~陽の巻~ 葬儀・万松寺
尾張中からかき集められた僧侶に加え、旅の僧侶も次々と招き入れられる。
合わせて300人ほどの僧侶達は、親族と弔問客でいっぱいの本堂には入りきらず、廊下や庭、果ては寺の外にまで溢れていた。
家来と従者を引き連れた弔問客も、次から次へとやってくる。
寺の周りは人でごった返していた。
政じいと貞じいは、どうやらずっと、俺のことを探していたらしい。
まあ、当然か。
人混みの外側で俺が馬から降りると、2人が駆け寄ってきて絶句した。火鳥もいる。
俺を見た火鳥の顔が、すっと蒼ざめた。
「待たせたな。行くぞ」
俺は、2人が口を開く前に、人ごみをかき分けた。
葬儀は既に始まっていた。
読経の声の響く本堂。
俺は胸を張って中へ入る。
(なんだ、あの格好は!!?)
驚愕の、あるいは軽蔑の表情を浮かべた、たくさんの顔が、こちらを向く。
視線が――痛い。
――ひるむな、俺。
俺は唇を結んで前を向いた。
隠しきれないざわめきが、広間を覆いつくしている。
(なんと非常識な!)
(非礼にもほどがある!)
(和颯殿は、ご乱心だ……)
(ご乱心だ……)
――そうだ。これでいい。
俺は顎を高く上げた。
――みな、しっかりと見ておけ。
これが、織口和颯。
お前たちが信勝を裏切って従おうとしていた男だ。
俺は貞じいと政じいを従え、位牌の前へ進み出た。
――父上……
尊敬していました。
あこがれておりました。
父上のようになりたいと、ずっとずっと、思っておりました。
父上の息子に生まれたことを、誇りに思います。
――父上の遺した織口家の土地は、必ずや、守りきってご覧に入れます。
俺は位牌の前の抹香をひとつかみ、握り取った。
(信勝を、盛り立ててやってくれ)
熱田で聞いた父の言葉が、耳にこだまする。
(――織口家を……頼むぞ)
――お任せください。父上。
俺は、目の前の位牌を睨みつけた。
――これが俺の、全身全霊、精一杯の親孝行でございます!――
俺は握りしめた抹香を、思いっきり位牌に投げつけた。
弔問客がどよめいた。
母上が、こぶしを握り締め、眉を吊り上げて立ち上がるのが見えた。
俺はくるりと踵を返すと、大股で葬儀の場を後にした。




