望むがままに
中学の同期から忘年会に誘われた
5年以上一切連絡を取っていないかつてのクラスメイトからのメールに始め驚いた
いや、5年どころかそもそも会話をしたことが無かったような気がする
懐かしい同級生たちの顔がうろ覚えのぼんやりとしたイメージで思い浮かぶ
すると何故だか自分は中学校の校舎にいた
トイレ前の廊下で話をした覚えさえない仲間たちと一緒になって喋っている
話によるとどうやら自分には同窓会に参加するのに足りないものがあるらしい
しかし、それが何なのかは全く教えてくれない
皆、そんなの常識だろという雰囲気
なぜか名前さえ忘れたそいつらは自分に対して冷たい
仕方ないので先生に聞くことにする
担任の先生はクラスの子たちとも親しげに話すいい先生なのだが、なぜか声をかけにくい
無駄に神経をすり減らしながらそれでも話しかけると先生は長々と話し始めた
しかし、その中に自分の質問に対する答えは無い
どうやら自分で考えろという事らしい
仕方ないので、自分でこれじゃないかというものを用意する
そして、なぜか無駄に緊張しながら再び先生にいやいや話しかける
しかし、自分が出した答えはどうやら間違っていたらしい
先生は苦笑いしながらどう教えたもんかと、また長々と話し出す
だが、やはりその中に自分の質問に対する答えはなくヒントだけである
親しげな口調のくせに見下しているかのような態度が非常にはらただしかった
埒があかないので、当時頼りにしていた保健室の先生のところに行くことにした
保健室に行くには、利用目的や利用時間を記すカードが必要で、他にもに担任のサインやらとにかく面倒なものを用意する
先生から嘘の理由でサインを貰うと、ムカつく相手なのに理不尽にも罪悪感が襲いかかった
しかし、それにも耐え保健室へと向かったが、 何やら保健室付近が騒がしい
複数の職員が扉を出たり入ったりしていて、今は忙しい状況であることが見て取れる
どうしたものか迷ったが、こういう時ぐらい少しばかり図々しくてもいいだろうと、空気を読まず保健室へと入る
すると、忙しそうにしていた保健室の先生が手を止めて、自分の話を聞いてくれた
申し訳ない気持ちに押しつぶされそうになりながらその事情を話すと、先生は時間がかかるからまた明日にしてねと、簡単に追いやった
仕方ないと廊下へと行き、明日もう一度しなくちゃいけないこと、これからすることを考えたら異常にめんどくさくなった
ここまでして行くほど価値があるというのか
仲良くもないクラスメイトとの飲み会
行きたくもないのに自分は何をしているんだ
めんどくさくなった
馬鹿らしくなった
だから自分は周りに流されずしたいがままに生きてきた
そうだ、だから自分は周りに流されずしたいがままに生きてきた
そういえば、卒業した時のお別れ会は直前で行くの止めたっけな
行くのが嫌だったんだから、何も悪いことじゃない
正しい、良い選択だ
成人式の飲み会はそもそも誘われもしなかったっけな
どっち道行かないんだから、断る手間が省ける分ありがたい
正しい、良い結果だ
望み通りに動いてきたんだからこれは望んだ結果で間違いない
自分が立ちぼうけていた廊下は消えていた
そして
ゆめがさめた
携帯がランプを点滅させ鬱陶しく自己主張している
流行など一切気にしたことのない、一般的にださいのであろうガラケーを開くとメール受信が一件
1月1日受信
今日が元旦であることに気づく
去年は一度も見なかった中学校のゆめ
それを何故丁度こんな日に
まさかの初夢
本当に凄いタイミングだと笑いながら、なぜか涙が出てきた
本当はみんなと仲良くしたいのに上手く入り込めないから一人でいる、というのは本当に違う
本当に一人でいるのが好きだし、友達とか作ったりクラスに溶け込んだりするのはめんどくさく、したいとも思わない
自分はみんなとは違う
自分には確かにみんながあたりまえに持っているものが無いのかもしれない
だが、別に欲しいとは思わない
自分はみんなとは違う
何年もそう思い、友達も作らず一人でここまできたが新年早々揺らぎ始める
だが、何も変わらない
これからも孤独を愛して、いや、孤独を愛しているという自分を信じて、自分達は一人で生き続けられるだろう
"自分"でなく"自分達"なのは、同じような人が他にもいると信じているから
涙が出るのは、やっぱり自分だけなんじゃないかと不安になるから
友達もなしに一人でいるのが本当は寂しいなんてことは絶対にありえない
届いた一件のメールはゆめに現れた人たちとは何の関係もない、ただ付き合いが長いだけの幼さなじみからだった
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明けましておめでとう
今年もよろしく
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何の余分な一言もない定型文
といってもこちらもそれに返す言葉が、同じものしか思い浮かばない
しかし、全くもって同じ内容で送り返すのもどうなのかと思い、変にひねりを加えて返す
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明けましておめでと~
今年もよろしくでっす
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送った後にこれじゃ変だったかなと枕に顔をうずめる
来年はもうこいつにさえも返信しないかもしれない
起き上がりリビングに行くと家族がめいめいに届いた年賀状を見ている
どうやら自分のは無い模様
「今はみんなメールで済ませちゃうからな」
例年通り親にはそういった
あの地味にめんどくさい年賀状ももう、数年書いていない
自分が望んで手に入れた、幸せな日常はこの後何年も続くのだろう