姿が見えなくなった時だった……





「……ほれ、優子。……鞄」


「……さんきゅ…じゃあね〜朋♪………がんばれ♪」



「………!!!???」



廊下側の方からヒロと大原さんの会話が……


え!?あれ!?今のは大原さんの声……だよね!?

あれ!?さっきヒロ、確かまだ戻って来ないみたいな事を言ってなかったっけ!?


俺はイヤな予感を感じつつも、恐る恐る教室の出入口まで歩き、そっと廊下側に出てみる……







「……………は、陽。」



「……??!!!………と、朋!!??」



教室から廊下に出て、すぐの所に朋が立っていた。

顔を真っ赤にし、両手の指を遊ばせるようにモジモジしながら、上目遣いで俺を見つめている。


ヒロと大原さんは既に帰ったのか、朋以外に廊下には誰もいなかった。








「……えっと……朋さん……」


「……は、はい……」


「……いつから此所に…?」


「……え、えっと……な、なんか…中尾くんが…真剣な口調で喋り出した位から……かな……」



それって……ヒロが2回目のメールが着てその後、急に態度が変わった時位……


ってことは……朋、割りと最初の方から居たって事で……さっきまでの会話を全部朋に聴かれてた……って事で…


あれ……俺……さっき……デカい声で………朋の事を………大好きって……叫んでたよ……ね…?



頭の中で、さっきのヒロとの会話のやりとりを整理しつつ、目の前の朋に再び視線を向けると……





「………っ!!………はぅ…」



俺と目が合うと赤い顔を更に赤くして俯き、チラチラと上目遣いで視線を送ってくる。


この反応……間違いなく……さっきの………聴かれてたーーーーーーーー!!!!


全身が熱くなっていき、心臓があり得ない位に早く鼓動し始めたのが分かった。

そして頭の中は混乱していた……



な、な、なんてこったい……まだ……心の準備が……

てか……これは……ヒロにハメられた……


い、いや……それより……ど、どうしよう?好きって聴かれた?告白?こんないきなり?

シチュエーションも何もなく?こんな急に?どうしよう?どうしよう?………ホント……どうするーーーーー!!!???






「…あ、あの……陽…?」



頭の許容範囲がオーバーヒート寸前の俺は…………

その場で反転し、朋に対して背を向けると……






……ダッ!!!!




「…え!?…は、陽!?」



その場から脱兎の如く、ダッシュして逃げ出していた。




「…ご、ごめん!朋!……少し冷静になる時間をくださいぃ〜……」


朋から逃げるように走りながら理由を叫んでいた。



とにかく一端落ち着きたい!!……今は…なんか……よく……分からない状態だ……

こんなんじゃ……ちゃんとした告白なんて……できやしない…

どこかで……冷静に……なってから……






「………陽ぅ〜!……待ってぇ〜…!」



「……!!?……え…と、朋…!?」


聴き慣れた声に呼ばれ、走りながら後ろを振り向くと朋が走って追い掛けて来ていた。



ええ!?…ちょっと……まさか追い掛けて来るなんて……これは予想外!!!





「…はっ…はっ…と、朋〜……す、少し……ま、待ってほしいんだけど〜…」



「…はぁっ…はぁっ…も、もう私聴いちゃったも〜ん……待てないよぉ〜……てゅーか…ま、待ってぇ〜…」



誰も居ない放課後の学校の廊下にて行われてる、奇妙な追い掛けっこしながらの会話。


俺は全力で走ってるつもりなのだが、混乱状態の為か上手く力が入らず、中途半端な走りになっていた。

……なので、徐々に距離が詰まってきて……


もう一度、後ろを振り向くと…

………ああ!?ち、近い!!…つ、捕まる………てゅーかその前に……おぱーいが…めっちゃ揺れてるぅ!!



い、いかん…捕まる以前に走るのを止めさせないと…

今は…周りに誰も居ないとはいえ…あ、あんな…おぱーい揺れてる所を見られでもしたら……





「……はっ…はっ…と、朋〜……ろ、廊下は…走っては……いけませ〜ん……」


「…はっ…はっ…は、陽も……は、走ってるよぉ〜…」


「…ご、ごもっともぉ〜…」



ああ〜…もう俺は何をやってるんだぁ〜!?

何をしたいのか…何をやりたいのか…もうよく分からなくなってきたぁ〜


走りながら、冷静になるどころか迷走しだしている……

そんな状況に陥りそうな時だった………






…………ドタッ!!




「………きゃっ!?」



「…………えっ!?……朋!?」



鈍い音と微かな悲鳴のような声に振り向くと……

転んだのか躓いたのか…朋が女の子座りのような体勢で廊下にヘタリ込んでいた。





「………朋!」


それを見て走りを止めて、慌てて引き返し朋に駆け寄る。




「……朋、大丈夫!?…転んだの!?……どこか怪我してない?」



ヘタリ込む朋に合わせるよう膝を付いて、目線の高さを合わせて朋の様子を見ようとしたら……





………ガシッ!……ギュッ




「………え?」



「…はぁ〜……やっと……陽、捕まえた……」



俺が身体を近づけた瞬間、両腕を素早く俺の腰の辺りに回してギュッとしがみ着いてきた。

そして俺の胸に顔を埋めて、背中の方まで両腕を回し更に強く抱き着く朋。



しまった!?……これは…子供の頃、朋と鬼ごっこした時にも使われた手だ!!

