代理魔法少女リリカルハナちゃん
こんにちは。当サイト初投稿です。
試し撃ち的にこちらの短編を投稿します。
ちょっと新感覚な魔法少女です。
2021.5.11
令和の今になってブクマ登録されていることに気づいた私です、ありがとうございます
ここは雲の上の上の上に浮かぶ魔法の国。
魔法の国だけにウサギやアルパカは二足歩行で歩き、花は今日も演歌を熱唱し、雲は綿菓子、
その雲の機嫌がいい時は空から飴ちゃんが降ってきたりするそんなファンタジーワールド。
そんなファンタジーワールドの中央に位置するお城。
お城といっても某テーマパークにある感じのヨーロピアンなお城ではなく
なんというか、純和風の日本的なお城だ。
そのお城の大広間に王様の娘、つまり王女様が呼び出されていた。
「娘よ……ばか」
ジョークをジョークと見抜けない王女様は王様にライダーキックを食らわせる。
「お父様、恋に魔法に忙しい娘を呼びだしてばかとは何かしら。あと、ばかっていうほうがばかなのよ」
あんたも父親に対して失礼ぞ!的な返しをする王女様。
「まあ、そう怒らないでくれ。若くしてシワが生えるぞ」
今度はキン肉バスターである。
「で、用件ってなんですの?」
キン肉バスターを解除しながら、王女は問うた。
「そうだ、エリリンリン。大事な話だ……」
王様は王女様、エリリンリンに次のことを話した。
この魔法の国は地上の世界、つまり人間界の『しあわせの力パワー』で空に浮かんでいられる。
しかし、ここ最近その『しあわせの力パワー』が好評減少中なのだという。
そのせいで1日に数ミリ、下がっていきつつあるそうだ。
このまま『しあわせの力パワー』が減って、ついにはゼロになると魔法の国が地上へと墜落し、そりゃまあ大変なことになるのだという。
と、いうわけで。『しあわせの力パワー』を復活させるためにエリリンリンに地上に降りて大活躍してほしいそうだ。
「それは大変だわ!!……それはそれとして」
「何だ、娘よ」
「『しあわせの力パワー』ってダサいネーミングだわ」
エリリンリンのもっともなツッコミに盛大にずっこける王様。
「ま、まあ。それは気にするな。地上に降りるにあたって、これを持って行きなさい……」
そう言って王様はエリリンリンの前にさまざまなアイテムを示した。
その道のプロフェッショナルな大人に変身できる銅鏡。
『しあわせの力パワー』がどれだけたまったかを示すメスシリンダー。
移動に使う魔法の座敷箒に魔法の国との連絡に使う今時珍しいガラケーっぽい通信機。
そして『お伴の動物』的ポジのコケシ(性的な意味じゃない)。
「これら5点セットに四次元頭陀袋をつけて、いちまんえ」
またまたジョークをジョークと見抜けないエリリンリンは王様にジャーマンスープレックスを決めたのであった。
まあともかく、善は急げということでエリリンリンはとっとと出発することと相成った。
魔法の国から人間界へとつながる襖の前でエリリンリンは王様、王妃様、家来、コック、メイド、国民、アルパカの前で出発の挨拶をした。
「魔法の国が地上に墜落したことで、損害賠償を起こされないために……私行きます!!」
……そういうことではない。というツッコミがあったかどうかは定かではないが
エリリンリンは襖を開け、人間界へと旅立っていった。
王様、王妃様、コック、メイド、国民、アルパカに見送られながら。
東京都練馬区。その大通りの近くで人だかりができていた。
何やら『変な格好をした女の子が車にはねられた』のだという。
その野次馬の一番いい場所にいましがたフランス語塾を終えて、帰宅途中だった花野花子(7)がいた。
花子はその『変な格好をした女の子』に呆れ果てていた。
大通りの、それも横断歩道のないところにいたら車にはねられるのは当然だろうと。
お前さん、幼稚園でそれを習わなかったのかと。
『あんぜんパトロール』、ちゃんと見てなかったのかと。
そんな呆れ果てる花子の前にコケシがすっ飛んできて、花子とコケシ以外の周りの時間を止めた。
「お嬢さん、お嬢さん」
「キャッチセールスはお断りしてるの」
しれっと返され、コケシはこけそうになる。コケシだけに。
「頼みがあるんです」
数行前に話したのと同じ解説をするコケシ。
「しかし、そのエリリンリン様はご覧の有様で……一命は取り留めているようですが
全治……数か月の重傷を負っているのでございます」
「それで?」
「あなたにそのエリリンリン様の代理を務めてほしいのです!」
間。
「すみません、宗教には興味ないんで」
コケシは地面に落ちた。しかし、何とか再び浮かび上がる。
「そこを何とか!ところでお名前は……」
「花野花子。成楼女子大学付属小学校2年2組」
「花野花子……。承知しました。あなたは今日から『代理魔法少女リリカルハナちゃん』です!」
また間。
「すみません。そういうのは幼稚園卒園と同時に卒業してるんで……」
コケシはショックを受けていた。日本の女児は幼稚園卒園と同時に魔法少女アニメからも巣立ち、
興味があるのはおしゃれと月9ドラマというのは本当だったのか……と。
それでも、コケシは花子に無限の可能性を感じていた。
彼女なら『しあわせの力パワー』を復活させることができる……と。
こうしてコケシはエリリンリンの頭陀袋をえいこらせっせと運び、花子に渡した。
「とにかく、お願いします!」
コケシ独特ののっぺりとした表情で迫られてはさすがの花子も承知するしかない。
かくて、今ここにコケシをお供にしたがえた魔法少女が誕生する運びとなったのだ。
「はぁ、私としたことが人間界に着くなり車にはねられるなんて……」
人間界の病院。エリリンリンはベッドの上で愚痴っていた。
「こうしている間にも人間界からは『しあわせの力パワー』が消えていっているというのに」
ぶつくさ、ぶつくさ。
「その心配はありませんよ、エリリンリン様」
どこからわいて出たのか、コケシは言った。
「どういうことよ?」
「私めが、代理を見つけましたので」
代理、だと。
「最初にしてはいい活躍でしたよ、リリカルハナちゃん」
リリカルハナちゃん、だと。
「とりあえずは、安泰なのでごゆっくりご静養くださいまし」
安泰……。
見事にどこのポニーの骨ともつかない少女にお株を奪われ、エリリンリンはショックを受けた。
そして決意する。気合いでリハビリを乗り切って、完全復帰し
リリカルハナちゃん以上に大活躍してやろうと。
やれやれ。
つづかない。
つづきません。マジで。