新入生武闘大会
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「まず、魔力適正の件ですが、この際公開してしまいましょうということになりました。」
「はぁ、その理由は?」
「まず、身の安全です。」
「身の安全というなら公開しない方がいいのではないでしょうか?」
「貴方だけの身の安全ならそうですが将来ここを出たときに
貴方の魔力適正が露見すれば隠していた私たちの身の安全が危なくなります。
身勝手だとは思っていますがお許し下さい。」
「わかりますので頭を上げてください。いくら身分が白紙になるとはいえさすがにマズイです。」
「ありがとうございます。次にスキルに関してですが、そちらも対して隠す必要はないと思います。」
「それはなぜでしょうか?」
「安全面に関してはすでに先ほど述べたばかりですが、既にSランクという規格外の力をもっていますし、
スキルは情報公開するわけではありませんから言わなければ誰かにばれることはないでしょう。」
「そうですか・・・わかりました。言わなければということは身内などには話してもよろしいんですよね?」
「それはかまいません。学園は貴方の行動を制限しませんので学園の生徒全員に話してもかまいません。
しかし、あくまで自己責任ということになりますが。」
「はい、大丈夫ですよ。身内にしか言うつもりはありませんし。」
「そうですか。少し安心しました。」
「いくら九歳の子供だからって他人に自慢するほど子供じゃありませんよ、成人二年生さん?」
皇女殿下の美顔が朱色に染まる。
「なっ・・・ごほん。そうですか。それはよかったです。」
頑張って取り繕っている姿はとても可愛らしい。
だから俺はぼそっと漏らしてしまったんでしょう。
「くすくす・・・皇女殿下かわいいなぁ」
「なっ!かわっ!?」
「あ・・・聞こえちゃいました?でもこの学園内での身分は白紙なので不敬罪とかにしないで下さいよ?」
そういって俺は退室するために後ろの扉に近づく。
「では可愛らしい皇女殿下様。また会いましょう。」
俺はそれだけいって退出する。
もう成人もしてる相手に向かってしかも九歳の子供が可愛いとかさすがに失礼だったかな・・・?
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[アイナ視点]
今日は規格外の少年と会うために身だしなみを整えます。
Sランクなんて規格外緊張するじゃないですか。
私はお姉様達と違い、嫌な相手には本気で嫌といってしまうので人付き合いが苦手です。
Sランクなんて規格外の機嫌損ねちゃったらなんか大変なことになりそうなんですもの。
緊張しちゃいます。
・・・
・・・
・・・
私にもそんなことを考えてた時期がありました。
あの子とっても可愛いです。
なんでしょう。一目惚れでしょうか、いいえ誰でも。
あのこがぼそっと漏らしたあの言葉。
『皇女殿下かわいいなぁ』
もう、ハート射抜かれちゃいました。
録音して何回も聞きたかったです。
また会いましょう・・・かぁ・・・
次はいつ会えるのでしょうか・・・
ふむ、仕事でなら会えるでしょうか・・・
そうです、そうしましょう。
お仕事頑張りましょうか。
たしか次に行事の成績優秀者には個別でご褒美を与えるなんてありましたね。
カナタ君はとんでもない成績優秀者ですから当然勝ち上がってくれるでしょう。
う~ん、夢が広がりますね。
どんなご褒美にしましょうか。
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[カナタ視点]
さて、今度は武器の適正検査です。
多くの上位冒険者を雇って、実践で使える武器を見極めて貰うのです。
人は体格・性格・器用さで扱える武器も変わります。
女性は膂力もなく、骨格にも恵まれていないので、
柔軟な身体と思考力を使う武器になることが多いです。
たとえば、双剣や弓、槍なんかも使う人が多いですね。
華奢な体格のミストは手数を選んだようで双剣に決めたようです。
がっちりした体格のラケルは戦斧ですね。
俺は平均的な体格からスタンダードな剣です。
剣は幼い頃から修練してましたのでそれなりに有利な位置から授業が受けれそうです。
それに一週間後にはトーナメント式の新入生武闘大会があります。
二千人近い一年生ですからそこからトーナメントしてたらきりがありません。
最初は何十人かでバトルロワイヤルです。
そこで勝ち残った者が本戦に進めるわけです。
分かりやすいですね。
二千人から30人まで絞り、そこからトーナメントが始まります。
兄上は優勝していますが、姉上はしていません。
魔法が使えればトップだったでしょうがこの武闘大会は魔法禁止です。
自らの武器の腕前を知るためのものだからです。
姉上はぎりぎり負けてしまい、準優勝だったそうです。
俺は昔から修練してきたので負けるわけにはいきません。
俺以外にも子供の頃から修練しているものも少なくないでしょう。
油断は出来ませんね。
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あれから一週間。
特に大きなこともなく平穏に過ごしました。
今日は新入生武闘大会予選当日。
バトルロワイヤルの日です。
バトルロワイヤルの対戦相手は完全にランダムらしいので、
対策を立てようにも出来ません。
二千人を一気に30人に絞るため、初日は予選だけでつぶれてしまいます。
そして、トーナメントにはAブロックとBブロックがあり、
それぞれ二回戦から参加する枠が1つずつあります。
この枠はクジ引き制であるため、辞退することも可能です。
とりあえず、そこまで行けるように頑張りましょう。
闘技場です。
今回のような武闘大会に使われたり、
個人同士による決闘に使われたりします。
個人同士の決闘には必ず公式の審判がつけられ、相手の命を奪うことは許されていません。
決闘とは互いの持ち物を賭け、勝利したものが総取りというとても分かりやすく、
かつ亀裂を生みやすい決着方法です。
閑話休題。
そんなわけで闘技場に着きました。
簡易の本人確認を行い、その場で抽選されブロックが決まります。
このブロックは1~30まで別れており、各ブロックに60~70の対戦相手がいます。
各ブロックでトップを決めそのトップがそのブロックの代表と言うことになり、
ブロックの代表が優勝もしくは上位入選すると、
Gilのボーナスが貰えます。
優勝した人や入選した人に比べれば微々たるものですが貰えます。
俺の場合は27番ブロックです。
その控え室に向かうと、
「ん?カナタじゃねぇか。」
ラケルがいました。
「ラケルも27番ブロックですか?」
「おうよ、ってことはカナタもか。」
「えぇ。」
「これは本戦出場はむずかしそうかねぇ・・・」
「それは分かりませんが俺は本戦に出るために努力しますよ。」
「ふ~む・・・まぁ、俺もそう簡単にはまけねぇよ。」
そのようですね。
ラケルはなんだかんだ言いながらとても努力家です。
そして、才能もあります。
才能×努力は本当に手強いです。兄上もそのタイプです。
これは、負けないように頑張らないと行けませんね。