買い物
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そして、翌日。
試験の結果が出たのでそれを元にクラス分けがなされ、その結果俺はAクラスになりました。
教室に入ると、
「よっ、カナタ・・・だったよな?」
「そんな君はラケルですね。」
「あぁ、同じクラスだな、これからよろしく。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
ラケルはヴァイン公爵家長男でしたね。
公爵家といえば我がフェミナ家も公爵家です。
貴族の位階というのは、数が決まっており、
男爵→子爵→伯爵→侯爵→公爵→王族の順で大きくなります。
男爵は名誉貴族のため一代限りで領地はありません。
貴族街に家をおくことは許されず生活はほぼ平民と変わりません。
子爵は領地はありませんが王都の第三位貴族街に居を構える事が許されます。
子爵の最大数は50ですが現在30ほどしかおらず、空席が出来ています。
伯爵はそれなりの領地と私兵を持つことを許され、第二位貴族街に居を構えることが許されます。
伯爵の最大数は10席で、議会傍聴権が与えられます。
侯爵は中規模の領地と私軍を持つことが許され、第一位貴族街に居を構えることが許されます。
侯爵の最大数は5席で議会参加権が与えられます。
公爵は大規模な領地と王国軍を動かすことが出来る権利が与えられます。
王城に住むことが許され、特位貴族街に居を構えることが許されます。
さらに公爵には陛下に直接進言する権利が与えられ、議会をおこすことも許されています。
そして公爵の最大数は2席のみであり、それがヴァイン家とフェミナ家という訳です。
「君はどっちなんでしょうか?」
「どういうことだ?」
「使われる者か、使う者か」
「?」
「まぁ、分からないですよね。逆にこの年で分かる方がおかしいんですけどね。
でもまぁ、君は多分いい人ですよ。」
「そりゃ、悪い人にはなりたくないからな。」
「ふふっ♪そうですね。」
俺はここで人生の友と言える人物に出会ったのかもしれません。
まぁ、それがわかるのはきっとまだ先なんだと思いますが。
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さて、この学園の寮は生活に必要な家具は置いてあるんですが、
必要な日用雑貨が無いので個人でGilを使って、買いに行かなければなりません。
この学園の敷地内にはありとあらゆるお店があります。
八百屋、魚屋などの食品から始まり、
果ては、賭博場や奴隷商なんかもお店を出しています。
奴隷と聞くと良く聞こえないかもしれませんが、この世界の奴隷は
法律で厳重に保護され、奴隷の悲鳴が聞こえたとあれば、王国軍がすっ飛んできて
強制家宅捜索を、始めます。
その結果、食事を与えていないとか、強制的に夜伽をさせようとしたことが分かれば、
奴隷は押収され、高額の罰金もしくは強制労働となります。
押収された奴隷は王国が責任を持って保護し、
働く意欲のあるものには教育を施したり、仕事を凱旋したりします。
まぁ、あまり活用される施設ではありませんね。
多くの生徒は奴隷を買えるほどGilを溜めることが出来ませんから。
そう言えば、兄上は奴隷を二人ほど購入していたと聞きます。
奴隷の相場は平均金貨30枚ほど。つまり、三十万Gilですね。
兄上はおよそ六十万Gilつかってなお自分を含め奴隷まで養っていたのですね。
すごいですね。そういえば姉上もGilが有り余ってるって言ってましたね。
現在の俺のGil保有ポイント数は
毎月補填分 10000Gil
生徒会参加分 2000Gil
入学試験1位特典 30000Gil
合計 42000Gil
こんな感じですね。
多くの生徒は毎月補填分の一万Gilしかないので
最初の一ヶ月から地獄の節制生活をしなければならないらしいです。
食事は寮の朝晩の食事は無料ですが、昼食は大抵の生徒が食堂を使用するため
大抵の一年生は食堂で素うどんをすするそうです。
・・・まぁこんなどうでもいい話をしているのはただの現実逃避なんですけどね。
その理由とは・・・
左右の腕に抱きつき、お互いを牽制しながら、周囲の女子生徒に威嚇をしている
姉上と、ミストのせいです。
両手に花どころの話じゃありません。
右腕の虎、左腕の龍みたいな感じです。
ちなみに右腕がミストで、左腕が姉上です。
なぜこうなったのかというと。
「姉上、雑貨をそろえたいので案内をお願いしたいのですが。」
「あら?カナタから誘ってくるなんて珍しいわね。いいわよ、準備してくるから待ってて。」
「分かりました。」
そう言って姉上は女子寮に入っていきました。
男子寮と女子寮の境目にある大広間に座って待っていると
「あら?カナタ様。もしかしてお買い物に行かれるのかしら?」
「えぇ、そうですよ。よろしければミスト嬢も行かれますか?」
「よろしいのですかっ!?」
「え、えぇ。かまいませんよ。姉上に案内して貰うつもりだからね。」
「あ、姉君もこられるのですね・・・」
「あら?私は来ちゃダメなのかしら?」
「!?・・・そんな滅相もない!」
「そ~お?」
「は、はい・・・それに・・・」
「それに?」
「カ、カナタ様を頂くには姉君に認められないといけないようなので・・・」
「あら?言うわね。・・・ふ~ん、くすくす。いいわ同じ土俵に位は立たせてあげる。
もしここでごまかしていたら、会長特権で無理矢理引きはがしていたところだけど。」
でも、と続ける姉上。
「私でもかなわない相手がいるんだけどね。」
「姉君でもかなわない相手・・・」
「そう。カナタの心を掴んで離さず、なおかつカナタに惚れている子が・・・ね。」
「そんなひとが・・・」
「まぁ、その子は来年入ってくるし、その時紹介してあげる。」
「はぁ・・・?」
「ま、それまで私はカナタの隣に居続けるんだけどね。」
と言いながらミストに挑発的な目線を向ける。
「むっ・・・わっ私はその方が現れようともカナタ様の隣に居続けますけど!」
「くすくす・・・出来るかしら?カナタは盲目よ?」
そして、そう言いながら俺の腕を引っ張り、歩き出す。
「姉上・・・そう言う話は俺がいないところでするべきだと思うんですが・・・」
「あら?いいじゃない。本当のことなんだから」
「あっ姉君、なぜ当然のようにカナタ様に抱きついてるのですか!」
「当たり前のことだからよ?それについ二年前まで一緒にお風呂にだって入ってたんだから普通の事よ。」
「おっおふ・・・!?」
ミストは何を想像したのか顔を真っ赤にする。
「あら、何を考えてるのかしら。おませさんね。くすくす」
そう言う姉上もたかが10歳だとおもうんですけど・・・
「~~~っ」
ミストは顔を真っ赤にしながらも、俺の逆の腕に抱きついてくる。
そうして冒頭の状況に陥ったのでありました・・・。
そこから先はある意味地獄のようでした。
姉上は疲れたからと言って簡易ホテルに連れ込もうとしてくるし、
ミストは顔を真っ赤にしながらランジェリーショップに連れ込もうとしてくるし、
トイレに行こうとしたら中にまで着いてこようとするし、
そんなこんなでようやく必要な物を買えたのは夜の帳がすっかり落ちた頃でした。