炎陣魔法
「どうせ2人とも復習だ何とか言って、俺にも練習させる気だろ?」
「まぁな。でも学校の復讐するのは本当だぜ。なぁウィザ?」
「そうだよ。私たちはピスと違って苦手分野があるんだからそれをすこしでも直さないと」
「だから、おれたちのをみてどこがダメなのか指摘してくれよ」
「……わかったよ、でも見るだけだからな」
ピスがそういうとソドとウィザの2人は満面の笑みでうなずいた。
「よし、じゃあまずは俺の苦手な「魔術」からだな」
3人ともさっきささっと自分の部屋に戻って自分たちの愛用している武器を持ちだしていた。ソドの獲物は双剣だ。彼の性格を反映して華やかな武器だ。
この世界では剣と呼ばれるものは多数ある。そもそも「剣」は概念としての言葉なので武器であれば、なんでもいい。ウィザの「剣」は短槍、ピスの「剣」は棍となっている。そして「剣」は魔法を使用する際の「杖」としても用いる。ソドの場合は2つの剣を胸の前で合わせ刃を1つに重ねることが魔法を行使する姿勢となっている。
「ウィザ、今日の「魔術」の授業ってなんだったっけ?」
「それも忘れちゃったの、ピス? あなた、「魔術」の授業はちゃんといたじゃない。炎陣魔法よ。」
「あ、思い出した」
ウィザは呆れてため息をつく。そしてソドの方へ向き直った。その間にもソドは集中して魔力を体内にためている。
だんだん体全体が光り始めた。やがて色が白から燃えるような赤に色を変えた。輝きも体全体から双剣の方へと集まりだし一段と輝きを増す。
次の瞬間ソドが目を見開いて双剣に集まった魔力を一気に放出する。するとソドの周りに円を描くように火柱が出来上がった。
……出来上がったはいいが、3人が予想をしていたよりも炎陣の大きさは小さく火柱はソドの膝にも届いていなかった。できた炎がこころなしか哀しげにチロチロと燃えていた。
そう、ソドは剣術は上手くても魔術が苦手なのだった。
「あぁ! やっぱできねぇ!」
「うーん、魔法を発動するまでは比較的順調にいってたのにねぇ」
「そうだな、問題は魔力をうまく外に放出できてないからか……」
「それとも、あれじゃない? うまく外のマナにつなぐことができなかったとか」
ピスとウィザが熱心に語り始める。ウィザはともかくピスもなんだかんだ魔剣術は好きなのだ、あの癖さえなければ。
なんだか蚊帳の外に置かれた気がして寂しくなったソドは慌てて炎を消し、2人の間に割って入った。
長い議論の末、3人が出した結論は最初にピスが言ったように、体の魔力を剣に集めた後魔力を放出するタイミングをもっと溜めて遅らせるということだった。
「んじゃぁ、ウィザがお手本見せてくれよ」
これはソドがへそを曲げたわけではなく、純粋にウィザの動きを見ればコツがつかめるかもしれないと思ったから言ったのである。
「わかったわ。じゃあやるね」
するとウィザは座ったまま槍を地面につき立てた。一瞬体が光ったかと思うと赤く輝いたと視認するよりも前に体から巨大な魔力が放出されるのを肌で感じた。次の瞬間ウィザの5mほど先に巨大な火柱が上がる。ソドのものとは比較にならないほど巨大で周りの木々よりもはるかに高くメラメラと燃えた。しかもよく見ると炎陣は丸という単純な形ではなく、五芒星を描いていた。
「すげぇ……」
ソドが思わず出てしまったというかんじで感嘆の声を出した。