嘘吐きの悟り
昔々のある時代ある日のこと。
名のない村であった隠蔽されて知ってる人もいない話。
私は村中の人からの嫌われ者だった。
この口は嘘しか吐けない。
私の親の代からそれは受け継がれ、私たち一族は嫌われ続けていた。
私の親が死んだ今、この忌々しいものがあるのは私……
大切な友達も愛する人も離れていってしまった……
「あなたとはもういられない」
と私は1人きりになり孤独になった。
村を出て森の奥に閉じこもった。
そんな時私は気づいた。
そうか! 結局人間は1人ぼっちでは生きていけないのか……どんなに憎くて嫌いな人でも誰かを支えその人の生きる糧になる! いなくなっていい人なんていない! みなみんな必要とされ必要としている!
それに今更気付いた私はもう誰にも話してはもらえない。
寂しいと言ったって助けてと言ったって誰も来てくれないんだ………
光のささないこの部屋で孤独に死を迎えることはとても私を悲しくした。
でもせめて大切な友達と愛する人に今までの想いは嘘ではない事を伝えたかった。
どうしても最後にそれだけを伝えたかった!
だから私は珍しく村に出かけ、友人の家を訪ねた。いや、もう友人と呼ぶことも許されないかもしれない。
ドアをノックすると友人が出てきた。
そして泣きながら飛びついてきた。
何度も何度も名前を呼ばれ、泣き続けた。
私は訳がわからなかった。
「どうしたの?」と聞くと、彼女はこう言った。
「わからないの? あなたがいなくなってしまった日……つまり私が酷い事を言った日はエイプリルフールじゃない! 普段のあなたが嘘がうまいからたまには騙したかったのよ! ……でも、こんな事になるなんて……」
どうやら私は嫌われていなかったらしい。
私は嬉しかった。
幸せに満ちあふれた気持ちになった。
彼女に彼の居場所を聞くと、彼女は動きをとめた。
しばらく迷って私に言った
「彼はあなたに酷い事を言ったのを後悔してたわ……ずっとあなたを探していた……でも昨日野犬に襲われて死んでしまった……」
私は何度も今日の日付を確認した。
しかし今日はエイプリルフールではなかった。
私は号泣し、いつまでも泣き続けた。
するとそこには大きな水たまりができ、この星の大半を占めるようになった。
これが海の始まりであり、水の女神サラスヴァティーの話である。
※この話はフィクションです。