入学まで
ストックが少ないのでちまちま出します
*********************
さて、主人公の俺よりも先に妹の名前が出たことに驚きを感じつつ、
自己紹介を忘れていました。
俺の名前はカナタ=リ=フェミナ。この「リ」というのは貴族の位を表わす物です。
状況説明から一年が経ちました。
「おいおい、カナタ。そんなに悲しむなよ。長期休暇とか年明けは帰ってくるんだから。」
「兄上、さっさと行ってください。」
兄上の名前はアイン=リ=フェミナ。今年九歳になるので学校へ通います。
「そうよ、兄上。さっさといってください。カナタといちゃいちゃ出来ないじゃないですか」
この人は姉上、クリア=リ=フェミナ。今年七歳です。
「アイン兄様。お気をつけて」
この可愛らしい声は我が妹。フィーネ=リ=フェミナ。
六歳になった俺の1つ下の五歳だ。
「はっはっは、まぁ頑張ってこい。無理しない程度にな」
この渋いおじさまは我が父。ドラン=リ=フェミナ。
やり手のかっこいい父上だ。
「そうね。無理しちゃダメよ。」
この透き通るような響きの声は母上。メリア=リ=フェミナ。
「はい、父様、母様。行ってまいります。」
「「いってらっしゃい。アイン」」
**********************
兄上が学校に入学したのでここで学校に説明をしましょう。
メルティエーナ国際学園。
生徒数は5000を超え、それなのに全寮制というある意味凄い学園。
学園の敷地も圧倒的に広く、その大きさは王都にも匹敵すると言われています。
国際の名の通り、他国の生徒も多く全寮制で、各国から優秀な教師が集められています。
もっとも驚くべきは貴賤の差がほとんど無いことです。
ここに通える生徒の多くは貴族や豪商などの所謂お金持ちの子供達です。
しかし、この学園では入学の前に試験を受けることが出来、その結果次第では学費を免除されて入学することが許されるのです。
さらに孤児院の子供の中から優秀な生徒を選び、その中でも学ぶ意欲のある者も特待生として入学を許されます。
貴族、商人、平民、孤児。バラバラな身分で貴賤の差をなくすのはとても難しい。
それを可能としているのが学園通貨制度。
Gilといわれ、1Gilが銭貨一枚の価値を持っています。
金貨一枚=銀貨十枚=銅貨百枚=銭貨一万枚=一万円
つまり銭貨一枚は日本円の一円の相場ですね。
このGilは毎月金貨一枚分、つまり一万Gilが加算されます。
学園内は現金の持ち込み及び現金による取引は禁止されており、
つまり、この学園ではお金による貴賤の差が存在しないのです。
Gilの獲得方法は毎月の加算だけではありません。
学園内にあるお店でバイトすることでGilがお給料として加算されたり、
学園に対して何か奉仕活動を行うことでも加算されます。
たとえば、生徒会や委員会、他にも教師の助手や校舎内の掃除などあります。
そして最もGilを稼ぎやすいのが試験で上位者になることです。
試験で一位になると大量のGilが加算されます。
入学直後の試験でも加算されます。
貴族にとっては商人の稼ぎ方を知り、平民のやりくりの仕方を知り、孤児の努力を知ることが出来ます。
学園内では、身分は一時的に白紙にされます。
つまり、学園内にいる限りは王族でもなければ、貴族でもなく、商人でもなければ、平民でもない。
全員が真っ白な身分として学園生活を送るのです。
こんな所でしょうか。
さて、後二年で姉上が学園に入学するのでそれまでに姉上の言ういちゃいちゃを楽しもうと思います。
「カナタ、お風呂入りましょ?」
「カナタ、おトイレ大丈夫?」
「カナタ、あ~んして?」
「カナタ、一緒に寝ましょ?」
「カナタ」
はい、ちょっと姉上舐めてました。
まさかここまでとは予想してませんでした。
素晴らしいブラコンっぷりです。
そういえば、先ほど説明した入学直後の学力試験で兄上はダントツのトップだったそうです。
兄上は生徒会に勧誘されさらには一年生で副会長を務めているそうです。
兄上はフェミナ家の鬼才といわれているようです。
姉上にはプレッシャーがかかりますね。もちろんおれにもですが。
*************************
あれから二年が過ぎ、姉上が入学しました。
そして姉上も当然のようにダントツのトップでした。
これはなんというか・・・えぇ・・・って感じですね。
姉上はいつ勉強していたのでしょうか・・・。
この二年ずっと俺にかまいっぱなしだったと記憶しているのですが・・・
ぜひ勉強法を教わりたいです。
姉上はフェミナ家の才女と呼ばれているらしく、当然のように生徒会にも入っています。
さて、兄上も姉上も学校に入学してしまい、
俺と愛妹のフィーネのみになりました。
母上は寂しいようで、俺とフィーネにずっとかまってきます。
「カナタ、お風呂入りましょ?」
「カナタ、おトイレ大丈夫?」
「カナタ、あ~んして?」
「カナタ、一緒に寝ましょ?」
「カナタ」
これは、姉上の再来でしょうか・・・。
来年はおれも入学なので母上はより一層かまってきます。
それと同じだけフィーネにもかまっているので凄いと思います。まさに脱帽ですね。
しかし、勉強の最中に突撃してくるのはいかがなものかと思いますよ、母上。
*************************
さて、いよいよこの時が来ました。
そうです。俺が入学するときです。
母上は涙目になっていましたが、なきませんでした。
フィーネは号泣でしたが。
「母上、フィーネ。兄上や姉上だって長期休暇には帰ってきてたんですからそんなに悲しまなくても。」
「そうですね・・・グス・・・フィーネ、貴女の兄の門出です。笑って送り出してあげましょう。」
「はい・・・ヒック・・・分かりました・・・お母様・・・」
そして俺は笑顔で家を出ることが出来たのでした。