転んだフリをして俺を捕まえるってゆー……






「……陽……逃げちゃヤダよぉ……私……ちゃんと聞きたい………陽の………気持ち………」



「……と、朋………」



俺の胸に顔を埋めてる朋が、そこから顔を上げて切なげな声で言った言葉に……

俺の中のモヤモヤが……混乱していた心が……晴れていくみたいだった…。



俺はさっきから自分の事しか……考えてなかった。

朋の事を考えて行動してるつもりが自分の事ばかり……


朋はシチュエーションどうのよりも…答えを求めてるんだ…

今……俺からの……答えを……


それなのに……俺が……逃げてどーすんだよ…






「…はぁ……ごめん……朋……逃げたりして……」


「………陽……」



抱き着いて俺の胸の辺りから見上げている朋……その表情を覗き込むと、どこか不安気にも見えた……

俺はその不安を取り除くように頭を優しく撫でてあげる。

そして俺は胸の中で決心して………






「……朋。……俺達ってさ…産まれた時からずっと一緒だったよね……」



「……え?……う、うん……」



「…産まれた生年月日も……病院も、時間までほとんど同じって聴いた時にはビックリしたよね…」



「…ふふっ……うん。……ビックリしたよね……」


母さんや朋のおばさんからこの話を聞いた時には冗談かと思ったっけ……





「……ずっと一緒にいられるハズだったのに………俺のせいで……朋と……5年以上も疎遠になっちゃって………」



「……あっ………は、陽……そ、それは……もう……」



朋が俺を見上げながら淋しげな表情に顔を曇らせて、声を詰まらせている。




「…あの時の事は本当に……後悔している……………でも……あの時なんで………朋にあんな酷い事を言ってしまったのか……最近、考えるようになって……なんとなく分かったんだ……」



「……え?」



「……図星……だったんだ…」



「………図星…?…図星って?」



俺が苦笑いしながら言った答えに朋はキョトンとしている。





「…あの時さ……クラスメイトの男子達にひやかされたじゃん……チューしろーとか…ケッコンしろーとかってさ…」



「…う、うん…言われた…」



「……あれがね……図星だった…」



「………………え?…図星って…え?……ええ!?」



俺に抱き着いてた朋がその言葉を聞いて顔を赤くし狼狽しだしたので、その背中に両腕を回しギュッと抱き寄せる。





「……あの時位からずっと思ってた……朋は大事な幼なじみと同時に………女の子で…………その、キ、キス…してみたいな〜とか……いずれは……大人になったら……お嫁さんにして……結婚したいなぁ〜って……ずっと思ってた……いや、今でも…思ってる…」



「………あ……あ……ああ………は、陽ぅ……」



俺の腕の中に納まる朋の声が、少しずつ涙声に変わっていく……


俺は心の中で大きな深呼吸をしてから、抱き締めていた朋を少し離して、涙が溜まりだしている両の瞳をジッと見据えて……







「………朋………好きだよ。」



「………は………る……」



「……好き……幼なじみとしても……女の子としても……朋が好き……大好きです。」



長い間、胸に秘めていた想いを…朋に対する本当の想いを……初めて朋に……告げた。


優しい笑みで…優しい声で…大事な人に…大好きな女の子に……人生で初めての……告白……




「…は、陽ぅ〜…ひっく……ぇえ〜ん……ぐすっ…陽ぅ〜…」



両眼に溜めていた涙が頬を伝って流れ出し、顔をくしゃくしゃにして泣きながら、再び両腕を俺の背中に回して抱き着く朋。


そんな朋の背中に俺も両腕を回し、優しく撫でてあげる……




「…ぇえ〜ん…陽ぅ〜…嬉しいぃ……わ、私……私も……陽が……好き……ずっと…ずっと……昔も、今も…陽が…大好きだったんだからぁ……ふえ〜ん……」



「…ほんと?……ぐすっ…ふふっ……嬉しい…」


いつの間にか俺の眼からも涙が流れ出していた。

優しく背中を撫でながら…





「……朋……これからは……幼なじみとしてじゃなく………恋人として………俺の隣に……側に……いてください。」



「…………はい。……ぇえ〜ん……陽ぅ…大好きぃ……」



「……俺も大好きだよ……朋……ぐすっ」



胸の中で子供のように泣きながら抱き着く女の子は……

一番最初にできたお友達……幼なじみと呼ばれる位に……長い長い付き合いの中で……亀裂が入り疎遠になってしまう時期があったけど……


もう一度…昔のような関係に戻ってから……遠回りにはなったけれど……ようやく……本当の想いを告げる事ができた…

そして同じように…俺の事を好きでいてくれた……。


ありがとう朋……こんな俺を……君を哀しませていた俺を……ずっと…好きでいてくれて…ありがとう。


長い長い関係の中で……色々あったけど………俺達は今日………………恋人同士になった……。







第12話終

はい。ようやく告白です。

普通に告白だと序盤の謝罪とかぶりそうなので、当時姪とかなり話し合い、こんな感じにwww

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