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カワセミ
和颯は馬に跨った。
俺の頭上から声が降ってくる。
「一益――人探しは、得意か?」
「はっ」
ご命令とあらば、地の果てまで探してまいります。
「ならば、僧侶を一人、探してくれ。
昨日は本家の屋敷で祈祷をしていたはずだ。
名前は忘れた。立派な袈裟を着ていた。
今は本家にはいない。
おそらくまだ、尾張を出ていないと思う」
「どちらの方角へ行ったかお分かりですか?」
「見当もつかない」
おいおいおい……。
とんでもない無茶振りだな。
「……お急ぎですか?」
「いや、何日かかっても構わない」
「馬を一頭、お借りしても?」
「好きな馬を連れて行け」
俺はもう一度、頭を下げた。
「御意」
それでも。
ご命令とあらば、必ずや見つけてまいります。
和颯は馬の腹を蹴った。
和颯を乗せた馬は、疾風のように走り去った。
俺も旅の支度をして厩へ行く。
何日も連続して、歩き続けることができそうな馬を選んだ。
鞍をつけ、馬に跨る。
――悪りぃな、火鳥。
結局、敵味方に別れちまったみたいだ。
だが俺は、俺の信じた道を行く。
――あばよ。
俺は、馬の腹を締めあげた。




