表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/237

~陽の巻~ 葬儀・万松寺

 尾張中からかき集められた僧侶に加え、旅の僧侶も次々と招き入れられる。

 合わせて300人ほどの僧侶達は、親族と弔問客でいっぱいの本堂には入りきらず、廊下や庭、果ては寺の外にまで溢れていた。

 家来と従者を引き連れた弔問客も、次から次へとやってくる。

 寺の周りは人でごった返していた。


 政じいと貞じいは、どうやらずっと、俺のことを探していたらしい。

 まあ、当然か。

 人混みの外側で俺が馬から降りると、2人が駆け寄ってきて絶句した。火鳥もいる。


 俺を見た火鳥の顔が、すっと蒼ざめた。


「待たせたな。行くぞ」

 俺は、2人が口を開く前に、人ごみをかき分けた。

 

 葬儀は既に始まっていた。

 読経の声の響く本堂。

 俺は胸を張って中へ入る。



(なんだ、あの格好は!!?)

 驚愕の、あるいは軽蔑の表情を浮かべた、たくさんの顔が、こちらを向く。

 視線が――痛い。


 ――ひるむな、俺。


 俺は唇を結んで前を向いた。


 隠しきれないざわめきが、広間を覆いつくしている。

(なんと非常識な!)

(非礼にもほどがある!)

(和颯殿は、ご乱心だ……)

(ご乱心だ……)


 ――そうだ。これでいい。

 俺は顎を高く上げた。


 ――みな、しっかりと見ておけ。

 これが、織口和颯。

 お前たちが信勝(俺の弟)を裏切って従おうとしていた男だ。


 

 

 俺は貞じいと政じいを従え、位牌の前へ進み出た。


 ――父上……


 尊敬していました。

 あこがれておりました。

 父上のようになりたいと、ずっとずっと、思っておりました。

 父上の息子に生まれたことを、誇りに思います。


 ――父上の遺した織口家の土地は、必ずや、守りきってご覧に入れます。


 俺は位牌の前の抹香をひとつかみ、握り取った。



  (信勝を、盛り立ててやってくれ)

 熱田で聞いた父の言葉が、耳にこだまする。

  (――織口家を……頼むぞ)


      ――お任せください。父上。


 俺は、目の前の位牌を睨みつけた。



 ――これが俺の、全身全霊、精一杯の親孝行でございます!――


 俺は握りしめた抹香を、思いっきり位牌に投げつけた。

 


 弔問客がどよめいた。

 母上が、こぶしを握り締め、眉を吊り上げて立ち上がるのが見えた。


 俺はくるりと踵を返すと、大股で葬儀の場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