へい、ブラザー。あなたの友達の顔はドストライクであります。
「おーぃ、帰ったぞー」
玄関からお兄ちゃんの声が聞こえた。
それと同時に別の声も響いた。
「おじゃまします」
どうやらお兄ちゃんはお友達を連れてきたようだ。
そのお友達さんはなんと言うか爽やかなイケメンさんだった。私と兄は目立つところがない平平凡凡な顔立ちであるがゆえ「すむ世界違うくない?」とついつい本人がいる前でこぼしてしまった。
「うるせぇブス」と、お兄ちゃんにいわれてハッとした。お前もや。
お友達さんが帰ってついついお兄ちゃんになんで仲良くなったの、とか名前は、とかなんだか見た時からトキメキがとまらない、これ恋?ねぇねぇねぇ!!!と話してたらお兄ちゃんがブチ切れて私の頭を鷲掴んでいった。
「うるせぇブス!俺は聖徳太子じゃねぇんだよ!わかるな?わからんのか!ブス」
「おぅ。痛いぜマイ・ブラザー」
「つまり一気にしゃべるな。答えて欲しければな!!」
「アイアイサー!!」
お兄ちゃんのいうこと絶対な私は鷲掴みされている頭を頑張って縦に降った。
「んで、なにがききたいんだよ」
私の頭から手を外しソファーに寝転がり漫画を読みだす。
全くこれっぽっちも話を聞く気ゼロな姿勢に対して私は床に正座である。
これがわが家、大原家のカースト制度の序列である。我が家で一番下っ端は私。何事にもYESしか答えれない私。つまり、そういうことだ。
「お兄ちゃんの今日のお友達さんのなまえは、、、」
「小川」
小川さんだと!!!素敵。素敵。素敵。
「おい、声漏れてんぞブス。キモ」
「実は小川さんに恋をしてしまったようでして。もうね、顔からしてドストライク!!!!小さい顔、整ったパーツ、高身長、すべて!好み!!」
「お前さぁ、顔ってどーなん。顔って。全くこれっぽっちも誠意がねぇな」
「お前もな」
「ぁあ?」
「すみません」
悲しきかな。全くこれっぽっちも誠意のない奴に言われても言い返せない私。これがわが家の底辺に属するYESマン大原咲子である。
そして、一切こっちに目線をよこさず人をブスブスとブス呼ばわりしてくるのはわが家で二番目(一番はお母様)に権力をお持ちになられる我が兄上、大原定春。彼の顔も大概私とわからん平凡なくせに人を貶めるのである。
「んで、何したいの」
「なんて言いますか、未来の旦那になってくれたら私の人生パラダイスっていうか」
「顔だけが良くて良いのか」
「とりあえずは。恋だの愛だの一日では育たんよ。まずはお友達になれたら嬉しいなと。なんかさ、性格はいいと思うんだよね。挨拶とか礼儀正しかったし。さっき帰る時、さようならて言えば微笑んでもうそれは王子の微笑みでさようならって言ってくれて死ぬかと思った」
「じゃぁ、しね」
「生きる!」
「外面だけごいい奴なんて他にもいるだろ。身の丈にあった奴にしろ」
「でも、こんなお兄ちゃんと友達なんでしょ。つまりお兄ちゃんと身の丈があってるなら私ともあってるということになる。しかもお兄ちゃんが家に連れてくるぐらい中がいいってことはさ、すごく信用できる人だと思うんだよね」
お兄ちゃんは漫画から目をはなしてこっちを見た。
見下されてる感半端ない。
お兄ちゃんは私と一緒で割と警戒心が強くなかなか心を人に開けない。多分割とそういう人は多いいのかもしれないけど。
そもそもこんなお兄ちゃんが仲良くなれるのだ。素晴らしく神に近いということで間違いないな。
「恋人いるなら、まぁ、わかれるまで待つけどさ」
「待つなよ」
お兄ちゃんはソファーに座り直して私を見下した。
私は姿勢を正す。
「あいつさ、女が苦手らしくて」
「素敵!昔何かあったとか!?」
「たんに男家系で女の人との接し方がわからないとからしいけど」
「モテそうなのにね!」
そう言った途端お兄ちゃんは青褪めた。私何か禁止ワード言ったかな?と首を傾げる。
「最近さ、告られても興味ないとか断って女になびかず俺とばかりつるむせいで、その、つまり、あの」
「え、もしかして」
「いや、断じてそんな事実はない!」
「まだなにもいってないよ」
「、、、、。つまり、これもいい機会だ。お前のその気持ち協力してやろう」
「うそ!それは真か兄上!」
「うむ。いい加減俺も彼女が欲しい。あいつのせいで俺まで腐女子の餌食にされている」
「平凡うけですか」
「いや、平凡せめだ」
「なんでそのワード理解出来てるのだ兄上」
「お前もな」
かくしてお兄ちゃんと一緒にお兄ちゃんの友達の小川さんを攻略する事になった。