親友のソドとウィザ
3人は物心ついた時からずっと一緒だった。ピスとソドはこのルツボ村で生まれウィザも生まれて間もないころ家族と一緒にこの村に移り住んできた。3人の母親がともにエルフ種だったのでよくご飯を一緒にし、家もすぐ近くだったこともあって仲良く過ごすようになった。最初は接点のなかった父親の方も母親たちが井戸端会議をして長いおしゃべりをしている間、ちょくちょく交流をし出して3人とも種族が違うのに気が合ったのか一緒にいるい時間が長くなっていった。
さて、三人は尖った耳と整った顔立ちというエルフ種特有の性質以外ではてんでバラバラな容姿なのだが、これは父親の種族の性質も色濃く受け継いでいるからという点が大きい。ここで3人の家系と種族を紹介しておこう。
まずはソド。彼の父親はドワーフである。あなた方読者の認識からすればドワーフというものは土の中に住み、背が低く、守銭奴で醜いというのが一般論だろうがこの世界では背が低いという点でしかあなた方とは認識を同にしない。土の中に住む多くも一定数存在するが大半のドワーフは地上に住み、また性格も誠実なものが多い。鍛冶を主な仕事にしていて背が低いということを除けば人間とそう対して違いはない。よってエルフとドワーフという組み合わせも少数ではあるが常に一定数存在するのである。
ソドは金髪に尖った耳、整った顔立ちは母親譲りだが、男性的な顔に土色の目、そしてなにより低い身長が父親から受け継いでいた。
性格は活発で猪突猛進型、いったんこうと決めればなかなか方針を決めない頑固だが仲間思いでもあるため、ピスやウィザに迷惑をかけるとなればちゃんと行動を改める誠実さはオーク種の混血であることが現れている。
ウィザはエルフの母とアルラウネの父というこの世界でもかなり珍しい混血だ。そもそもこの世界では以前から人間と友好的であったエルフやオークとは違い、1000年前の時点ではアルラウネは魔王に与する種族であった。混血化が進んでいる現在でもアルラウネ種は場合によっては迫害される存在でもある。それでもこの村に移り住んできたウィザの父親が村に溶け込めたのは、ひとえに彼の性格がよく、気が利き、そしてなによりイケメンだったことだろう。アルラウネ種は男女ともにエルフ種同様顔が整っていて妖艶であるのだが、ウィザの父親はその中でも群を抜いて美形だった。それはエルフの母親にしても同じことで移り住んできた当初は変わった組み合わせとアルラウネということで煙たがられていたが、ピスとソドの両親との交流が始まったことと、夫婦そろって美形であったため父兄の間で人気が出るのにそう時間はかからなかった。
両親がともに絶世の美女、美男子ということでその血を引くウィザも美少女であった。外見は尖った耳、長身である点はエルフ種の特徴だが碧髪・碧眼(ほんとに緑色)でアルラウネ種である父からも性質を受け継いでいる。その上、妖艶なアルラウネと清楚なエルフの雰囲気すら兼ね備えていて、抜群のプロモーションも相まって大人の色香をすでに出していた。なので同世代からの人気はすさまじい。これはピスやソドも例外ではなく一緒にいられてしかも幼馴染なので幸福真っ盛りといった感じである。ちなみに性格はさっきのやりとりに反して普段はおとなしめであり、あんなことをするのはソドとピスに対してだけである(これもソドとピスが優越感に浸る理由の一つにもなっている)。